食事
宿屋の一室でまだガルムは寝ていた。
寝顔だけは子供のようにあどけなく、可愛らしい。寝顔だけはな。顔や手足をよく見ると擦り傷や切り傷が多い。
「………おい起きろ。」
返事が無い。ガルムの寝ているベッドの淵に座り、そっと耳元に顔を近づけ、大きな声で叫ぶ。
「おい!起きろ下僕!」
「はいっ!?」
流石私の下僕。直ぐに飛び起きた。
「さっさと支度しろ!仕事だ」
鋭い声を上げる。
「仕事ってなんだよ……?」
「鍵探し」
「は?」
「鍵探しと言ってるだろう。耳が聞こえ無いのか?」
やはり此奴の脳味噌は少し足り無いようだ。脱げかけていたフードを被り直す。
「いや聞こえるけどさ。なんでそれやるの?」
「3万G払ってくれるって言ってたから引き受けた」
世の中金だ。そう全て金。金さえあれば、何でもできる。あの時のように。
「さぁ、行くぞ」
「分かりましたよ……」
宿屋の主人に金を払って外に出る。
村の外に出る。
ここから南に行くらしい。早速兎の魔物が出てきた。これは美味しそうだ。
「炎魔法」
メラメラと真っ赤な炎が兎の魔物をよく焼く。聖浄の魔法をかけたナイフで、毛皮を剥ぎ取りもう一度炙る。
「え?食べんの」
「そうだが?昔似たような魔物を食べたが、美味しかった。」
こんがりと焼けた部分を口に入れる。
仄かな甘味とジュワジュワと染み出す肉汁が口いっぱいに広がる。胡椒あたりで、味付けしたほうがいいかもしれない。
「ほら、ガルムも食ってみろ」
「ええ……」
嫌そうな表情が、一瞬にして驚きの表情に変わる。
「美味い」
「だろ」
よし決まりだ。これから、出てきた兎の魔物は焼いて食糧にするつもりだ。焼いた時の魔物の叫び声が耳に残るが、いずれ消えるだろう。
「イカとか魚介類も焼けば美味しいんじゃねーの?」
「ああ、確かに……」
途中、現れた食べられそうな魔物を焼いて食しながら道を進む。叫び声ばかり、聞いて少し嫌な気分だ。先程あんなことを言ったが、どうにも進んで食えそうにない。




