少年アルス
身体が麻痺した少年の身体を抱え上げて移動する。私の見た目が若いとはいえ、力はそれなりにあるので重くはない。彼は驚きと不満が入り混じった目をしたが、言葉は出てこない。
少し歩き、森の中で一際でかい木の下に少年を下ろす。縄で身体をきつく縛り動けなくする。彼に逃げられて、私たちの情報を流され無いように。
「おいっ!なんで縛り付ける!?」
「ああ、毒が解けたのか。縛り付ける理由なんて、言いたくないね」
「何だとっ?………い、今すぐ離せぇっ!」
「坊ちゃん。静かにしなきゃ、お前の口から、言葉を発することが出来なくなるぞ。」
少し脅すと、簡単に黙った。もっと抗ってくれた方が楽しいのにな。
あいつらはまだ彷徨ってるようで、まだ来ない。魔法の練習でもしよう。
「えーと、崩れゆく幽城よ、泣き叫ぶ悪霊たちを巻き込み、その悲鳴を我に聞かせよ。幽霊爆弾」
頭に浮かんだ言葉を詠唱に詰め込み、魔法を唱える。成功したようで、導火線のついた黒い玉が現れた。火をつけなきゃ使えないタイプらしい。とりあえず、少年の足元に置いておく。
「次行くかー。そーだな………武神『グランデル』、お前の神器を我によこせ。武器召喚」
一瞬辺りが深く濃い闇に包まれる。闇が消えた瞬間、私の手に杖が握られていた。こっちも少年の足元に置いておく。
「この魔法の使い方………随分古いものだな。禁じられた魔法か?」
「お、よく知ってるね。」
ボソリと呟いた言葉に返してあげると、何故か顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。ちゃんと爆弾と杖は回収しておく。
流石にいくら経っても二人が来ないので、魔術弾を空に打ち上げる。
昔、何十年も前に軍で開発された連絡用の魔法だ。少しだけ、魔法を作り直し特定の人にしか見えないようにした。
そのおかげで、少し経って二人がここにきた。前からこれを打ち上げたら来るように、と私が言ってあった為だ。
「うゥ、疲れたァ…………」
「ん?そのガキンチョは誰だ?」
「アルスっていうガキだ。」
ガルムが真っ先に気付き、聞いてきたのでその名前を教えてあげる。少年アルスは驚愕の表情を示す。
さっきアルスって自分で名乗っていたのに、何を驚いてるんだか。
「そうですか。よろしくデすっ!」
「………ふんっ」
また、顔を赤らめている。なんだこのマセガキ。座り込んでいたガルムが立ち上がり言った。
「さて、行きますか。」
「そうだな。」
「!?おい待て!」
行きかけた私たちを、アルスがひどく驚いた様子で引き留めた。
「え?なに?」
「僕をこのままにして置くつもりか?」
「別にいいだろ?…………あ、もしかして殺した方がよかったか?」
「よく無い!」
「ふーん………」
ふと、名案を思いついた。のんびりと欠伸をしているガルムの耳に囁く。彼も成る程、と頷きその理解ができなさそうしている少年に、私の名案を口に出した。
「まぁ、縄を外してほしいなら俺たちの仲間になってくれるって、可愛い声で誓ってくれるならいいけどなぁ」
「流石に、置いてカれるのも危なイデすよ?」
「まぁ、嫌なら一つ死体が出来ることになるけど。」
私はポツリと呟いた。暫く悩んでいるかに見えたが、意を決したのか顔を真っ赤にしながらも言葉を出し始めた。
「お、お願い……しますっ。仲間になるから……ぁ縄を外してくださいぃっ」
これほどの屈辱は無いという顔をしている。可愛らしい。




