定めの運命
「なぁ、今日ヒマ?」
「ヒマだけど、なんだよ急に」
「飯行かね? 久しぶりに」
「お、いいな。行く行く!」
今日は飯を食いに行こうと決めて、財布にはいつもより多めに札を入れた。浮かれすぎたせいで、集合時間より20分も早く着いてしまう。
「ねぇ、たっくん、あの人なにしてんの?」
「あー、彼女待ちじゃね?」
「うそ、あの顔で? 絶対モテないでしょ」
……全部聞こえてるんだよ。ああいうタイプ、マジで嫌いだ。
「お待たせ!」
「全然待ってないよ」
「良かったー。ちょっと遅れちゃってさ」
時計を見る。俺の時間では集合ピッタリだが、彼女の時計は止まっているらしい。
そんな他愛ない話をしながら、腹いっぱい飯を食い、満足して店を出ようとした瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ──。
足元が急に持ち上がり、視界がぶれる。皿が落ちて割れる音、ガラスがひび割れる音が重なって響いた。
「地震です! 揺れが収まるまで机の下へ!」
店員の声に従い、机の下へ潜る。
だが──。
パリン! と頭上で電球が砕け、背中に落ちたガラスが焼けるように痛む。
「キャッ!」
その声に振り向くと、冷蔵庫が横倒しになり、女性店員が下敷きになっていた。
揺れる床を踏みしめながら近づき、必死で冷蔵庫を持ち上げ、壁に立て掛ける。
「大丈夫か!」
その瞬間、天井が崩れ落ちてきた。
背骨に激痛が走り、息が詰まる。
「大丈夫だ! お前だけは生き延びろ!」
友人の声が耳に残ったまま、俺の意識は暗闇に沈んだ。