恋人未満 ペプシとコーラ
なろうの流行ではなく、
少女漫画的なお話&夏いので飲料水。
年々続く人口減少を懸念し、政府は少子化対策としてある政策を行った。
通称「恋愛ゲー法案」。
全国の高校生に対して、カップリング推奨を行う制度。
簡単に言えば、お見合いのような物。
ご高齢のお偉いさんが集まって考えた奇策。
年齢を反映してか、「愛情は結婚してから芽生える」という考えが根本にあるシステム。
とりあえず、男女一緒に長い時間協力して何かやれば、勘違いして恋人になるだろうという考えが見えないわけでもない。
政治執行者や投票者の年齢が高い事も有り、若者には理解しがたいこの法案は通過した。
高校入学と共にあらゆる情報が分析され、「マザー」と名付けられた人工知能が機械的に相性が良いカップルを選別する。そして、選別されたカップル事に、強制的に一定時間のカップル活動が求められる。
◇
そして私は、この春高校に入学した。
◇
一か月後。
「はぁ~」。
私は教室で緊張していた。
高校に入学してからの一カ月はあっという間にすぎて行った。
本当に早かった。まだ10日ですと言われても信じてしまうぐらい。でも、暦の上ではしっかりと1ヵ月経過していた。
その間何をやっていたかというと、主にテスト。マッチングシステム「マザー」の情報収集のために、心理テスト、体力テスト、学力テスト、性格テスト、倫理観テストといったように、やたらと「テスト」という名の試験を受けた。でも、それも先週で終わった。
終わった瞬間の解放感は飛びぬけていた。
皆、異様にハイな気分になっていたと思う。
普段仲良くないメンバーでカラオケに行くぐらい。
私は、自分の名前「緋色ひなこ」が表示されたスマホの画面を見る。
今日はなんと、カップリングの発表の日。
後数時間でこの画面に、カップリング相手の名前と顔が表示される。
お偉い人工知能「マザー」様(笑)が私の運命の人を見つけてくださる。
私は昨夜からドキドキしていた。
私には交際経験がない。
別に積極的に彼氏が欲しいわけでもないし、絶対にいらないというわけでもない。
良い人がいたら付き合いたい。できればイケメンで性格がよく、優しく、お金持ちだと良い。後、彼から告白してほしい。
そんな夢フィールドな思いを持つ私だが、急に近づいた現実にそわそわしていた。
もうすぐシステム上とは言え、彼氏?ができるのだ。
「私大丈夫かな~」「もしかして私だけマッチングゼロかも・・・」「物凄く変な人と組み合わせられるかも?」「いきなり「チェンジ」とか言われるかも(チェンジシステムないけど)」と不安で一杯だった。
そんな思いに囚われていると、
「よっす。ひなこ」
声の方向を向くと、机に鞄を置く女の子。
スラリとモデルのように伸びた足が目に入る。
高校に入って一番の友達。
サバサバしており、少し大人っぽい所が憧れる、私の親友の斎木咲。
「おはよう、咲」
「どうしたの?少しプルプル震えていたけど」
「うん・・・今日の発表が気になって」
「発表?」
咲はなんの事か分かっていないようだ。
私もそういう気持ちを持てたらよかった。
「カップリングの発表だよ。あれ、今日なんだ」
「あ~あれね」
「咲、気にならないの?」
「別にどうってことないでしょ。委員会のペアとかと同じでさ」
まぁ、確かに似たような物だけど・・・
「カップリング」という名はついているが、実際はペアになっていくつか共同作業をするぐらいだ。捉え方によっては、委員会や部活と変わらないともいえる。
「うん。でもほら、結構な時間一緒にいる人だよ。気にならないの?」
「私は誰でもいいよ。いや、よくないかな。ああいう馬鹿は嫌だ」
咲の目線を追うと、教室で2Lのスポーツドリンクをグビグビと飲んでいる男子生徒。
確か、名前は西園寺レンヤ君。
そこそこのイケメンで、寡黙なタイプ。運動が得意で、確か野球部だったかな。
ふと、彼と目線が合う。
とっさに私は目をそらす。変に思われたかも?
「あいつは馬鹿だから一緒にいると疲れる」
「咲、知り合いなの?」
「ちょっとね。家が近所で」
「そうなんだ~」
すると、廊下の方が騒がしくなる。
そちらを見ると、一人の男子生徒が歩いている。
女の子がその周りに群がっている。
モデルのように顔がよく高身長。誰にでも愛想がよい学園の王子様こと、西ノ宮君。
咲は彼を見て、
「ああいう人とカップリングされる人は大変だろうね」
「・・・うん」
◇
『それでは、今からカップリングを発表します。一斉にデータを送信しますのでご確認ください』
校内放送が鳴り響く。
私は教室でスマホを確認する。
両手でスマホを持ち、一生懸命凝視する。
そして念じる。お願い、良人、良人、イケメンで、性格良くて、お金持ちで・・・・。
横では咲ちゃんがだるそうにスマホを見ている。
「ピコーン」
電子音が鳴り響く。
私のスマホに相手の名前と顔が表示された。
画面にくぎ付けになった私・・・
え?
本当に?
どうしよう?
思考が働かない。
「うわぁ、最悪」
咲がスマホを見ながら毒つく。
「誰だったの?」
「あのばか」
と頭を僅かに動かす咲。
目線を追うとそこには西園寺君。
あちらも、こちらを見て微妙な顔をしている。
「ちっ、あいつかよ」という声が聞こえてきそうな。
彼の表情に対して、咲は睨みかえす。
威嚇が終わると、
「で、ひなこは誰になったの?」
「それは・・・・」
と言おうとした瞬間。
教室がざわめく。主に女子生徒の声が。
そして近づいてくる足音。
その音は私のすぐそばで止まる。
かすかに香る、コカの香り。
「よろしく緋色さん。僕は西ノ宮司。君のパートナになったみたい」
学園の王子が私の傍にいる。
心臓の音が頭の中で鳴り響く。
体温が上昇しているのが分かる。
口を動かそうとするが上手くいかない。
近くでイケメンを見てしまったためか、そのオーラに私は押しつぶされていた。
私は小市民なのですよ。
私を見てため息をつく咲。
「ちょっと今、ひなこ調子悪くてね」
「そうなんだ。えっと・・・」
「私は友達の斎木」
「よろしく斎木さん」
「うん」
「今日は挨拶に来たんだ。明日からの活動、頑張ろうね」
そういって去って行った王子。
私はポカーンと彼を見つめていた。
彼が私のカップリング相手。
あれ、でも私、一言も話してない・・・
やってしまった。
そんな私を見る咲。
「ちょっと、ひなこ。大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だと思いたい」
「大変なのはこれからだよ」
「え?」
ふと周りを見ると、大勢の女子生徒が私を見ている。
他のクラスの生徒も見える。
「え?あの娘が王子様のペアなの?」
「釣り合わないでしょ」
そんな表情が見て取れるし、実際声が聞こえる。
皆さん、聞こえてますよ。
そういうのは聞こえないところで言うものですよ。
咲が「きぃっ」っと、猫のように周囲を睨むと、女性生徒が霧散していく。
咲の威嚇は効果はバツグンのようだ。
咲は私の肩を優しく叩く。
「大丈夫大丈夫。すぐ収まるよ」
「そうだといいけど」
◇
「緋色さん?これ自分で作ったの?」
「うん」
私は今、王子様こと西ノ宮君と昼食を食べている。
なぜか?
カップル制度のためだ。
カップルに選ばれた者は、昼食、特定授業、掃除を一緒に行わなければいけない。
学食のホールで食べているのだが、周りからの視線が痛い。
皆、選ばれたカップルで食事をしているのだが、何故か私に刺さる視線。
私は自分で作った弁当を無心で食べる。
これほどまでに食事に集中したことはないかもしれない。
そのためか、普段は気づかなかった私の料理の落ち度に気づいてしまった。
卵焼きに砂糖を入れすぎた。
というより、私の作る料理、全体的に甘い。
王子は笑顔で私に話しかけてくる。
そのためか、私は一緒にいるだけでフワフワした気分になる。
王子の言葉は頭を素通りするが、心を温かくする。
咲にひじで脇を押される。
目線で「なに呆けてるの?」との合図。
「そんなことないよ」と目線で返す。
意識を取り戻し、からあげを口に入れる。
「緋色さんと斎木さんは仲良いんだね?」
「まぁね。それより、西園寺も何か話しなさいよ。西ノ宮君が一人で話すのは変でしょ」
そう。
この机には、西ノ宮君もいる。咲のカップル相手なので。
「お前、いつもうぜ~な」
ツンケンな態度でおにぎりを食べる彼。
お前はうちの弟か!中二の弟も、お母さんや私から有益なアドバイスを貰うとこの手の反応をする。全く、これだから男の子は。
「あんた程じゃないわよ」っと咲は西ノ宮君を睨む。
威嚇勝負で負けた西ノ宮君は、小さな声で「悪かったよ」と呟く。
私が弟にする態度に似ている。咲に比べると私の威嚇は初心者レベルだが。
「まぁまぁ、二人共。カップルに選ばれたんだから仲良くしようよ。本当は相性いいはずだよ。「マザー」システムのマッチング成功率は高いって聞いてるし」
「私たちは例外枠よ」
「そうだな」
二人はいがみ合う。
が、すぐに西ノ宮君が目をそらす。
悉く負ける彼に同情した。
私はそんな彼らを前に、ただから揚げを食べていた。
塩コショウをもう少しかけるべきだったかも。
◇
数日後の放課後。
西ノ宮君と一緒に空き教室の掃除をした。
まぁ、ほとんど彼がやってくれたんだけど。
「駅まで一緒に帰る?」
「ううん。私、寄るとこあるから」
「そう。それじゃあ、また明日」
「うん」
私は彼を見送った。
なんとか会話が成立するようになった。
イケメンに多少免疫がついたのかもしれない。
しかし、王子といると心がドキドキそわそわする。
まさか自分がそんな事になるとは・・・
しかし、彼と離れたためか、フワフワとした感覚が急速になくなっていく。
いかん。なんか変な癖になりそう。
カップル制度の餌食になっているもかも。
自分を取り戻さなければ。
私はとある場所に向けて歩き出す。
歩きながら、何度か周りを確認する。
外からは運動部の声。校舎内からは吹奏楽部の音。
人に見られないようにとある部屋に入る。
そして、鍵を閉める。
私は、部屋の中の冷蔵庫からコーラを取りだし、パソコンの電源を入れる。
ポッキーを食べながらコーラを飲む。
極楽極楽。
やっと現実感がでてきた。
パソコンにパスワードをいれて、乙女ゲームを始める。
昨日は確か、腹黒王子√に入った所で終わったんだった。
私はヘッドホンをしながらマウスをカチカチと鳴らす。
直ぐにゲームに没頭した。
と、暫らくすると突然ドアが開く音がする。
私が振り返ると、そこには王子。
あれ?鍵したはずなのに。どうして?
彼は部屋を見渡す。
手には鍵を持っている。鍵のタグを見た所、マスターキーのようだ。
周囲の観察をおえ、ニヤリと笑う。
「私用の冷蔵庫に菓子&ジュース、パソコンで乙女ゲーね・・・・」
「違うの、ここは・・・・・そういう部活なの」
「廊下には、理学研究部って書いてあったけど」
「そうなの。理学研究部なの。私、小さい頃から理科が好きで・・・・」
「好きで?」
「好きで・・・理科つながりで乙女ゲーやってるの」
我ながら意味不明な言い訳だ。
彼は部屋の中を歩き、ある棚の取っ手を引く。
その中をまじまじと見ている。乙女ゲームが数百本は入っている。
「このゲームソフトの数。おこずかいで買える範囲じゃないよね。どうやって入手したの?」
「えっと、私の家、お金持ちなの」
「へ~そうなんだ。この棚に、部費で購入したような明細書があるけど・・・・・」
「えっと、それはその~人体模型買おうと思ったら、偶々知り合いからただでもらえて、予算が余ったから、ついつい有効活用しちゃって」
「そう。職員室行ってくる」
彼は部屋を出て行こうとする。
「お願い。誰にも言わないで」
私は彼に近づき、腕をとって引き留める。
彼はそんな私の腕を引き離し、立ち位置を反対にする。
そして・・・ドンッと壁に手をつく。
うおっ!壁ドンを食らってしまった。
さっきもゲームでくらったけど、3次元は違うな。圧力が。
「なら取引だ。今日からお前は俺の奴隷だ」
「え?」
急に雰囲気が変わる王子。
「分かったのか?」
「う、うん」
「そうか、それなら、とりあえずペプシ買ってこい。俺はコーラは飲まん」
私がぼーっとしていると。
「おい、早くいって来い」
私は部室を後にした。
◇
私は学校の自販機でペプシを買ってきた。
冷静になり、王子にイラついていた。
なんで私がこんなことしないといけないのよ!
私はペプシを振りまくった。
多分、30囘は振ったと思う。
これで王子様(笑)がどうなるかと思うと、ニヤニヤがとまらない。
おっといけない、表情を隠さないと。
私は、なんともない顔で部室に戻り、西ノ宮君にジュースを渡した。
「はい、どうぞ」
彼は缶を取り、私を見る。
じっと見る。私を。
私に缶を戻す彼。
「おい、お前が開けろ」
「え?」
私の心に風が吹く。
「お前は俺の下僕だ。それともなんだ?開けられない訳があるのか?」
「私、力がないから開けられないかも・・・・ははは」
「そうか、なら手伝ってやるよ」
彼は缶を持つ私の手に、自分の手を上からかぶせる。
缶の出口は私の方を向いている。
彼の方向に向けようと押し返したが、無駄だった。
2mmも動かなかった。
私は覚悟した。
「開けるぞ」
「・・・うん」
ブシャーという音と共に、ペプシが私に盛大にかかる。
ベトベトとした砂糖水が顔面にかかる。
鼻と口にペプシが入ったのか、ツーンとする。
缶の方向からか、王子には全くかかっていない。
「小物の考える事は分かりやすい。ペプシ臭いぞ。洗ってこい」
私は水道に急いだ。
◇
顔を洗い、水道からでる水に対して手刀を繰り返す。
「ムカつく、ムカつく」
一挙動ごとに怨念を込める。
あの腹黒王子の顔を思い浮かべて、水に攻撃を繰り返す。
何度も繰り返す。
頭の中では王子のHPがどんどん減っていく。
後少しで、「恐ろしく速い手刀」をマスターできそうになった頃。
「誰の事だ?」
ふと声の方向を向くと、怨念対象が。
「べ、べつに、誰でもないよ」
私は目を泳がしながら答える。
彼は首をかしげる。
「そうか。ほら、お前タオル忘れただろ。これで拭いとけ」
「ありがと」
「ちゃんと洗濯して返せよ」
「うん」
彼は手を洗い去って行く。
優しいんだか、厳しいんだかよく分からない。
◇
昼食時。
毎度同じメンバー。王子、咲、西園寺君。
王子ははさわやか王子のまま、笑顔で会話をつなげる。
昨日の放課後の彼が嘘のようだ。
私はそんな彼を怪しく見ていた。
「どうしたの、緋色さん」
「な、なんでもない」
「そう。何かあったら言ってね。力になるから」
その口でいうか!と思ったが、ちょっと興味が沸いてきた。
「それなら、コーラ買ってきてくれない。私、飲みたい」
場が凍る。
「え?どうしたの?」見たいな顔で私を見る咲。
笑顔がますます笑顔になる王子。逆に怖い。
「何いってんだこいつ」という表情の西ノ宮君。
咲が小声で、「ちょっとどうしたのよ」と呟く。
「いいから、いいから」と私は小声で受け流す。
そして、再度。
「私飲みたいの。コーラ飲みたい」
子供のように繰り返す。
さわやか王子様なら断らないはずという私の推測。
昨日の屈辱を今はらす。
私は彼の顔を興味深く覗き込む。煽るように。
「分かった。勝ってくるよ」
「いいって。ひなこがアホなこと言ってるだけだから」
「いいんだ。僕もちょうどジュースが欲しかったし。皆の分も買ってこようか」
「いいよ。そんなこと」
「俺はサイダー」
「ちょっと、西園寺も乗っからないでよ」
「ついでだから」
そういって、彼は席を立ちジュースを買いに行った。
「ちょっとひなこ。どうしたのよ?」
「何でもないよ。ただの実験」
咲は私を若干引き気味で見る。
「ねぇ、まさか勘違いしてるんじゃないの。別にひなこと西ノ宮君は付き合ってる分けじゃないんだよ」
「知ってる。私も王子好きじゃないし」
「本当にどうしたの?」
「咲は心配し過ぎ。大丈夫だよ」
「そ、そうならいいけど」
それ以上咲は追及してこなかった。
結局、王子は私にペプシを買ってきた。
「ごめん、コーラは売り切れだった」と言っていたが、その後私が確認したところ、そんな事はなかった。王子なりの抵抗なのだろう。そのせこさがちょっとかわいく感じた。
◇
部室。
「おい。ペプシが切れた。買ってこい」
「は~い」
私は購買にペプシを買いに走る。
勿論缶を振りはしない。
多分、この手は通じないと思った。
そして、部室で西ノ宮君とペプシを飲む。
一気に飲み干し、彼は私を見る。
「昼間のアレはなんだ?」
始まりました、尋問タイム。
「何の事ですか?」
「お前のふざけた態度だ。お前は餓鬼か」
「私はコーラが飲みたかっただけです」
「あれ、俺に対する復讐だろ」
「違います」
「そうか、だけど俺は負けない」
そうして、私と彼の関係が始まった。
皆の前では、さわやか王子の彼に対して徐々に無理難題をふっかける私。
咲はそんな私を初め驚愕の表情で見ていたが、途中で許容しだした。
「あ、又なんか言ってる」ぐらいの感覚になったのだと思う。
西ノ宮君も興味深そうに私と王子を見ていた。
咲に「こいつらどうなってるんだ?」と聞いていた。
なんだかんだいって二人は徐々に仲良くなっているようだった。
が、部室では王子と私の関係が逆になる。
私は甲斐甲斐しく王子に仕えた。
そんな生活が1週間続いた。
◇
部室。
王子はペプシを飲んでいる。
私も隣で飲んでいる。
ぐびぐびとペプシが喉を通る音が重なる。
冷蔵庫に合ったコーラは全撤去され、今ではペプシがつまっている。
私も洗脳されてペプシに嵌ってきた。
一緒に飲み干して、缶を机の上に置く。
「ひなこ」
「え?」
ビクリと震える私。
その拍子に机の上の缶が倒れて制服にペプシがつく。
染みになるかも、早く洗わなきゃ。
っていうか、初めて名前で呼ばれた。
「急に何?」
「ただ名前を読んだだけだ。驚くな」
「そう・・・」
「ひなこ」
「何?」
私は名前を呼ばれる度に震える。
体もだけど、心がざわりと振動する。
温かい何かが心の内からあふれ出す。
そんな私を見つめる王子。
王子は、冷蔵庫から次のペプシを取り出し飲み干す。
そして私を見る。
「名前を呼ばれるのが嫌そうだから、これからもずっと呼んでやる」
どういうこと?
え?まさか。
「命令だ、俺と付き合え。ひなこには一番の嫌がらせになるからな」
そう言うと、彼はさらに冷蔵庫から2本ペプシを取り出す。
一つを私に渡す。
私はそれを受けとる。
私は彼と一緒にペプシを飲み干した。
それから私たちは、正式に付き合う事になりました。
読了ありがとうございます。
宜しければ、他の作品もご覧下さい。
ご感想、お待ちしております。