五
『約束したでしょう。ずっと、死ぬまで一緒だと。僕は今度こそ守ってみせる。大切な、約束を……』
翌朝。薄い陽光に瞼を撫でられリュイは目を覚ました。
室内は相変わらず冬の寒気が支配していたが、肌と肌の直に触れ合う温もりが自分を守ってくれていることに気が付いた時、リュイはまた満ち足りた幸福な気分になって小さく笑みを浮かべる。
ライゼはまだ寝ていた。昨晩気を失うように眠りに落ちた後、全ての後片付けを済ませてくれたようだ。
昨日までと打って変わり頭の中にかかっていた靄のようなものはとれ、すっきりとしていた。
僕はライゼのことが大好きで、ライゼも僕のことを愛してくれている。
たったこれだけの単純なことなのに一体自分は何を思い悩んでいたのだろう。そんなことはもうとっくの昔にお互い知っていたはずなのに。
可笑しさを覚えながらリュイはそっとライゼの腕の中を抜け出し、身体を起こす。ライゼの耳元の黒曜石の耳飾りちらりと音を立てた。
「ん……」
相変わらず眠っていてもリュイが動くとすぐに反応するライゼ。薄く開いた静謐な森のような色をした瞳がとても優しくリュイを見つめる。
「おはよう」
目を細めてリュイが声をかけると、起き上った腕をぐいと引かれその胸の上に倒された。
そのままぎゅっと腕を絡められて抱き枕のように身動きできなくなったリュイはあやすようにライゼに言う。
「ライゼ、リーリオが待ってるよ?」
「もうちょっと」
悪戯っぽい笑みを浮かべるライゼにリュイはくすくすと肩を揺らす。
短い縞の尻尾がばたばたと苛立っているのが目に見えるようだったが、まぁ今日くらいはしょうがない。