捕まって縛られました 3
かごに入ったまま、村の端に連れて行かれた。
ワタシが子供たちと会うことについて、ほとんどの人は納得していない。だが、密かにもしかしたらと期待もしている。
そんなまなざし。
ほとんど期待には添えないと思うけれど。
ひもを解かれて、かご越しに槍でつつかれる。
それはちょっと痛い。
「変な動きをちょっとでもしたら刺す」
役目はごつい顔のおじさんになっていた。
まあダルボアさんだったら即死だな。
「はい」
かごがゆっくりと退けられて、背中に槍が当たる。
「ネネ。ここで待っていて」
ネネが近くにいるのはわかっていた。
一緒に来る気配も感じた。
だが、ネネまで病に倒れてほしくない。
「入れ」
槍の先に押されて小屋の中に入ると、そこには子供たちが布団を並べて寝ていた。
いち、に、さん、し、ご・・・数えると10人近い子供がいた。
皆一様に青白い顔をしている。
隅っこにトイレのようなものと、吐いたような痕があった。
「吐くものはどろどろと白い・・・便も・・・」
背後にたったおじさんが補足説明をしてくれた。
「治る者もいるのだ、だいたい5日で回復する。だが」
そうでない者もいる。
なるほど。
ワタシは子供たちの一人に近寄って、そっと触れた。
冷たい。
手を持ち上げると、しわしわになっている。
昔、中世ではアレが流行ったとは聞いたけど。
コレがそうなのか。
ワタシは医者ではない。
だから、曖昧な知識しかないのだ。
決断は早くしなければ・・・。
ゴクリとつばを飲みこんだ。
「きれいな・・・水を子供たちにたっぷり飲ませて・・・早く」
「何を」
「これは脱水症状だと思う・・・」
言われておとなの一人が土間にあった瓶から水をくみ上げてたらいに移した。
まさかあれを飲ませるわけでは・・・。
しかし、ワタシの想像に違わずその水を子供たちのそばに運ぼうとしていた。
ああ、だめだ。飲ませようとしている。
「その水はだめだ。沸かした水を・・・早く」
瓶の水が沸かしたものなのかもしれなかった。
だが、わからなかった。
基本的に生水は危険だ。
この感覚は、極端に衛生的な日本で育ったせいかもしれない。
ごついおじさんが振り返って叫んだ。
「みんなっ。湯を沸かすんだっ」
村中に野太い声が響き渡った。