世話係の少年
ここの村人はやはりエルフだった。
同じ種族ということで仲間共々物凄く歓迎された。
エルフたちはとても優しく、1日だけ泊めて欲しいというと、何日でも泊まって良いと言ってくれた。
その日の夕食は、見た事もない美味しい食べ物や香りの良い葡萄酒が食卓に出た。
眼が覚めると、星が見えた。
今は昼なのに……と思ったが、眼が慣れてくるとやっとその星が青い布に書かれた絵だとわかった。
「………あ、起きたんですか?ご飯の用意はもうできております」
部屋の隅で三角座りをしていた少年が立ち上がって面倒くさそうに言った。多分世話係だろう。世話係の少年の腕や足には、傷や青痣が出来ていた。
「えっと、朝食は果物だけ持ってきてくれない?」
「………はぁ。分かりましたよ。少しお待ちください」
ノロノロと歩いて階段を上って行った。
あの少年は少し前の私にそっくりだと思い、つい笑ってしまった。
ロウソクのように白い髪を、綺麗な飾りがついた櫛で梳き、ブーツを履く。
暫くして、果物が入った籠を片手にぶら下げた少年が帰ってきた。
「ありがとう。……うん、そうだ。良かったら君も食べないか?」
「そんなことは………」
「いいから。食べろ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
真っ赤に熟れた林檎を手錠の嵌った手で、一つだけ掴み、元の部屋の隅に戻って行った。戻る時に見えたのだが、彼の服からチラリと黄色と黒と茶色が混ざり合ったフサフサの尻尾が覗いていた。
自分も一つ小さな洋梨を自分の口に入れる。甘い香りと味が口一杯に広がる。
手錠や暴力で支配しようとするなんて。案外、エルフの中身も人間と変わりないのだな。
「で、君はエルフじゃないの?」
食べ終わったあと、身を乗り出して聞く。少年は首を竦め、俯き加減で呟いた。
「僕はしがない世話係です。それ以外の何者でもありません。」
「そうか……名前は?」
「ないです。」
「それなら私が名前をつけてやろう。」
頭の中に浮かんでくる単語を選んでいると、彼にうってつけというわけでもないが、良さそうな言葉があった。
「…………うん。そうだな、リーベなんてどうだろう?」
「………」
返事をしないで黙っているということは、はいという意味だろう。
「よし、決まりだ。お前の名前はリーベだ。返事は?」
「………はい」
うんざりしたように、彼は頷いた。




