日常
起床して消灯時間まで、休む間も与えられず性の捌け口にされ寝る。
その反り返った棒から精液を吐き出し、相手が満足するまで口や手で奉仕を続ける。
餌として与えられるモノは醜悪なゴブリンの涎煮と紙のように薄っぺらい豆のパン。これでもマシな方だ。
満足するような働きをすれば騎士団員たちの食べ残しを少々。相手を悦ばせられなかった時は鬱憤晴らしに過度の暴力を加えられる。
いつもいつも鬱憤を晴らすために殴られて、傷の治りが早いからといって、手足の腕の骨を何回も折られる。
殴られ続けて、何時しか心に鍵をかける事を覚え、痛みも感じなくなってきた。
もう私は一生ここから出る事はない。そう考えていた。気高い天使の象徴とも言える翼を毟られてからは、その考えが一層強くなった。もはや考える事も呼吸をする事さえも無意味な事。
私はエルフだ。エルフについて語るとなると、今から五十年ほど前、エルフと人間で抗争があった事を話さなくてはならない。《聖戦》と呼ばれ後世にまで語り継がれる程酷い争いは、つい十年前に終結を迎えたばかりだった。
血を血で洗う醜い戦争の結果、エルフは殆ど絶滅。生き残った者は捕まって雄は家畜の飼料となり、雌は性の奴隷となった……まぁ、逃げ出した奴もいるだろうが。
まだ産まれてから日が浅い私が配属された所は王都近くの騎士団だった。
大勢の足跡が聞こえる。私を犯しに来たのだろう。それ以外はこんな薄汚い牢屋に足を運ぶはずが無い。
「なぁなぁ、新しく配属された騎士団長。どう思う?」
「俺はあんまり好きじゃないな。何ていうか、あの眼が妙に怖くてさ……。」
ここの兵士達は仕事はしない癖に口だけはよく動く。おかげで色んな機密情報が舞い込んでくるが、此処から出れない私には関係のないことだ。
いつも通り奉仕を続けていて、ふと、隣の牢屋の少年が元気は元気だろうか、という些細な事が気になりだす。最近、あの子の声を全く聞いていない。男に犯され堪えていても出てしまう喘ぎ声さえも、ここ最近は全く聞いていない。
何か、あったのだろうか。
「さーて、仕事に戻るかぁ………」
ヤる事を終えた兵士たちは、スッキリとした表情で、足早に戻り始める。何時までも、この汚らしい場所に居たいとは誰も思わないだろう。
「………あ、あの!」
私は言葉を喋ってはいけない。
喉から出していいのは喘ぎ声と嘔吐物、それだけだ。それ以外のモノを口から吐き出せば全治数週間の暴力を加えられる。
それでも、あの子の事が知りたかった。
「と、隣のエルフ……私の、弟は生きていますか?」
「隣の……ああ……あいつなら死んだよ」
最後に欠伸しながら歩いていた者が憐憫に満ちた声色で呟いた。
足元から崩れ去っていくような何とも言えない恐怖を覚えた。必ず死ぬって、そう分かっていたはずなのに。
それでも、私の瞳からはもう涙一筋すら流れる事はなかった。十年間光当たらぬ牢屋に囚われ、犯され壊されて、喜びも悲しみも何処か奥に閉じ込めてしまったから。
最後に、誰かが喋った言葉は私には聞き取れなかった。
サリア
真っ白な肌と髪の毛を持つ少女。目は美しい紫色だ。天使の血が混じっているようだ。身分はまだ明かされない。