ひとりぼっちのネネ
病を吸ったとき、ネネにはわかった。
金の目の古都にもわかっていたのかもしれない。
病を吸ったときに、ネネは、この病で自分が死ぬことはないとわかった。
ただ同時にすぐに病が自分の中から消えてしまうわけでは無いともわかった。
子供たちの全身を包んでいた煙のような黒い病の固まり。
進入した小屋の中で一人ずつ首筋からそれを吸い取った。
それを吸って体内に収めるときに、丸く丸くとイメージした。
今、それは黒い固まりとなり、体の奥に収めている。
同時に自らの炎でチリチリと焼いている。
それがすべて灰となれば、終わり。
数日でそれらは失せた。
「良かった」
古都がネネを抱き寄せる。
ネネもそっと抱き返す。
心地よいこの腕を取り戻せたことに満足する。
村人たちは病の癒えた二人を追うように追い出した。
唯一、沸かした水と乾いた飯を持たせてくれて。
それが魔物に対する精一杯の対応だったのだろう。
古都は魔物ではないのに。
魔物はネネである。
だが、何人かは古都に隠れてネネに声をかけた。
「あの魔物に付いていくのかい。ここに残ってもいいんだよ」と。
何も知らないくせに。
引き裂きたくなるほど腹だたしい人間。
だが、その人たちを古都は助けたいと願った。
子供たちが治ったと聞くとうれしそうに笑ったのだ。
ネネは人を引き裂くことはできなかった。
そして、すべてを断り古都とともに旅立った。
手を握り、今度こそ、離れないと誓い。
なのに・・・。
「古都」
森の中を駆ける。
人の姿を忘れ、四肢が地面を蹴る。
「古都っ」
叫んでも叫んでも返事はなかった。
どこへ行ったの・・・。
薪を取ってくるからと、ここで休んでてと・・・そういって、離れただけ。
古都がいる安心感と、かすかに残った病のかけらを完全に消すために束の間眠りについていた。
時にして半刻もない。
離れるんじゃなかった・・・。
「古都」
耳を澄ますが、古都の気配はもうない。
あるのは森に住む獣たちの息づかい。
今その獣たちも、ネネの力におびえて息を潜めている。
「古都ぉぉぉぉー!!!!!」
ネネの悲痛な叫びは、真紅の力をまとい静かな暗い森を引き裂く。
それは、やがて天にも届きそうな巨大な影となった。
その影は炎のようにゆらゆらとその場に揺れ。
やがて、煙の如く姿を消した。