世界の再定義(リワイヤード・ワールド)
「選択とは、終わりではない。それは“創造”の始まりだ。」
神の中の神、アストリスが問いかけた。
「世界の定義を、どうする?」
カズキの前に浮かんだ三つの選択肢。
勇者の存在を消去し、世界に“自由”を与える
世界を終わらせる
自ら神となり、監視者となる
そして彼は、静かに口を開いた。
「俺は、“勇者”という存在そのものを——消す。」
選択完了。空間が震える。
アストリスの表情が、初めて“乱れた”。
「それは……秩序の否定だぞ。
制御なき世界は、不安定で、再び滅びを招く!」
「わかってる。でも……自由に間違えることができる世界の方が、
最初から決められてる“正しさ”より、ずっと人間らしい。」
—
カズキの手が光に包まれる。
《最終スキル完全発動》
【Sanctum Rewrite – Origin / オリジン改変】
効果:世界構造定義コードを書き換え、“勇者機能”を削除
結果:神々による修正機能が永続的に停止
カズキの中で何かが弾けた。
生まれてから今まで、彼の“役割”として埋め込まれていた
すべての“勇者データ”が剥がれ、消えていく。
その痛みは、魂を裂かれるようなものだった。
「……ありがとう、勇者。」
アーセルが微笑み、静かに剣を地に置いた。
「これでようやく、戦いのない“存在”に戻れる。」
—
神域が崩壊を始める。
アストリスは最後の声を残し、光の中へと消えていった。
「では、人の子よ。
君が願った“混沌と自由”の未来が、どれだけの命を試すのか——
いつか、君自身が見ることになるだろう。」
空が割れ、第五階層が消え去ると同時に、
カズキとエリスは“地上”に戻されていた。
そこは、彼が初めて召喚されたあの草原。
空は澄み渡り、風が吹き抜ける。
—
エリスが静かにたずねた。
「……これで、本当に世界は変わるのですか?」
カズキは笑った。
「変わるさ。いい方向に行くかは……これから、俺たちが決めるんだ。」
彼女がそっと寄り添い、言葉を紡いだ。
「ではこれからは、“あなた”の物語ですね。」
—
空に、新しい星が輝いた。
それは誰のものでもない、選ばれない者たちのための星。
そして、その光は、世界のどこかでまた誰かの心に、
「何かを選び直す勇気」を与えるだろう。