僕(しもべ)が出来ました 2
しばらく撫でていたが、歌よりも少し早く古都は正気に戻った。
グゥゥと猫よりも遙かに大きい虫が鳴いたからだ。
俗に腹の虫という。
体の小さい猫とは違い古都の飼っている虫は悪食である。
あといくつか残っているチョコレートはしのぎにはなるが、足りないのは目に見えていた。
「で、おぬしはどうする?」
もちろん問いかけているのは腕の中の猫である。
離れていくものを無理に引き留める気は古都にはなかった。
猫も自由な生き物である。
しかし、猫はよほど古都の腕の中が気に入ったらしく、「ナァァゴ」と鳴いただけで動かなかった。
「とりあえず一緒に行くか」
そして、一人と一匹は歩き出したのだった。
とりあえず、古都の気の向くままに。これといった定めもなく。
その結果
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「迷った」
明るい方へ進めば何とかなると思ったのだが、ことはそう簡単ではないらしい。
周囲は徐々に暗くなり、足下は悪くなってく。
唯一の救いが、意外と夜目が利くということ。
「これが俗に言う『猫娘』効果か」
ふむ、と納得したものの、あまり体力のない古都には疲れる道のりだった。
「こういうときは、キャンプファイヤーだな」
夜になれば、姿を潜めていた獣が出てくる。そうなると、我が身も、預かっている猫の身も危ない。
映画だと火を一晩中焚いて、獣よけをするのだったか。
しかし、火をおこす道具はないが・・・そこは、猫に頼むことにして。
「とりあえず薪を集めるか」
古都は適当なスペースを見つけると、今度は小枝を拾い始めたのだった。
「なぁーご」
腕の中でのんきに猫が鳴いている。
ある程度、小枝を集めたところで、猫に頼むと、あっさりと火を噴いてくれた。
瞬時に炎が点る。
「便利だな。芸のある猫って」
木から葉っぱをちぎってきて下に敷く。
古都もお年頃だ。
さすがに地面の上でぐーぐー寝れるはずはない。
適度に敷き詰めて、できるだけ炎のそばによる。
「暖かいな」
パチパチと炎のはぜる音が心地よい。
「猫、おいで」
横たわっていると眠気が襲ってきたのか、まぶたが重くなっていく。
「明日は民家がみつかると・・・いい・・・な。おぬしもきちんとした飼い主、みつけないと・・・なぁ」
腕の中に感じる猫のぬくもりも心地よく・・・。
やがて「クゥ」という寝息が古都から聞こえ始める。
なれない森での歩行に疲れ切っていた体は正直で、あっという間に眠りについてしまった古都であった。
「やっぱり猫しか出てこなかったけれど、歴とした異世界ファンタジーで」(パシッ)
耳元でムチがしなる音。
「ほお」
「ぼーりょくはんたーい」