牢屋の中
「で、ここどこだ?」
「知らないし、例え私が知ってたとしてもお前には教えたくない」
「ここは何処でショウか?」
「多分、ポルテ城の牢屋だろう」
「おい待て。何でメイリンには答えて俺には言わない」
「私はむさ苦しい男は嫌いだ」
「悪魔だ。お前悪魔だろ。」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
鉄格子の向こうに見える真っ青な空を見る。雲一つない綺麗な青空だ。こんな日は何故だか、高い紅茶が飲みたくなる。
「あの、聞きたいんですガ……」
「何?なんでも聞いてちょうだい」
「お二人ハ何故旅をしてるンですか?」
一瞬手が止まった。そういえ、自分でも忘れていた。ガルムがポリポリと頭を掻きながら言葉を捻り出す。
「あー……確か、この世界を変える為だ。だよな?サリア」
「自分で言って忘れてどうすんだっての……。世界の考えを変えて、全てを平等に。全てに公平な世界へ、そしてエルフを迫害しない自由に空を飛び回れる世界にしたい。そう、私は思ってるんだ。な、ガルム。」
「うん、説明ありがとう。」
「…………もっの凄く今更デスガ、サリアさんの髪って白いですね?初めてそんな色見ましタ」
「白髪はエルフだけが持つんだ」
「なら、サリアさんはエルフ何ですか……?」
「ああ、そうだ。」
怖がられると思った。
怖がられ、逃げ出そうとする。
それは今まで、私の本当の姿を知った人たちが起こした行動。……彼女にだけは、ガルムにだけはもう、嫌われたくない。
「スゴイですっ!エルフなんて……すごいすごイっ!」
手をブンブン振り回して喜ぶ姿。
彼女は私の思っていたものと反対の反応を見せてくれた。今までのゴミとは違う澄んだ心だ。
「……あのさ、サリア。髪の色落ち始めてきたんだけど」
「分かったから。話しかけんなゴミ」
そう言いながらも、彼の髪を茶色にする魔法をかける。ふと眠気が頭に侵入してきた。多分、魔法の使いすぎだろう。眠気には逆らえず、瞼がゆっくりと落ちていく。
最初に目に入ったのは、真っ赤な真っ赤な、血だった。その次に目に入ったのは、頭から血を垂れ流す疎らに青い髪が混じった銀の髪の女性。
横を向くと、ガラス一枚隔たれた先、私と同じ容姿の少年が目を閉じて深い眠りに落ちていた。
『お父さん』が何か言葉を呟いた。
『お父さん』が呟いた言葉は、私と少年の背中の天使の羽根をどす黒い赤に染めた。『お父さん』はこれを見て、嬉しそうに頷いて言った。
「流石、私の作品だ。お前らは二人で一つの存在。二人いなければ、完全にはならない。」
「01号02号…………いや、サリア、エルヴァ。伝説としての役目を果たせ」
誰かの声で目が覚めた。身体が汗でびっしょりだ。
兵士がこちらにやって来て、牢屋からでろと急かすように言った。あの夢は何だろうか?




