表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

序章 ぬくもりは感じない夜

ベッドのシーツに背中が沈み、重たい体温がのしかかる。

 汗ばんだ肌が触れ合うたび、息づかいが熱く耳元に降りてくる。

 嫌じゃない――けれど、好きでもない。


「……ちょっと、痛い」

 そうつぶやくと、相手は一瞬だけ動きを止める。

 でも、すぐにまた動き出す。

 呼吸が荒くなって、リズムも雑になっていく。

 最後は、いつも同じように終わる。

 予想通りで、驚きも特別さもない。


 バスルームに消えていく背中を横目で見ながら、私は深く息を吐いた。

 まだ身体に残る熱と重みを振り払うように、シーツを握りしめる。


「はい」

  差し出された紙幣を受け取る。

  封筒に入っているときもあれば、しわくちゃのまま手渡されるときもある。

  どっちでもいい。欲しいのは“お金”であって、“人”じゃない。

 ベッドの隅に座り込み、無意識に札を数えている自分に、ふと苦笑する。

  数が合えば安心する。それだけのこと。

  肌に残る熱は、もう意味を持たない。

 求めているのは、ぬくもりじゃない。

  最初から――ぬくもりなんて、感じるつもりはなかった。


 お金を手にした瞬間、胸の奥に少しだけ安堵が広がる。

「……これで、今月もなんとかなる」

 そう思うと同時に、虚しさも込み上げてくる。


 時々、思う。

 まるで物を買うみたいに、お金を置いていく人たち。

 会話もなく、名前も呼ばれず、ただ終われば背中を向けてしまう人。

 そういうときだけは、心のどこかが小さく痛む。

 ――私は、人じゃなくて、商品なんだろうか。


 それでも、やめられない。

 お金のため。生活のため。

 そして、ぽっかり空いた心の穴を、せめて一時でも埋めるために。


 数ある夜のひとつに過ぎない。

 でも、この夜も、確かに私の一部になっていく。


この作品は 名前のない関係ー50代サラリーマンの静かなパパ活日記 に登場するユリエが主人公の作品です。


名前のない関係ー50代サラリーマンの静かなパパ活日記の続きはkindleで読めます。unlimited対象なので会員の方は無料で読めます。


名前のない関係2: ―あの娘がパパ活をやめた理由・エリカ編 もお楽しみください・


https://www.amazon.co.jp/dp/B0FJDHQ1HM




名前のない関係ー50代サラリーマンの静かなパパ活日記


https://www.amazon.co.jp/dp/B0FJDCPYMX

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ