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青空の天使  作者: 夏蜜柑
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青空

ガルムはまだ帰ってこない。

仕方がないので、魔法について考える事にする。パッと浮かんだ言葉を頭の中で繋ぎ合わせる。

暫く考えていると、突然大きな音が聞こえた。音の方向を見ると、黒い棺桶をもってる人たちが出てきた。

「なんだ。葬式か……」

棺桶を持っている人の周りには、座り込んで泣いている者もいる。別に、私には関係の無い事だ。

もし私が死者を知っていたとしても、生き返らせる事はできない。それに人間は必ず死ぬものだ。なのになんで泣けるのだろうか?理解できない。

いつの間にか隣に、ガルムがいた。

何故かガルムは泣いていた。多分、葬式のことでだろう。なんでこいつはあったことも無い奴の為に泣けるのだろう。理解ができない。

「お前はなんで泣けるんだ?」

「そんなの、悲しいからに決まってるだろう」

「…………意味がわかんない。あったことも無い、話したことも無い、見たことも無い奴の為になんでわざわざ泣かなきゃいけない」

「………お前にはわからないよな。人間じゃないから」

「すまんな。人間から、受けてきた仕打ちのおかげで、私はそういう感性とやらを失ってしまったのだからな」

「………ああ、そうだったっけ」

皮肉に笑う私の言葉に、雲ひとつ無い青空を見上げて、ガルムはそう呟いた。



次は海を渡ることにした。水門が開かなかったから、船が出航できなかったようだ。武器を買ったせいで残り少なくなった金をはたいて、2枚の乗船券を買い、船に乗り込む。ここから何処かへ行くつもりだ。世界を変えるの手伝ってもらう為に、強い人物を勧誘する。それが目的。

甲板から海の表面を二人して見つめている最中、ふと聞きたかったことを思い出す。

「…………あのさ、聞きたいんだけど」

「なんだ?」

ガルムの白髪を指差しながら言う。

「その白髪、大丈夫なのか」

「ああ……大丈夫じゃない」

「えっ?」

だから、村の人に変な目で見られていたのか。バカだなこいつ。口には出さないが心の中でそう呟く。

「どうしようもないしさ。変えれないし」

「………しょうがない。今すぐに変えてやる」

色を変える呪文。これも昔私が作り出した。

こいつにはどんな色が似合うか、少し考えて呪文を唱える。白髪は天辺から徐々に綺麗な茶髪になった。

「おー、スゲー」

「少しは敬えよ?」

「はーいはーい、わかりました〜」

「月に一度かけなきゃ、意味は無いがな。お前には十分だ。」

「ふーん、でもこれでなんか言われなくて済む。あんがと」

今更だけど、本当にガキみたいな奴だ。

最初の時はいけ好か無い奴だと思っていたが、たった1日一緒に過ごしただけで、結構こいつの事がわかったような気がする。私だけだろうけど。

進む先の遠くにうっすらと建物が見えてきた。そろそろ新たな土地につくだろう。



船を降りて、すぐにある大きな建物に入る。そこからは情報を集める為自由行動となった。

私はまず酒場に行った。

やはりここは情報が集まる。

人が行き交い、怒号が飛び交うその中で一際目立つ男がいた。周りと比べると整った身なりで、仕草も表情も高い身分の者って感じだ。大体あーゆうのが情報屋だ。男の目の前が空いていたので座る。

「私に何か用ですか?お嬢さん」

「あんた、情報屋でしょ?。人工魔力水晶(マテリアル)あげるからさ。情報、ちょうだい」

机上に不透明な六角形の水晶をひとつ置く。

人工魔力水晶(マテリアル)っていうのは、全ての魔法道具の中心になっている魔力を凝縮されて作られた水晶だ。質がいい魔力で作られた人工魔力水晶(マテリアル)は高く売れる。意識を集中させれば、数分で作れる。

男は水晶を手に取り見つめた。その質の高さが金になると踏んだのか、ポケットに滑り込ませた。

「貴女が求めてるものとは、違うかもしれませんが」

「それでもいい」

「聖櫃の剣とは知っているでしょうか?」

「?何それ」

カルーアミルクを、のんびりと歩いている店員に頼んだ。私は酒関係は見た目によらず好きだ。

「聖櫃の剣は其の白い刀身が特徴でエルフや悪魔、力を持つ限られた人間にしか使えない剣です。力なき弱者が使うと持ち主を殺すとか……。あと持ち主の得意武器によって形が変わるらしいです。」

「物騒な剣だな。」

「どこにあるか知りたいですか?」

「うん、教えてよ。」

いつ頼んだのか分からないが、葡萄酒を喉に流し込みながら男は言った。

「どこかの騎士兵団に祀られてるらしいですよ。そのぐらいしか知りませんね。」

使えない情報屋、と小声で呟く。

その剣の見た目を想像する。見たことは無い雪のように白く、この世の何もかもを斬ってしまうぐらい鋭い刀身。そんなものが、私の手に入ったらどんなに嬉しいことだろうか。それにしても、カルーアミルクは口当たりが柔らかで美味しいが、頭にクラっとくるぐらい強めだ。



「ありがとう」

情報屋に手を振って、酒場を出る。待ち合わせ場所にガルムはもう来ていた。

「おっせーよ。で、情報は手に入ったのか?」

「手に入ったっつーの。先にガルムから言え。」

「ここから東に行くとラグンの街というのがあるらしいぞ。……お前の情報は?」

「聖櫃の剣っていう剣について。」

「ふーん。まぁ、行こうぜ?」

ラグンの街へ続く道を歩く。よく整備された道だ。ウサギの塩焼きを途中で食べる。もといウサギの魔物を焼いて、ナイフで皮を剥ぎ、塩胡椒をふって食べる。


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