約束の灯
教室に夏の柔らかな光が差し込む。西園寺美咲は、生徒一人ひとりの顔を見つめながら、今日も無事に終わるよう祈っていた。彼女にとって、この子たちの笑顔こそが何よりの支えだった。
だが、その穏やかな時間は突然、強い揺れと共に崩れ去った。
「みんな、落ち着いて! 机の下に隠れて!」美咲の声は震えながらも、子どもたちを守ろうと必死だった。揺れが収まると、津波警報が鳴り響いた。避難の準備を急がなければならない。
廊下を走り抜け、高台へ向かう道を急ぐ。途中、保護者たちが迎えに来て子どもを連れ帰ろうとする者もいた。美咲は「安全のために、今は全員一緒に避難しましょう」と説得を続ける。
「子どもたちを置いては行けない。私はここで最後まで守る」と、彼女の決意は揺るがなかった。
やがて子どもたちを全員高台に導き、疲れ果てた笑顔で息をつく美咲。だが、その瞬間、遠くで迫り来る津波の轟音が響き渡った。
「駄目……!」美咲は子どもたちを抱きしめ、その命を守るために全てを賭けた。
その後、奇跡的に高台付近で子どもたちは救助され、多くの人々の命が救われた。だが、美咲の姿だけは最後まで見つからなかった。