表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫姫  作者: 四季道理
9/47

捕まって縛られました 3



 かごに入ったまま、村の端に連れて行かれた。


 ワタシが子供たちと会うことについて、ほとんどの人は納得していない。だが、密かにもしかしたらと期待もしている。


 そんなまなざし。


 ほとんど期待には添えないと思うけれど。


 ひもを解かれて、かご越しに槍でつつかれる。

 それはちょっと痛い。


「変な動きをちょっとでもしたら刺す」


 役目はごつい顔のおじさんになっていた。

 まあダルボアさんだったら即死だな。


「はい」


 かごがゆっくりと退けられて、背中に槍が当たる。


「ネネ。ここで待っていて」


 ネネが近くにいるのはわかっていた。

 一緒に来る気配も感じた。

 だが、ネネまで病に倒れてほしくない。 


「入れ」


 槍の先に押されて小屋の中に入ると、そこには子供たちが布団を並べて寝ていた。

 いち、に、さん、し、ご・・・数えると10人近い子供がいた。

 皆一様に青白い顔をしている。


 隅っこにトイレのようなものと、吐いたような痕があった。

 

「吐くものはどろどろと白い・・・便も・・・」


 背後にたったおじさんが補足説明をしてくれた。


「治る者もいるのだ、だいたい5日で回復する。だが」


 そうでない者もいる。


 なるほど。


 ワタシは子供たちの一人に近寄って、そっと触れた。

 冷たい。

 手を持ち上げると、しわしわになっている。


 昔、中世ではアレが流行ったとは聞いたけど。

 コレがそうなのか。


 ワタシは医者ではない。

 だから、曖昧な知識しかないのだ。

 決断は早くしなければ・・・。


 ゴクリとつばを飲みこんだ。



「きれいな・・・水を子供たちにたっぷり飲ませて・・・早く」



「何を」


「これは脱水症状だと思う・・・」


 言われておとなの一人が土間にあった瓶から水をくみ上げてたらいに移した。

 まさかあれを飲ませるわけでは・・・。


 しかし、ワタシの想像に違わずその水を子供たちのそばに運ぼうとしていた。


 ああ、だめだ。飲ませようとしている。


「その水はだめだ。沸かした水を・・・早く」


 瓶の水が沸かしたものなのかもしれなかった。

 だが、わからなかった。

 基本的に生水は危険だ。

 この感覚は、極端に衛生的な日本で育ったせいかもしれない。

 

 ごついおじさんが振り返って叫んだ。


「みんなっ。湯を沸かすんだっ」


 村中に野太い声が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ