家族旅行―岩野家編―
急ピッチで仕上げたものなので、今度手直ししようと思っています。
なので、直すときに話が変わる可能性があるので、これは次の話を書く際の一つのネタとして見ていただけると嬉しいです。
「次、どうする?」
「んー…私、アレが乗りたい!」
「じゃあお母さんここで待ってるから、二人で行ってきなさい」
そう言うと、二人の子供は元気よく返事をして目当ての乗り物へと駆けていく。
その様子をほほえましそうに見ていた女性は、子供たちの姿が見えなくなると近くに置いてあった休憩用の椅子へと腰掛ける。
そしてようやく一息ついたところで、
「そこの美しいお嬢さん、お飲物などいかがですか?」
突然、スッと横からジュースを差し出される。
そのことに驚いた女性だが、ジュースを差し出している本人を見て、ホッと胸をなでおろす。
「ありがとう、樹さん」
そこにいたのは、先ほどまで散々子供たちにからかわれていた樹の姿があった。
樹は、そのままジュースを女性―――夢月に渡し、自分もその隣に腰掛ける。
「樹さんだなんて。ダーリンでもパパでもあなたでも、どれでも大歓迎だよ?俺は」
「いえいえ、そんなことしたらサラさん怒るんじゃない?」
「いや?サラはよくできた妻だよ。俺がどこ行ってもちゃーんと戻って来ることを知ってるから、ちょっとぐらい遊んでも怒らない」
「そうなんですか」
「だから遠慮せずどーんとダーリンって呼んでもいいんだぞ」
「考えておきますね」
夢月はそうふんわりと笑って返すと、それにつられて樹もにこりと笑う。
そんな、ほのぼのとした一時だったが
「あーおとーさんだ」
「あ、ほんとだ。甲斐性なしだ」
それはすぐさま帰ってきた子供たちの声によって、跡形もなく消え去った。
「おぉ!梨香と美圭じゃないか!!元気にしてたか?」
「うん」
「お父さんは?また、知らない女の人に手を出してる?」
「…それは元気かどうかと関係あるのかい?」
「お父さんが女の人に手を出さないなんて元気じゃない証拠じゃない」
「むしろ地球崩壊の危機だよね」
「ねー」
「…2人が仲良く、元気そうでお父さん嬉しすぎて涙が止まらないよ……」
「あらあら」
心なしかこちらでもだいぶいじられているような気がしないこともないが、久しぶりの我が子の姿に、樹は自然と舞い上がる(先ほど地にたたき落とされた気もするが
それは後ろからようやく追いついた芝崎にも読みとれたようで、しばらくはこのままにしておこうと、元来た道を再び戻ろうとしたが
ピピピ ピピピ
「?これは…」
その時ちょうど入った定時連絡ではない、緊急連絡がかかってきたことによってその配慮は無と化すことになる。
急いで再び樹のもとへと向かおうとするが、先ほどまで家族水入らずでやっていた場所にその姿はどこにも見えず、芝崎はそのことに気づき戸惑う。
「ボサボサするな。エマージェンシーが入ったんだろう?行くぞ」
「ッ!!?樹様!!」
だが、急に後ろからかけられた声にハッと我に帰った。
そして、普段ならばみられないような部下の姿にすこしだけ笑うと、樹はそのままどこかへと歩き出す。
芝崎も慌てて樹の後を追いかけ、隣に並んだところで
「どうした芝崎。普段のクールさがなくなってるぞ?こういう緊急事態こそ、落ち付き冷静に事をおこさねば」
「…はい、申し訳ありません」
「いいさ。で?どうしたって?」
「いや、あの…そんなに大したことではなさそうなので…わざわざ樹様が出ずとも、私たちでなんとかいたします」
「ん?仕事魔の芝崎が珍しいな。どうした」
「いえ。久しぶりの家族水入らず、それを邪魔するのは、少し…」
その言葉に逆に樹がキョトンとするが、しばらくして言葉の意味を理解するとふっと笑う
「いいさ。梨香には『お父さんお仕事あるんでしょ?なら、さっさと行って片付けてこなきゃ』って言われたし、美圭には」
『あー…でも、アレぐらいなら別にお父さん行かなくても大丈夫だろうと思うんだけどなー…』
『ダメだよ』
『美圭?』
『お父さんから仕事と浮気癖とっちゃったら何も残らないじゃない。唯一の…そこだけはいいところなんだから』
『うわーい、お父さん頑張ろうかなー』
「って、言われちゃったし」
「つまり、娘にカッコいい姿を見せたいんですね」
「いやーアレは『さっさと行け!』って感じだったな。いや、ほんと良い目をしているよ。ウチの娘は」
「そうですね…」
すこし呆れるものもあるのだが、芝崎はそれを聞いてさきほどのためらいを捨てると、すぐさま気持ちを切り替える。
「緊急連絡は、どうやらちょうど休憩中の班から回ってきたようです」
「どうした?侵入者でもでたか?」
「はい、恐らくはそうではないかと…」
「恐らく?」
「実は、途中で連絡が途絶えてしまったらしく…今、急いで確認に行っておりますが未だ何も」
「そうか。だが、精鋭部隊を連れてきたつもりだったが、こういとも簡単にやられるとはな。俺も落ちたものだ」
「いえ、それは私の落ち度です。申し訳ありませんでした」
「いや。そんなことないさ。さて、芝崎」
「はい」
樹は、そう芝崎に声をかけると、一度大きく深呼吸をして振り返る。
その目は、先ほどの家族と楽しんでいたような柔らかい目ではなく
「狩りの時間だ」
野生の、獣のような目つきになっていた。
腹黒がわからないです。難しいよ腹黒。
今回は、いつもかわいそうなお父さんをちょっとかっこよく書こうと思って挫折した結果です。
もう無理だと思う。
そんなこんなで、だいぶお久しぶりですごめんなさい。
長らく放置してたので、これからまた少しづつ頑張ろうとか思っているので、まだ読んでやるよって人がいてくれれば、これからもお付き合いしてくだされば嬉しいです。
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。