夜の街、ある取引
《注意》
1.この作品は素人の作品です。表現方法や文法、設定やストーリー展開などの要素に不明点がある可能性ががあります。
なにか不足がある場合、遠慮なく指摘してくれると助かります。
2.この作品は、様々な作品に影響を受けているため、多少他作品と似通ってしまう可能性があります。
勿論、そうならないように細心の注意は払います。
3.当作品はこのサイトにおいて「SF」というジャンルに分類されます。そのためストーリー中に多くの非現実的要素が含まれます。
4.本編では記載できなかった設定が存在します。それらの設定は、今後番外として記載する可能性があります。
以上、注意事項です。これらを確認した上で、問題がないという方はどうぞ、お楽しみください。
暗闇を星々が支配する夜。
夕日が過ぎ去り、空に滲む赤い光の断片すら見えなくなった黒一色の背景に、ネオンカラーが一斉に広がる。
無骨な街並みを彩る蛍光色は、ところかしこで点滅を繰り返し、危なげな香りを漂わせる。
暗闇は蛍光によって駆逐され、そこには溢れんばかりの光と色のついた陰のみが跋扈する。
同時に、個性豊かな者たちが一斉に活気付く。
そうしてこの夜の街は、毎日のようにこの歪な社会を築き、生き続けている。
『クラシックネオン・アスタータウン』
それが、この“世界から隔てられた檻”につけられた、名誉ある名だ。
そして、光の裏に隠れる影が、怪しげに動き始める。
◆
とある廃ビルの一室。
ゴミと落書きが散見する無機質な建物の一角には、妙に小綺麗な場所が存在した。
そんな少しばかりの奇妙さを感じさせるそこからは、いつものように僅かな煙の香りが漂っていた。
突然だが、輝かしい夜の街に“裏の事情”は付き物だ。
特に、この歪んだ価値観で満たされたこの街に住む者から言わせれば、至極当然の事と言えよう。
しかし、臭いモノに蓋をしたくなるのは、古今東西どんな場所でも変わらない。非日常が日常と化した世界においても、全てを表面化することなど不可能である。
有り体に言うなら『汚れ仕事』というものだ。
汚れ仕事と言っても様々だ。
下水処理やゴミ処理といった言葉通りの仕事に従事する者もあれば、合法•違法問わず表沙汰に出来ない仕事を生業としていきる者も存在する。
この場合、彼らは後者である。
「邪魔するぞ」
「うわっ!誰だよ、って…お前か。せめて声くらいかけてくれ、寿命が縮む」
唐突な訪問に狼狽える女。それに対して、この場に訪れた男は何事もなかったかのように、目の前のくたびれたソファに腰を下ろす。
女は不服そうに男を睨んだが、男は全く意に介さず話し始める。
「『修理屋』。あんたに依頼したいことがある」
「こっちの事は無視か。まぁ、いつものことだから最早気にする事も面倒になったよ。で、聞こうか」
「話が早いな」
男は懐から、見慣れない造形の球体を取り出した。
握り拳一つ分程の大きさのそれは、この街で唯一『修理屋』を名乗る彼女でも、外見からどういったものか判別できない、実に奇妙な代物だった。
「これはまた、随分と珍しい代物だね?私の知らない物品ということは、“外来品”かな」
「正解だ。あんたにはこれの機能を修繕してもらいたい。無論、報酬は弾むぞ」
『修理屋』は男から差し出された書類に記された報酬に思わず笑みを溢しそうになったが、同時に男の言葉に呆れつつも言葉を返した。
「いくら私でも、知識にないことは実行できない。いくらか前の件でも言ったけど、こういう場合は必ず情報が必要になる。まさか、それなしに依頼しにきた、なんて事はないだろうね?」
「当たり前だ。そんな事であれば、そこに書かれた報酬など虫の糞にも及ばないだろう。以前はそれで痛い目を見たのだからな…」
男は苦虫を噛み潰した様に顔を顰め、頭を掻いた。
彼女はその反応を見るや、ニヤニヤと笑みを浮かべ男をからかい始めた。
「あ〜そうだもんなぁ?いや〜あの時はいっぱい稼がせてもらったからね〜♪」
「全く…アレの報酬額を利益が上回ってくれたから何とかなったが、経営赤字で路頭に迷う羽目になるかと肝を冷やしたぞ」
「情報を出し渋った君が悪いんじゃないか。外来品はただでさえ情報が少ないものが多いのに、その中でも特に情報が少ないんだから。いくら報酬を増してぶんどれると言っても随分と苦労したんだよ?」
「出し渋ったのではなく調査が足りなかっただけだ…はぁ、全く忌々しい思い出だ」
男はそう一言こぼし、改めて向き直った。
「さて、話を戻そう。この外来品についてだ。結論から言えば、この球体は特殊な機能を有したメモリだ」
「続けて」
「これの有する“特殊な機能”とは、こういうものだ」
そう言って、男は『修理屋』に一枚の報告書を差し出した。『修理屋』は差し出されたそれを手に取り、読み進めていく。それを読み進めるほど、その表情は険しくなっていく。
そして、それを読み終えた彼女は、紙を裏返しそっと机の上に置いた。その手には少しの震えが見える。
「これは…なんてものだ」
女の顔は、驚愕と疑心で埋め尽くされていた。
この紙に書かれた情報を全て真実と捉えるのならば、あまりにも驚異的な技術だ。
男の顔を見やるも、真剣そのもの。とても冗談という雰囲気ではなかった。
「この“入力”と“出力”の機能を修繕する。それが今回、あんたへ出す依頼だ。」
「『修理屋』。改めて、あんたにはこれの機能を修繕してもらいたい」
女は喉を鳴らした。あまりに危険、自身の直感が警鐘を鳴らしていることがわかる。
驚愕と疑心は変わらない。だが、一人の『技術者』として、今目の前に存在する、圧倒的な技術の塊を逃す手はないに等しかった。
少しの沈黙の後、『修理屋』は男に宣言した。
「……いいね、受けてあげよう。その依頼!」
「取引成立だ」
二人は固い握手を交わす。
夜の街にはありふれた、ただの契約。
それがこの街を超え、“世界”に波乱を巻き起こすであろうことを予感していたのは、その男ただ一人であった。
初投稿作品です。
前書きを長々と書きましたが、あまり気にしないでください。
頭の片隅にでも、記憶に残っていてくれれば幸いです。




