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残響の街 前編
病院の廊下は、絶え間ない叫び声と機械のアラーム音で満たされていた。
天井の照明はちらつき、時折大きな揺れが建物を震わせる。
白石梨奈は汗で濡れた額をぬぐいながら、運ばれてくる患者の名前を叫び、スタッフに指示を出す。
「次は……佐藤さん、こちらへ!止血を優先、すぐに包帯を持って!」
看護師たちは疲労の色を隠せず、それでも懸命に患者の処置にあたっている。
物資は日に日に底をつき、包帯も薬も不足し、痛みを和らげる薬さえも限られていた。
梨奈は小さな手を握る少女の瞳を見つめた。震えながらも必死に生きようとしているその姿に、彼女の胸は締めつけられた。
「大丈夫、怖くないよ。もう少しだけ、がんばろうね」
しかし、病院の外は荒れ狂う風と絶え間ない余震が続き、いつ崩壊してもおかしくない状況だった。
スタッフの一人が叫んだ。
「物資が足りない!薬も包帯ももうすぐ切れる!」
梨奈は深呼吸をし、歯を食いしばって前に進む。
「できることは限られている。でも、ここで諦めたらみんなが死んでしまう。私が守る」
そんな彼女の決意は揺るがなかった。




