怪傑!「珍」事件簿 第二話
これは、最高裁判所判事の我輩が、磯つりに勤しんでいた頃、珍事件に下した判決の事例集である。
およそ99%がノンフィクションによるものである。
第二話 『若葉マークの巻き』
この事件が起きてから何年の年月が過ぎただろうか・・・
佐野がまだ若かりし頃、そう・・・まだ東田とも一緒に釣行した事もない頃の話である。
その頃、佐野は毎週のように磯に通い、自らの技術を磨こうと切磋琢磨していた。まだ一緒に釣行するメンバーも確立しておらず、佐野は、まわりの素人軍団を誘っては、磯釣り友達を作ろうとしていた。
そんな素人軍団の中にあの小村がいた。彼は、磯釣りは初めてであったが、波止釣りには何度か釣行していたようである。これ幸いと、佐野は、小村とビギナー数人を誘い、半ばピクニック気分で磯へと出かけることにした。
面倒みの良い佐野は、他のメンバーのために「道具」「竿」「食事」と、一から十まですべての用意をこなし、万全の体制で出発に臨んだ。参加メンバーには女性もいて、当時独身であった佐野にとっては、胸ふくらむ釣行に間違いはなかった。
「初心者が多いし・・・あまり危険な磯には渡れないな・・・大きな磯で足元のいい所がいいだろう」と、心の中でつぶやく佐野。
そのころ、自称「波止釣り名人」の小村も、
「女性もいるし、トイレの問題が気になるな・・・」、女性にやさしい小村は、細やかな心使いを、彼の胸に秘めていた。
どうしてもトイレのことが気になる小村、しかし、どう対処していいかわからない。この問題を解決しなければ、
「俺の正義感に傷がつく」とまで思いを高ぶらせていた。
「やはり、佐野さんに相談して、問題を解決しよう!!」と、心に決意し、彼は佐野に質問することにした。
「佐野さん。今度の磯は大きくて安全なんですよね」
「大丈夫やで!二十人は乗れる大きな磯や!心配いらんで!女の子もいてるしな・・・」
「磯は船で渡るんですよね?」
「そうや!渡船屋が渡してくれるよ!」
「一つ質問してもいですか?」
「何や?改めって。なんか心配事でもあるの?」
「実は・・・女の子が一緒なんで・・・」
「なんか?まずいか?別に下心ないで」
少し弱気になる佐野がいた。
「いや~そんだけ大きな磯だったら・・・・」
「公衆トイレ付いてますよね!!」
さすがの佐野もこの問題は解決できなかった。
判決:公衆トイレ設置義務違反
渡船屋さんを書類送検