家族旅行ー到着!ー
「到着!!!!!!」
バスに揺られる事3時間。
その3時間の有意義な過ごし方が、
我が愛娘(&愛息子)と楽しく遊ぶ(正:遊ばれている)事2時間30分。
お腹がすいたといわれ、途中高級レストランからシェフを連れてきて食事させること30分。
いつもかまってやれなかった分、今日は沢山子供たちと遊ぶ(正:遊ばれただけ)事ができて、父さん。とってもうれしいんだが・・・
「ついた瞬間置いてけぼり・・・orz」
そんなガックリうなだれる父の心知らず、子供たちはいっせいに色々なアトラクションへと散らばっていった。
皆ほぼバラバラに散ったので追いかけるわけにも行かず、一瞬にしてその場には樹と侑紀しか残っていなかった。
「ゆーうちゃぁん・・・」
「ンな気色の悪い目で見んな。そしてすがるな」
「お父さん最近子供たちとのコミュニケーション取れなくて寂しいよ・・・」
「ハッ、自業自得だな」
そういい捨てると、侑紀もまた園に入ると何処かへと姿を消してしまった。
ついに誰も居なくなり、樹は本格的にバスで出来た影でいじいじしていると
樹が隠れているバスの隣にもう三台新しいものが来、それが止まった瞬間、中から大勢の人たちがまるで軍隊の訓練を受けたかのように動き、すばやくいじけている樹の前に綺麗に整列をし始めた。
そして約15秒後全てが終ると代表役のような人が三人、さらにその前には後ろに控える隊の総隊長らしき人が一人、その列の前に立って敬礼をし、
「樹様ッ!特殊班30名全員集合完了しましたッ!!」
「同じく、医療班15名全員集合完了しましたッ!!」
「同じく、精鋭部隊『鸞』10名全員集合完了しましたッ!!」
「樹様が御呼ばれになった者、コードネーム『緋秧鶏』55名すべて到着しました」
順々に樹に報告をした。
そして、最後に総隊長がそう言い終わると、先ほどまでバスの陰でウジウジしていた樹がスクッと立ち上がると
ゆっくり『緋秧鶏』の方へ向く。と
「いいかッ!!今回の使命は何時もと違って大事なもんだッ!!」
いつもと違い、ドスの聞いた声で叫ぶ。
「テメェ等もし俺の家族に擦り傷ひとつついてみろッ!そン時は担当者はもちろん、その家族担当全員明日の日は拝めねぇと思えッ!!」
「「「ハッッ!!!」」」
「けどな。俺も鬼じゃねぇ!!担当以外、非常時以外なら好きに遊んでかまわねぇからな!たっぷりはしゃぎやがれ!!!」
「「「ありがとうございますッ!!!」」」
「わかったら。散れッ!!」
そう樹が言った後、三部隊とも園の中に入っていった。
しばらく騒ぎ声がそこらじゅうに響いたが、すぐに収まる。
そうして、そこにはリーダーらしき人物と樹が残った。
リーダーらしき人物はそこから一歩も動かず、ずっとその場におり、樹もしばらく仁王立ちでじっとしていたのだが、もともと騒ぎ好きな性格なため、そんな無言の雰囲気に耐え切れず、
「芝崎、お前はいかないのか?」
「私は樹様のお目付け役ですので」
「いや、俺は愛する我が子と一緒に回りたいのだが」
「そして、樹様が無茶をして侑紀様や梨香様、美佳様にご迷惑をおかけしない様に私がいるのです」
「・・・チェンz「その命令は却下いたします」
樹は提案とばかりに隣でずっと立っている芝崎の方へ向くが、芝崎は相変わらず園の方を向いたままバッサリと切り捨てる。
「さぁ、ぐずぐずしてないで行きましょうか」
「・・・せめてもう少し色気を出してくれてもいいんだぞ・・・?」
「遠慮いたします。それに、私は一分一秒でも暇があるなら樹様にたまっている報告書の確認と今後のスケジュール確認、依頼内容の確認などをしてもらうので、このように」
そう言いながら芝崎は機能性抜群のすこしゆったりしたGパンを引っ張ってみせる
「樹様が逃げられてもすぐさま追いかけられる物でないと・・・」
「せめて、最近のファッションに則ってちょっと破けているのとか・・・」
「あんなもの、追いかけているうちのハンデになるとしか思えません。どこかに引っかかったりずれたり、その隙間を狙われたらどうするのです。私にはいまいち最近のファッションが理解いたしかねます」
芝崎はそう言い切ると、樹はため息をつきながら
「芝崎・・・お前ほんとに女か?」
「まぁ、一応生物学上。というより私が女ではなければなんだとお思いで?オカマにでも見えますか?」
「お前、見目は美しいんだがな・・・性格がな・・・せめてもう少し女らしく・・・」
「さ、樹様。さっさと行って書類整理してください」
そう言って芝崎は、樹の首根っこをガシッとつかむとずるずる園の中へと連れて行った。
「え!?ちょ、遊園地って遊ぶためにあるんだよな!?」
「あんなの子ども用です。あなたは少々勉学が足りない」
「お前、ホント俺にも容赦ねぇな・・・」
「私を首にでもしますか?」
「いや。女だし、美人だし、有能だから許す」
「それはありがとうございます」
芝崎はずるずると樹を遠慮なしにひこずりながらそういった。が、
その顔は、太陽のせいか、少し赤く染まっていたのは誰もしらない―――