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迷い仔猫の居候  作者: 小高まあな
第六幕 上手の猫は爪を隠す
16/26

9−1

 エミリは憤慨していた。

 G016に逃げられただけじゃない。

 探していたら、見知らぬ大学生ぐらいの男性に声をかけられた。いつものことだと無視しようとしたら、

「あの、神山って人からの伝言なんですけど」

 その男性はこともあろうか、そう言ったのだ。

 曰く、廃工場に来い、と。

 一体何様のつもりなのか。

 どうせ先回りして何か仕掛けるつもりなのだろう。こっちだってそれぐらいわかる。いつまでもお嬢ちゃん、じゃないのだ。

 荒々しく足音を立てながらエミリは廃工場に向かった。


「G016!!!」

 これ見よがしにシャッターが開けられた廃工場。

 無人のように見える中に向かって、エミリは叫んだ。

「いるんでしょうっ、出て来なさいっ!」

 返事はない。

 気配もない。

 もとより、居るのは不死者と幽霊だ。気配なんて感じられなくて当たり前だ。

 銃を構えたまま、中に入って行く。

 薄暗い。

 ゆっくりと、進む。

 中の物はすべて撤去されたあとらしい。がらん、としている。

 部屋の真ん中まで来た。

「神山隆二っ!」

 吠えるように名前を呼ぶと、

「はいはーい」

 かるーく返事が返って来た。

 声がした方を見る。見上げる。上。

 落下してくる影。

 高い天井に掴まっていたのか、と思った時には遅かった。

 真上から降りて来た隆二に組み敷かれた。

「ぐっ」

「駄目ー」

 銃を持った右手も軽々と捻られる。掌から転がり落ちた銃は、隆二のズボン、尻ポケットに入れられた。

「暴発すればいいのに」

 苦し紛れに呟くと、

「ここで暴発したところで嬢ちゃんの不利に変わりはない」

 隆二が笑った、ような気がした。

 顔が見えない。

「……頭を撃てばしばらくは動けないでしょう、と言ったのは私でしたね」

 フルフェイスのヘルメット。

「どこで手に入れたんですか? 盗品?」

「失礼な。借りたんだよ。知らない人に。未承諾だけど」

「それを盗品というのです」

 吐き捨てるように告げる。

 何度か脱出を試みるが、常人離れした力には勝てない。

 視界に、ふよふよと上空を浮かぶマオの姿。なんでそんなに眉根を寄せているのか。泣きそうな顔をしているのか。泣きたいのは、こちらだ。

「降参、してくんない?」

 隆二の声。

 泣きたいのはこちらだ。でも、泣かない。

「嫌です」

 エミリはきっぱりとそう告げると、少しだけ口角をあげた。

 そして、

「今です!」

 叫んだ。


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