唯。~魔法少女りっちゃんと契約書
わたくしは猫である。名前は今「にゅい」。
わたくしは選ばれた少女⋯小学四年生のりっちゃんと一緒に妖魔を倒す使命をもつ。
「りっちゃん妖魔の気配よ。気をつけて」
りっちゃんとわたくしは、女子トイレへと駆け込む。
周囲をわたくしが警戒している間にりっちゃんが鏡の前で、変身する。
「よし、身だしなみは、大丈夫ね」
律子は、ポーチにルージュをしまった。
放課後の学校。誰もいないはずの視聴覚室の前、重苦しい空気が充満している。
「妖気が充満してるわ」
律子は、会議室の扉に手をかけ、中にはいる。私も、それに続く。
うーん、順番逆なんだけど。
「し、失礼します!」
わたくしは、叫ぶ。
「りっちゃん、構えて、あの黒いハコから妖魔が出るよ」
「うん、わかった」
りっちゃんが緊張しながらポーチから魔法のペンを取り出し握りしめる。
テーブルに置かれたアタッシュケースから取引先の人が書類を出し始めた。
「今回は契約の更新と変更点に付いてですね。概ね前回と同じですが1点だけ変更があります」
すごい勢いでハコから妖魔が飛び出してくる。
「りっちゃん、いつも通りで大丈夫よ」
りっちゃんは魔法のペンでサラサラと宙に文字を描いてる。
律子のペンが止まった。
「ユイ先輩、これ」
「そうね、私たちの権限じゃちょっと危ないわね」
わたくしは、校舎の廊下を駆け、助っ人を呼びに走った。
「りっちゃん、もうちょっと頑張って、今「彼」をよんでくるわ」
彼、「星屑の勇者は、りっちゃんのピンチに、また勝利目前に、ときとして現れる。
わたくしは、転送魔法陣を展開して、彼の元へ急ぐ。
チーン。扉が開く。私は7階のフロアをくまなく探す。
自称勇者課長のごみくず上司め。何処でサボってるのよ。
セイローン、ヒーリングエクスクラメーション!
わたくしが戻ったとき、りっちゃんは精一杯の技で、妖魔の進行を足止めしていた。
紅茶の香りが漂う。
「あー、これな。多分問題ない。さっさとサインしちまえよ。んじゃ。後よろしく」
さり際いつもの決め台詞と共に「星屑の勇者」は鮮やかにわたくしとりっちゃんの前から姿を消した。
戦いは終わった。学校は静まり返る。
カチッっと魔法のペンの音がし、淡い光とともに変身を解いたりっちゃん。
視聴覚室の乱れを直している。一時の平和が訪れた確信。わたくしは猫。魔力もちょっと心もとないし、お先に失礼させてもらうわ。
エピローグ
屋上のベンチで目が覚めた。律子が上から見てる。
「ユイ先輩って、猫みたいですね。大事な時にぷいっていなくなるし。屋上で寝てるし」
契約更新の後、私は昼食のお弁当をたべてそのまま居眠りしてたようだ。
お兄ちゃんに教えてもらったレシピの酢豚、完成度90%ね。
先方の見送りは律子に任せた。その足で多分ランチに出たんだと思う。
昼からも、別の案件がある。仕事モードに戻らないとね。
それはそうと、律子、その左手に持ってるステッキ何?。
「唯。~新人指導と魔法猫にゅい~」おわり




