結婚を迫られました 3
ミックスとは、あれだろう?
雑種。
「まあ焦ることはないのである。時間はまだまだたっぷりあるのである」
焦ることはないと言われても・・・まあ焦っているわけではない。
わからないことが少し歯がゆいだけで。
「とりあえず、式をいつにするか決めなければならないのである」
歯がゆいのではなく・・・。
「順番がむちゃくちゃだと思うのだが」
古都のきわめて普通の感覚からすると。
出会って、キスして・・・結婚。まあ気が向けば出産するだろうか。
アベルはちらりと古都を見た。
「古都が常識を語るとは思わなかったのである」
「いや、語るだろう?」
いくら呑気すぎる古都でも、自分が巻き込まれるとなると別だった。
サド王子のときも、自分自身の体にちょっかいは出されてもそれ以上のことはないから放っておけた。
「で、ドレスはどんな色が好みである?」
「まあ白かいっそ黒・・・ではなくて、だ」
黒、と言われてアベルがにっこりと微笑んだ。「黒は、わしの色である」
「心配しなくても、式が終わるまで古都には手を出さないのである」
むしろ、したくてもできないだろう。
その幼い体では。
いや、そういう心配をしているのではない。
軽く頭を振って、ふと、あることに気がついて古都は苦笑した。
その笑顔に一瞬アベルは動きを止め、何かしら言いたげな視線を向けたが、すぐにいつもの幼い表情に戻った。
「どうしたのである?」
「この世界に来て、はじめてまともに会話している、と思って」
トンと扉が叩かれた。
「魔王様、ネネ殿の準備が整いましたが」
「入るのである」
準備とは、着替えるだけ。
すこしぼさぼさだったネネをきれいにする、と言って魔王が部下に命じていた。
「失礼します」
軽く頭をさげて、部下の人が入ってくる。
その人にも耳がある。長くて、まるでウサギのような耳だ。
すこし丸い顔と、白い毛に覆われた肌が気持ちよさそうな男である。
その男の斜め後ろに、ひょろりとネネが立っていた。
髪をさっぱりと切って・・・黒い服を着ていた。それは襟元まできっちりと詰められている。
醸し出されるのは、なんというか執事のような雰囲気。
「ネネ、格好いい」
「古都」
古都が目を細めてほめると、どこか不機嫌そうな顔をしていたネネがわずかに相好を崩し、すぐに室内に入ってきた。




