サド王子の思案 1
「くそう」
がたがたとここに来てから何度目かの衝動に駆られて、柱に縛られたままの手首を引っ張る。
だが、毎度のこのとながらびくともしない。
王子はたかが縄とは思ってはいない。
たかが縄一つで、女を縛って、M字はさることながら、アンナ格好やコンナ格好をさせて悶えさせてきた王子だ。
そして、趣味と実益を兼ねて、縛りの達人と呼ばれた名人にかつて様々な縛り方を学び、その筋では縄縛り名人称号を獲得したのは、誰でもない自分である。
しかし、その縄が今はただ腹立たしいだけだった。
何が腹立たしいかと言って。
「なにが、条件は結婚することだ」
実際は、「わしの下に残ること」なのだが、王子の耳にはそう聞こえた。
「あれは、俺のものだぞ」
「はー、そうですか」
「何を気のない返事をするのだ。ルディ。さっさと動いて、俺様の縄を解かんか」
「いや、ほら」
そう言いながら、役立たずの下僕が自分の足に巻かれた鉄の輪をこちらに見せる。
「わたくしも動けないんですよ」
「動け。下僕なら足首切って、這ってでもこっちに来い」
「絶対嫌です。出血多量で死んでしまいます」
ぶるぶると首を横に振る。
「ならば、あのオカマにさっさとやられて、ついでにタラしてこい」
「わたくしの操はエリーカ様にぃ」
「前だけで十分だろう」
「ぎゃぁぁぁ、生々しい回答はやめてください。なんだかわたくしめに送ってくる視線に本気を感じますよ」
かなり本気なんだが、あんなにも即答しなくてもいいではないか。
ああ。
「大丈夫だ。生きて帰れたら、金でできた義足を送ってやる」
足の代わりを心配しているのかと思えば。
「い・や・で・す」
一言ずつ区切って言い返しがったぞ。
ち。役立たずめ。別の案を考えるか。