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竜戦士とドジっ娘剣聖の冒険録  作者: JACK・OH・WANTAN
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第4話:ドジっ娘剣士 アイン

 翌朝、剣士の少女アインの家の一室で目を覚ました俺はベッドから身体を起こして立ち上がる。


「・・・朝か」


そう呟きながらふと、借りている部屋を見渡す。


思ったがコイツの家・・・結構広いな。こんな家に一人で暮らしているのか?


「ジークさん!」


するとエプロン姿をしたアインがドアを開けて部屋に入ってくる。


「あっ!もう起きてたんですね?」

「ガキじゃねぇんだ。一人で起きれる。」

「そうじゃなくて・・・朝ごはん食べるかなって」

「なんだそういうことか」


アインが部屋に入ってきた理由を理解して俺は頷く。


「じゃあ、早く降りてきてくださいね。」

「あぁ」


彼女はそう言うと一足先に部屋を出た・・・次の瞬間。


「ふぁああああああああっ!?」


そんな悲鳴と共にドンガラガッシャーンという大きな音が聞こえてくる。


唖然としながらも恐る恐る部屋のドアから顔を覗かせるとそこには大胆に脚を広げ、壁に頭をぶつけたアインの姿があった。


「うえええええん!転んじゃいましたぁ~」

「いや!そんな転び方にはならねぇだろ!!どう転んだらそうなるんだ!?」

「ふ、普通に足を滑らせて転んだんです~」

「だからそうはならねぇだろ!!」


あり得ない転び方をするアインに思わずツッコミを入れる。


「ごめんなさい!そ、それより早く助けてくださ~い!し、下着が・・・」

「あぁもう分かった!それ以上言うな!!」


これ以上は際どい会話になるとまずいと判断し、俺は少し焦った様子でアインを助けた。


「はうう・・・あ、ありがとうございます。」

「お前なぁ・・・こんなところで転ぶ馬鹿がどこに居るんだ。」

「ご、ごめんなさい・・・」


アインは少し恥ずかしそうな表情で謝罪する。


全く・・・コイツはダンジョンだけじゃなくて普通に生活しても転ぶのか?


「兎に角、怪我は無くてよかった。」

「えっ?」

「・・・勘違いするな。強くなりてぇと言ってる本人が怪我したら元も子も無いからな。足を引っ張るな。それより飯だ。」


俺はいつもの調子を取り戻して厨房へ向かうと彼女は「はい!」と嬉しそうに答え、後に続く。


厨房に入るとそこにはやや広めの台所に食事をする横長の机と椅子が並んでおりまるで小さな食堂の様だった。


「あっ!朝ごはん用意しますね!」

「もういい、お前は座ってろ」

「えっ、で、でも・・・」

「また転ぶと厄介だ。大人しくしてろ」

「は・・・はい」


俺はアインを座らせると彼女が作った朝ごはんをよそって机に並べる。


「ほう?白米と味噌汁まで作れるのか?」

「はい!最近、和食にはまってて」

「そうか・・・」


微笑みを浮かべるアインに俺は少し親近感が湧く。


俺の好きな食べ物は和食・・・白米と味噌汁、そして魚だ。更に彼女が今日作った献立は何の偶然か俺好みのものだった。


ほかほかに炊けた白米、鰹の出汁が効いていそうな豆腐とワカメの味噌汁。絶妙な火加減で調理された鮭に黄色と白のたくあん・・・まさに理想の朝ごはんだ。


「ジークさん。ちょっと嬉しそうな顔をしてますね?」

「気のせいだ。早く食うぞ。」


アインにそう返すと俺は早速、白米を口へ運んだ途端、目を見開く。


・・・美味い。水加減もちょうどいいのか米一粒の食感がもちっとしている。


更に味噌汁を口へ注ぐとこれもまた味噌と鰹の出汁が絶妙に合っており、思わずホッとなる感覚になりそうだった。


その状態で次に焼鮭を口に入れると脂の乗った肉厚に思わず笑みが浮かびそうになる。その後に放り込む漬物は大根のさっぱりとした味が広がり、また白米を入れたくなる。


そんな美味さに思わず笑みが零れそうになった俺は向かい側で黙々と食事するアインを見て思った。


コイツ、もしかして冒険者よりも料理人の方が向いているんじゃねぇのか?・・・と。


「ん?どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。」


こちらを見てキョトンとするアインに俺はそう返して食事を摂る。


「ふぅ・・・久々にいい朝食だったな。」


完食した俺は平らげた皿を見て少し満足する。


ノルドタウンに着くまでロクな食事を摂らなかったせいか今までよりも美味しく感じた。


「口に合って良かったです。」

「聞こえてたのか・・・」


厨房で食器を洗うアインに先程の声を聞かれ少し恥ずかしくなる。


にしてもコイツ・・・少しだけ一緒にいて分かったが良い奴ではありそうだな。絵に描いた様なドジではあるがそれに目を瞑ればいい冒険者になるかもしれない。


「あっ!ちょ!ふええええええっ!」


刹那、厨房からドンガラガッシャーンと派手な音が響き渡ると派手に転んだ彼女の姿が映る。


・・・いや、そうでもなさそうだ。


「おい、何してんだ?」

「ご、ごめんなさ〜い!」


アインは水浸しになりながら起き上がると涙目でこちらを見てくる。


「全く・・・怪我はないか?」

「えっ?あ、はい。」

「・・・勘違いするな。さっきも言ったがパーティを組んでいる以上、こんなことで怪我をされたら元も子もないからな。別にお前を心配している訳じゃない。」


あくまでも"パーティを組んでいる"関係であると伝え、俺は微かに擦り切れた彼女の膝を手当する。


「あ、ありがとうございます。」

「フン、飯も食ったんだ。早くギルドに行くぞ。」

「あっ!待ってくだーい!」

「待ってやるから慌てんな!!」


こうして朝食を摂った俺はアインを連れてギルドへ向かう準備をするのだった。


◇◇◇


準備を整え、ギルドに辿り着いた俺とアインは中に入ると早速、受付の方へ足を運ぶ。


「次の方〜って・・・あ、貴方は。」

「はぁ、またお前か。」


運が悪いとか今回の受付は昨日、俺を散々バカにしながら余計なことをしたあの受付女だった。


「ジークさん。お知り合いなんですか?」

「いや、昨日コイツに余計なことをされただけだ。」

「まだ根に持ってるんですか?」


そう言ってきた受付女を無言で睨む。


「す、すみません・・・。」

「まあまあ、いいじゃないですか。それより早く依頼に行きましょう!」

「というか貴女見ない顔ね。」

「あ、はい!私、アインっいいます!ジークさんと同じパーティを組むことになったんです!」

「ジークって貴方のこと?昨日の職業とカテゴリーにビックリして気づかなかった。」

「おい、余計な事をベラベラ喋るんじゃねぇ!」

「ふぇ・・・ご、ごめんなさい。」

「全く・・・」


要らん事を受付女に話したアインに溜息を吐く。


・・・まぁいい。どの道ノルドタウンに滞在するのは短い。


「でしたらお二人のカテゴリカードを提示して下さい。」

「あ、はーい!」


俺とアインは受付女に各々のカテゴリカードを提示する。


「えーっとジークさんはカテゴリーVの竜戦士。そして・・・アインさんは・・・カテゴリーⅠ?えっ!?ちょ、は?」


アインのカテゴリーカードを見た受付女は驚いた様子で俺達を見る。


「ねえ、もう一度確認しますけど貴女、本当にカテゴリーⅠ?」

「は、はい・・・そうですけど。」

「えぇ・・・ジークさんとパーティ組んでるですよね??」

「はい」

「だったら何だ?」


色々確認してくる受付女に俺は眉を寄せる。


「いや・・・昨日、シクスさんのパーティ勧誘を断ったのに・・・どうして?」

「・・・なんだって良いだろうが?」

「ほう?ソイツは聞き捨てならないな。」


そんな声が聞こえてくると俺達の前に昨日のあのキザ野郎・・・シクスが現れる。


チッ、噂をすれば出てきやがった。


「お前、俺と組まずにこんな弱っちぃ奴と組むのか?損してるぞ?なあ、悪いことは言わない。こんな"雑魚"なんかよりも俺と組めよ?竜騎士。」


シクスがそう手を伸ばして握手を求めてくるが彼の言葉に俺は怒り心頭になった。


「何度も言わせんな。断ると言ってるだろ?」

「ジ、ジークさん・・・」

「頑固だねぇ、お前が俺のチームに入ればきっと安泰だぜ?そんな雑魚とっとと・・・」


シクスが再度、アインの事を雑魚と言った瞬間・・・俺は目元を前髪の影で隠し、考えるよりも手が動くと奴を右ストレートで思い切りぶん殴った。


俺に殴り飛ばされたシクスは抵抗する間もなく吹き飛ばされるとそのままギルドの硬い床に叩きつけられて倒れてしまう。


「ジ、ジークさん!?何やってるんですか!?」

「ちょ・・・えぇ」


その行動にアインや受付女だけでなく周りにいた冒険者達も驚きの声が上がる。


「お、おいアイツ・・・今」

「シクスさんを殴り飛ばしたのか!?」

「嘘だろ!?度胸ありすぎるだろ!?」

「なあ、アイツまさか昨日シクスさんの勧誘断った奴だよな?」


そんな声が聞こえて来る中、シクスは殴られた頬を抑えながら立ち上がる。


「いってぇ・・・お前、何しやが・・・る。」


シクスがこちらを睨んできた途端、俺はギロッと睨み返すと奴はその形相に戸惑って冷や汗を流す。


そして、これまで溜め込んでいた怒りを吐き捨てるかのように怒鳴り散らす。


「ふざけんじゃねぇ!!!実力でしか判断しねぇクソ野郎に入るバカがどこに居んだよ!!!」


俺のその言葉はギルドを一瞬で静寂させるのに十分だった。


「確かにコイツはお前の言う通り冒険者の能力は皆無だ。だがな!テメェみたいにそれを理由に人を選んで俺を勧誘したバカじゃねぇ!!」

「ジークさん・・・」


アインは少し頬を赤くしながらこちらを見る。


「俺の事を悪く言おうがどうしようがテメェの勝手だ!だが、コイツの事を悪く言うなら容赦しねぇぞ?」


俺の怒りの言葉にシクスは後ずさりする。


「わ、分かった分かった!お前の言いたいことは分かった・・・わ、悪かったよ。」

「だったらとっとと失せろ!!」


そう言って俺は竜影を出して威嚇する。


「ひぃ!?分かった!失せる失せるって!!」


シクスはそんな情けない言葉を吐き捨てると躓きながらギルドを出て行った。


「ジークさん・・・」

「勘違いするな。お前もああなりたくなかったら足を引っ張るんじゃねぇ。その代わり・・・」


アインに目を向け、彼女に体を向けて言った。


「俺がお前を強くしてやる。だから簡単にくたばるなよ。」

「・・・ッ!?は、はい!」

「おい」

「は、はい!」


俺は次に受付女に顔を向ける。


「早く依頼を出せ。」

「わ、分かりました。これで・・・」


受付女は少し戸惑いながら依頼を出すとそれを受け取って内容を確認する。


”ノルドの森 第2階層に棲む カテゴリーⅢ(スリー)級のモンスター・・・サイクロプスの討伐。報酬¥50000イェン。推定経験値1500”


「フン、悪くない。おい、行くぞ。」

「あ、は・・・はい!」


依頼内容を見て満足した俺はアインを連れて早速、今回の依頼ダンジョン・・・ノルドの森へ向かうのだった。




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