太陽よりも月が好き
朝が来た
朝が来たから起きる
それはどうやら『普通』のこと
普通にしていないと
この世の中何かと面倒くさいことになるので
面倒くさいことになりかねないので
極力普通にしている
部屋を出て廊下を歩いてエレベータ―を待っている
僕のいるここはマンションの五階
エレベータ―の箱が上ってくる
扉が開く
中から若い男が出てくる
茶の髪よれよれのTシャツ
痩せているけれど僕よりも背が高い
そしておそらく僕よりも強い
強いというのは
その身体つきから想像出来る
僕は普通であろうとするから
普通であるならば
そこで挨拶しなければならない
でも僕は挨拶しない
面倒くさいから
男も挨拶しない
よって僕たちは無言ですれ違う
そして願わくば二度と会わないように
エレベータ―に乗る
僕は太陽が落ちて夜が来るまで
何かをしなければならない