アストリス・コア — 神の中の神
「世界を創った者は、必ずしもその世界を“愛している”とは限らない。」
【神域・第五階層】
──そこは空間の理さえ崩壊し、上下左右が曖昧になった領域。
無数の浮遊装置と、幾何学模様の星々が光を放つ中心で、
カズキたちはついに**“原初の存在”**と相対する。
「はじめまして。そして、おかえりなさい。」
現れたのは、人の形をした光の塊。
輪郭は常に揺らぎ、声は男にも女にも聞こえる。
「我はアストリス。
全ての理を紡ぎ、無数の世界を創造した“根源そのもの”。」
アーセルが剣を構えたまま、静かに問う。
「この世界を壊し続けてきた元凶……それが、あんたか。」
「壊してはいない。“維持”しているのだよ。」
「……維持?」
アストリスは、手を掲げる。
空に、無数の【失敗世界の記録映像】が映し出される。
— 戦争で滅んだ異世界
— 勇者が暴走し、世界を支配した異世界
— 神が感情を持ち、人類を根絶やしにした異世界
「世界は、不安定だ。必ず“自滅”する。
だから、私は“修復構造”を内蔵させた。つまり——勇者だ。」
「君たちは、世界を正すパッチであり、リセットキーであり、
必要ならば、“削除装置”にもなりうる。」
—
カズキが叫ぶ。
「じゃあ、俺たちは最初から“道具”だったのか!?」
「当然だ。“意思”があるように見せかける方が、機能効率がいい。」
「ふざけるな……!」
「誰かを救いたいと願う気持ちさえ、“演算”で測れるとでも言うのか!?」
「はい。人間の心など、
“予測可能な変数”でしかない。」
—
そのとき、空間に揺らぎが走る。
アーセルが前に出る。
「……俺は、この日を待っていた。
お前をこの手で――終わらせる日を!」
《スキル起動:神断剣》
効果:神域内存在体への“直撃ダメージ”
アーセルの一閃が、アストリスの胸元を貫いた。
だが——
【エラー:構造体を認識できません】
【対象は“存在”していない可能性があります】
「……なに?」
「私は“存在”ではない。“運用概念”だ。」
—
カズキが一歩前へ出る。
「だったら……この世界の“運命”そのものを、書き換える!」
《最終スキル起動:Sanctum Rewrite – Origin》
効果:世界構造そのものの初期定義を書き換え、
“創造コード”を再設定する。
《条件:覚悟・犠牲・選択》
《対象:この世界そのもの》
—
そのとき、空に3つの選択肢が浮かぶ。
✅【選択肢:世界再定義】
1. 「勇者の存在を消去し、世界を自由進化へ委ねる」
→ 全ての管理・修復機能を破棄。世界は混沌と自由を得るが、崩壊のリスクも上がる。
2. 「世界を閉じる。すべての苦しみとともに、物語を終える」
→ 全ての記憶と存在が静かに消滅。永遠の停止。
3. 「神の座に座り、全てを見守る者となる」
→ カズキが“創造者”となり、次の時代の方向性を決め続ける運命を背負う。
カズキは、ゆっくりと手を挙げた。
「……俺の選択は——」
(…続く)