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転生するなら美少女に!!  作者: 紙製平茸
珍奇なパーティの結成と、魔王軍幹部との争いについて
4/21

3話目 初陣、ワイバーンの卵集め

俺はギルドの掲示板の前に突っ立ってた。掲示板も何個かあって、依頼が張られてるやつ、パーティメンバーを募集しているやつ、ギルド運営からのお知らせ、広告とかちゃんと分けられているっぽい。

なんかあれだな、ソシャゲのお知らせ見てる時の気分になってきた。


とにもかくにも、俺は立派な一文無し。武器もなければスキルもない!だって駆け出し冒険者だし。てなことで宿代、飯代、武器代、諸々集めるためにもまずは採取とか納品とかの依頼からだな。

さっきのスタッフさんにここらの宿屋の代金の相場とか教えてもらったし、いくら集めればいいのかはなんとなく分かった。

町でバイトもあるっちゃあある感じだけど、今からじゃ今日寝るとこの金すら払えないし、とにかくそこそこの金額がないとな。魔王討伐とかぬかしてる暇じゃない、単純に餓死する。


(平原で薬草探し、オオハナチョウの採取、森での落とし物集め……。冒険者というより何でも屋だな。多分この世界での冒険者ってのはそういうものなんだろう。でも流石に宿代すら払えない報酬金じゃ……。おっ、これならいいかも!ワイバーンの卵採取。10万Gもするじゃん!でも確か町で盗み聞きした話じゃワイバーンは駆け出し冒険者には倒すのが難しい奴なんだろうな。ドラゴンのちっちゃいばんだし、しかもそれが群れで来てるとか。でも他じゃ宿代すら払えないし、討伐依頼は武器がないからなぁ。まぁこの依頼でも十中八九ワイバーンに襲われるだろうけど、多分他の人もいるだろうし。一か八かでこの依頼に賭けるしかない。)


この世界での通貨単位はG(ゴールド)でよくあるRPGゲームと同じだ。ド〇クエとかファ〇ナルファンタジーとか。金額での価値も日本と同じくらいなお陰で割とすぐ覚えられた。てか随分転生者に都合のいい世界だな、ここ。

俺は掲示板の端にある参加希望書に依頼名と名前を書いた。そういや文字も勉強した覚えもないのにスラスラ書けるな。あの神様もしかして相当優秀だったのかな……?受付へと紙を持っていき提出する。


「これ、お願いします。」

「ワイバーンの卵採取……ですね。承知しました。では確認で冒険者カードの提示をお願いします。」

「ああ、はい。」

「ありがとうございます。はいはい……。あの、レベルが1ですが、本当に大丈夫でしょうか?ワイバーンは中級者くらいになって太刀打ちできる強さのモンスターですし、最初はもうちょっと簡単な依頼でレベルを上げては……?」

「いえ!今日のご飯代すらないんで!お願いします!」

「あっ……。しかもよく見たら知識量低いし……。もしかして今まで監禁されていて……?」

「違います、違いますよ!それはーそのー……あれです、家からあまり出てなかったんで!!」

「ああーーー……。」

「あっ、ははは……。」

(マズイしくじったぞ!知識量って単純にこの世界の知識量だもんな!低かったら特別な事情があると思われるわ畜生め!言訳にしたのもニートだったってのだしな!てかさっきのカード作る時のスタッフさんめっちゃいい人だったんだな!知識量に深く突っ込んでこなかったし!)



―――数十分後―――


送迎用に来た馬車に揺らされながら、目的地の『ココレアの森』へ俺は移動していた。

馬車は計五台で冒険者は俺含め計20名。当然だけどみんな中級者レベルはありそう。服装も強そうだし。

それに比べて俺はなんだこれ。カッコいいけど神様チョイスの服だから浮いてるんだよなぁ。でもまぁこの顔面に似合ったキャラは崩せないし。なるべくカッコいい感じで、馬車から外を眺めてよう。


ヒソヒソ

「あの人、武器持ってなくない?それに服装も、どのジョブにも当てはまらなさそうだけど……。」

「ばっかお前あれは多分スゲー強いウィザードだって!魔術系のスキルなら物がなくてもいいし。」

「でも杖持ってないよ?杖がないと魔力が安定しないって学校で聞いたけど。」

「オメェそれはあれだ、プロには杖がいらないってことだ。かの賢者、セウユ・トミソ―も杖を使ってないって聞いたぜ。それにあのひらひらした服。多分ローブてきな奴だ。こんなにウィザードらしい要素があってウィザードじゃないわけないだろ?」

「成程、そういうことね。完全に理解した。」


あかん、ガーディアンっぽい人とアーチャーっぽい人に小声で話されてる!

ごめんなさい、そのひらひらただパーカー羽織ってるだけです。魔術どころかなんのスキルも使えないビジターです……。



「何言ってんだお前ら。武器無くて見慣れない服装は大体ビジターだろ。駆け出しかなんかなんじゃね?」



ぶっちゃけられたァーーー!!やばい冷汗が止まんない!!なんだこのシーフ!!心読めるのか!?そういうスキルなのか!?嫌だよ俺、この中級者だらけの馬車内でレベル1のしかもビジターってばらされるの!最初から名乗ってるなら別によかったけど、カッコつけて外眺めてたからなー!あれでまだ依頼一個も完遂してない奴だって思われるの恥ずかしすぎる!


「何言ってだお前。あれ見ろよ。体から滝出てるぜ。これは明らか魔術だろ。」

「そうだよ、何言ってんだボリス。」

「んだよ信じねぇのかよお前ら!じゃあ分かった、俺が聞いて来るよ俺が!」

「えっお前あの美人に話しかけれんのか?童貞だろお前。」

「黙れよ!殺すぞまじで!女の子と話すくらい俺でもできるわ!」


うーんやばいわね。話しかけられたらハッタリかませないし。どうしよ、どう言い訳しよう……。


「ん"ん"っ、あーそこのお嬢さん?失礼かもしれませんが、ジョブは何でしょうか。申し遅れました、俺はシーフのボリスです。」

「あいつ敬語やんおもしろ。」

「黙れやだがら!」


どうしよう、今のところ痴漢冤罪でコイツを社会的に殺す以外の道を思いつけない。でもそんなことなるべくしたくない!俺も元男として痴漢冤罪がどれだけキツイ事か分かってる。一回やられてまじ心臓止まるかと思ったもん。どうにかどうにかどうにか……。ダメもとでこれで行くしかないか。

そうして俺は話しかけてきたボリスと呼ばれていた男に手招きをした。


チョイチョイ

「……?」


大人しく顔を近づけてくれたぜ!これなら耳打ちできる!こいつも丸め込んじまえばあの馬鹿そうな二人組は騙し通せる!

正直バレるのはクッソ恥ずいけどこの人さっきの会話的に良識ある善人と見た!お願いしたら多分協力してくれるやろ!


(すみません、おr……私実はレベル1のビジターなんですよ。その、他の人にバレると色々めんどくさいことになるので、この馬車にいるお二人にはウィザードということで通していただけませんか?あんだけカッコつけててレベル1とか恥ずかしいので……。)

(……。)


あれ?返事がないぞ?大丈夫か?

体をもとの位置にしてさっきまで耳打ちしていた相手を見れば、顔が真っ赤になってフリーズしていた。そうかこいつ童貞か、そりゃいきなり女の子に耳打ちされたらこうなるよな。俺もこうなる自信しかない。


「おっおいボリス?大丈夫か?どうした?」

「こっちにこい、とりあえず脈があるか確認するか。」

「なんでここで唐突に死ぬかの確認すんの?まぁ別にいいけどさ……。」


「「……ッ!?!?」」


「「し、死んでる!!」」

「いや死んでねーよ。」

あっ普通に起き上がった。



―――さらに数分後―――


目的地のココレアの森に到着した。周りを見れば皆パーティで行動してる。二人くらいはソロっぽいけど。

一人最低でも一個は回収してきてほしいとの依頼だし、正直別のソロの人に一緒にいきませんかって声かけたいけど俺チキンだからこの場で話せない。やっぱ俺コミュ障かもしれん。

正直怖いけど餓死するのはもっと嫌だし……。頑張るか。


森の中に入ってしばらく、帰りは馬車の位置を示してくれるコンパスのお陰で迷わなそうだし、どんどん進んでいこう!ジャンプに回転、そして無意味なローリング!なんか森で探索って楽しいよね。謎に、こうテンションが上がるというか。


「あ”!!いい感じの棒だ!!」


ワイバーンの卵は見た感じダチョウの卵みたいなの。でっかくて、斑点がついてる卵。到着した時に依頼人のおじさんに話を聞いたけど、ワイバーンの卵は基本食べるために取るらしい。たまに珍しい卵があったら研究者の方に高値で売れるだとかなんだとか。


「ピュ~~♪」

パチン、パチン


生前鍛えた口笛と指パッチンをしながら、棒切れを無意味にブンブン振り回していると、頭の上になにか落ちてきた。


「いてっ!」


頭に落ちたものが何か見るために足元を確認すれば、林檎が落ちていた。


「なんだ、林檎か。……そういや俺昼飯食ってねぇな。野生の林檎だけど、異世界新ボディの免疫なら耐えられしょ!!」


林檎を拾い上げようとしたその時、ガブリ、と手に何かが噛みついた。

驚いて原因を見ればなんと拾い上げようとした林檎が噛みついてきてるではありませんか!なんか小っちゃい腕も生えてるし!


「テメーモンスターかよクソが!!俺の腹林檎の気分になったじゃねぇか!!」


手に持ってたいい感じの棒で偽林檎をぶっ叩いて地面に落とした。偽林檎の野郎はピギャアとか高めの声で鳴いた。なんでデフォルトで鳴き声が黒板引っ搔いた時の音なんだよ耳障りすぎるわ!


「ピギャアアア!」

「馬鹿め、俺は黒板を引っ掻いて嫌がらせをする側だ!これくらいの音耐えれるね!貴様程度、レベル1の俺でも倒せるわい!そこで待ってな、今踏みつぶして林檎シェイクにしてやんよ!」


ぐふふふ、とさながら悪役のように偽林檎に近づく俺。遂にモンスターを一体ぶっ飛ばして経験値ゲットできるぞ!貴様を倒せれば俺の魔王ブチ殺まで一歩近づくのだ!


「テメェここで終わりだァー!!」


ゴゴゴゴゴゴゴ。一気に俺の頭に何かが落ちる。


「ぁあなんだよ今コイツ倒すんだよ!邪魔すんn……ん”ん”ん”ん”!!」


足元を確認した俺は絶句した。なぜなら、今正に潰そうとしていた偽林檎がざっと百体はいるからだ。全員鋭い歯をちらつかせてこちらを睨んでいる。


「……はははは、いやまさか私が林檎を踏みつぶすわけないじゃないですか。冗談ですよ冗談!では今日はそういうことでお暇させてもらいますね。」

「ピギュアァ!ピシャー!!」

バタバタ!!

「バー!やっぱり追われるか!」


俺は全速力で、真っ赤な偽林檎の海に飲まれまいと地面を蹴った。

魔物解説

ワイバーン

この世界だとドラゴンの小っちゃいバージョンみたいな立場。一対一で倒せると駆け出し冒険者卒業、という感じのまぁまぁ強めのモンスター。間違っても初心者が何体もワイバーンがいるとこに行くべきではない。

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