捕まって縛られました 1
「いやーん」
ロープといえば、この台詞だろうと思って言ってみたが、なんだかネネに冷たい視線を浴びせられたような気がした。
しかし、これ以外になんと言えば良かったのだろう。
ようやく人気のあるところについたと思ったら、「ぎゃぁあ」と人を化け物のように指さし叫んだ挙げ句、民家から人がクワや薪を手に集まって殴る蹴る・・・正直顔が変わるんじゃないかと思うくらい・・・まあ痛かった。
同じように見えるネネが自分をかばってくれて、それでようやく殴られるのは終了。
殴られるのはなれていたが、集団でとなると、それなりに痛いということを今日身を持って知った。
今までは一人で良かったのかも。
それにしても、と古都は周囲を見渡しながらしみじみ思った。
「ここは異世界だったのか」
いままで自分の中でここがどこかというのを認めるのを拒否していたような気がする。
まあ異世界であれば、猫耳になろうが、猫手になろうが、尻尾が生えようが不思議ではないのかもしれない。
「古都。大丈夫?」
古都はにへらと笑った。
幼子のネネに心配させてはいけない。
「大丈夫。そんなに痛くない」(嘘である)
「ヤツら、ひどい」
ネネが幼子にあるまじき陰りを帯びた表情でワタシを見ている。
別に無知であれとは思わないが、子供は笑っているべきだと思う。「大丈夫だよ。見た目ほどではないから」
だから大人はちょっと無理してしまう。
そして、無理したついでに空を見上げる。
あー、そろそろ夕暮れかぁ。
放置されて、数時間。
冷えてきたなぁ。
ちなみに今は鶏を入れるような大きなかごの中だ。
手足は縛られたまま。
下は地面。冷たい・・・。
ネネがかごにかじりついたまま離れないので、村人たちも無理に引き離すのはあきらめたようだ。
村人を2人監視に残って、皆、大きな建物の中に入っていった。
たぶん、ワタシをどうこうするとか話してるのだと思う。
ここの村はたぶんそんなに大きくない。
日本のごく小さな村レベル。
民家も50あるかないかだと思う。
家のつくりも、煉瓦っぽいのもちらほらあるけど、多くは木とで出来ていて、屋根には葉っぱを乗せている。
あれも茅葺きって言ってしまっていいんだろうか。
ちなみに着ている服は、意外と普通。
ああ近代ではないけれど、縄文でもないかな。
女の人はスカートをはいてるし、男の人はズボン。
足には木のくつ。
顔立ちは少し浅黒いけれど、西欧と言っていいのだろう。
髪の毛も黒よりも赤に近い色が多かった。
「それにしても、ここでも猫娘は普通ではないのだな」
まあ、日本だと普通に妖怪。
「お腹空いたなぁ」
手足を縛られているので、チョコレートを口にすることも出来ない。
「古都。ヤツらが出てきたよ」
きらりと鋭い目で建物を見るネネ。
確かにぞろぞろと出てきたよ。
こちらを見る目は、化け物をみるかのよう。
こんなに可愛い女子高生なのに。
ワタシをかばうようにかごの前に立つネネ。
「ああ、ネネ。危ないから退いときなさい」