幼馴染の間柄
1年目の高校生活が終わり、やがて2年目の学校生活が始まろうとしている。
「はぁ、今年も椿衣君と同じクラスになれるかな。」
と、学校に向かいながら、ボソッと椿はつぶやいた。
そして、クラスが学校の廊下に張り出されている場所についた。
「え、えっと、あ、私の名前だ。6組なのか。そ、それより椿衣君は」
「あらー、椿じゃん、今年同じクラスだねよろしくー。あ、あと椿衣も同じだよねー」
「あ、(え、椿衣とお、同じクラスーーー?)み、瑞穂ちゃん同じクラスなの?よかったー1年間よろしくね。」
と椿は口では言いつつも心の中で叫びまくっていた。そして瑞穂とは小学生からの親友でとても仲がいいのだ。
二人は一緒に教室へと向かった。やがて新しい担任の話と校長先生によるありがたくて長ーい始業式を終え、午前中授業であったので帰路についている。
「今日体調不良で椿衣君休みだったなー。大丈夫かな、お見舞いに行くべきかな、だ、だめ、いくら幼馴染とはいえ彼女じゃあるまいし行ったら迷惑だよな。はぁ」
そう椿と椿衣は幼稚園からの幼馴染で、実に9年以上の片思いなのである。
そして今椿衣の家の目の前にいるが勇気を出せずにいる。椿にとってインターホンと指との距離は言うまでもなく凄まじいものであった。どれだけの時間が経ったかはわからないが、後ろから聞き慣れた声が
「つ、椿ちゃん?」
「へ?あ、椿衣君のお母さん!」
「あら椿衣のお見舞いに来て来れたの?ありがとうね、少し上がっていったら?」
「あ、いや、邪魔になると思うので、こ、これを」
「何言ってるのよ、もう長い付き合いじゃない、家族みたいもんじゃん」
「で、ではお言葉に甘えて」
「うんうん」
椿衣君のお母さんが鍵を開けて、
「かーーい、椿ちゃんが来て来れたんだから、少しぐらい顔出しなさいよ、もう熱下がったんでしょ?」
と声が家中に響き渡った。
「はいはいうるせー叫ぶな」
「いやわざわざ起こすのも悪いのでいいですよ。呼ばなくて」
「いいのよ、昨日のうちに体調治ってるはずなのにめんどくさがって行ってないだけなの」
「あ、そうなんですね」
「なんで来たんだよ、わざわざ来なくたっていいだろ。」
と首を鳴らしながら階段を降りてくる椿衣君がいた
「わざわざきてもらっていきなりそんな言葉のないでしょうが!」
「い、いえ。勝手に来た私が悪いですのでここで失礼しますね。お邪魔しました。」
「あ、あそう、ごめんね、学校生活よろしくね。」
「はい、こちらこそ」
と慌ただしく飛び出して、帰路についた。
「はぁ、嫌われちゃったのかな。」
それからは昨年と同じような日々が続き、距離が近くなることもなかった。
やがて、夏の大型行事とも言える体育祭が近づきつつあった。
「体育祭そろそろだね、つばきー。」
「そうだねー、何に出ようかなー。」
と言いながら、チラッと椿は椿衣の方を見る。すると向こうはこちらを見ており、思わずドキッとしてしまった。
(い、今こっち見えたよね。え、いやまさかそんな事はないよね)
と椿は心の中で答えの出ない推測をしていた。
そして、気がつけば出場種目が決まった。私と瑞穂は騎馬戦で、椿衣君はクラス対抗リレーとなった。
しだいに授業中に出場種目の練習も増えていった。椿は騎馬戦の練習中に足を捻挫してしまった。
「つばき、足大丈夫?」
「これぐらい大丈夫だよ。なんて事ないよ。」
「ちょっと足見せて。」
「大丈夫だって、」
「ちょ、これ腫れてるし、色変わってんじゃん。無理しちゃダメよ。」
「あ、あはは。あんまり騎馬の上慣れてなくて捻っちゃっただけだし。」
「そんな足じゃ家に帰るのしんどくない?結構距離あるでしょ。」
「大丈夫これぐらい」
「本来なら送ってあげたいところだけど、このあと部活あるから無理なんだよね。ほんとにごめん。」
「全然気にしないで、私が勝手に怪我しただけだし。」
「そうだ、いえ誰か近い人いないの?」
「いるにはいるけど、、」
「あ、椿衣君か」
「う、うん。けど迷惑だから一人で帰るよ」
「椿衣か、また頼みにくい人だなー苦笑。」
「い、いやまぁうん」
「ほんとに気をつけて帰ってよね。」
「うん、ありがとう。部活がんばってね。」
そして、いつもより遅めのペースでゆっくり歩いて帰っていた。
「つばきか?今日帰るの遅くね?」
「え?あ、椿衣くん。えっと、少し居残りしてたの。」
「まぁ理由は何でもいいから荷物貸しな、カゴに乗せてやる。ついでに後ろ乗れよ。」
「え、いやいいよ。あ、あ〜」
椿衣は話にお構いなしにバックをかごに無理やり入れた。
「乗りな」
「い、いやいいよ。」
「乗らんかったらバックどっかで捨てるからな。」
「わ、わかったよ。失礼しまーす」
「最初から素直に乗りゃいいのに。」
と言いながら私を乗せて漕ぎ始める。この時互いの心臓の鼓動が早まっている事は誰も知るはずもなかった。
「あ、あのカイ君」
「んー?」
「な、なんで乗せてくれてるの?」
「さっきの居残りで遅くなったのは嘘だろ?だいたい俺に嘘が通用するとか思ってるん?」
「え、いや」
「何があったんか知らんけど多分右足捻挫しとるやろ」
「う、うん。なんでそれを?」
「幼馴染だぜ?そんなことぐらいすぐわかるわ、だいたい後ろから見て右足引きずりすぎなんよ。」
「え、あそうなんだ。(幼馴染って思ってくれてたんだうれしい。)」
「つばき、つばき?つーばーきー。」
「は、はい!」
「ついたぞ、いつまで乗ってんだ」
「あ、ごめん。ありがとね。」
「んー、そんじゃばーい」
と言いながら漕ぎさっていった。
「つばきー彼氏いるなら私にぐらい教えて来れてもよかったじゃーん。」
「み、みずほ?私彼氏いないよ?」
「そんなこと言ってー、昨日見たんだよー?つばきが男子と二人乗りしているところー。」
「あー、それ椿衣くん。」
「え、二人付き合ってたの?いいじゃーん。」
「か、勝手に話勝手に進めないでよ。大体幼馴染なだけだし」
「ふうん、詳しくは聞かないどくねー。」
「う、うん(私はその誤解が現実になればいいんだけどなー。カイ君からしたら迷惑かも入れないけどね)」
椿は先日のお礼を言うために椿衣を探した。
「カイ君昨日はありがとうね、助かったよ。」
「たまたまあっただけだし、俺の家の帰路に家があるから送っただけだよ。」
「そ、そっか。けどありがとね。」
「んー」
しばらくして、みずほがやってきた。
「つばきーって椿衣のこと好きでしょ。」
「んぇ?い、いきなりどうしたの?」
「焦りすぎ焦りすぎ、なんか私と話す時と違ってなんか俗に言う乙女の顔してたよ?」
「う、うそ」
「やっぱりねー、うんうん、告らないの?」
「いや、向こうが私のことどう思ってるかわからないし。」
「あー確かに、カイってあんまり女子関係の情報ないもんね。」
「やっぱりそうだよねー。」
「あ、そうだ晴翔に聞いといてもらおっか。」
「いいよ、みずほの彼氏に迷惑かけちゃうじゃん。」
「そんなこと気にしなくていいって、大体よく一緒にいるし」
「な、ならお願いしようかな。」
「はるとーくん、今ちょっといい?」
「ん、あみずほかどうした?」
「私の幼馴染のさ、椿いるじゃん?椿がさ、どうも水嶋君が好きらしいんよ」
「ほう、椿衣が好きなんや、あいつを好きになる女子おるんやな。」
「そんなこといったら、晴翔だって女子中では人気なかったんだよ?」
「終わり終わり、傷つくやん。そんあんことより、椿衣の好きな人を聞けばいいん?」
「さっすが話が早くて助かるわ。あ、けど誰とかじゃなくて、どう言う好みかでいいから。」
「イエッサー、聞いとくよ」
「よろしく、それじゃ」
「へーい」
「かーいー」
「なんやいきなりそのテンションとかきもいぞ。」
「言い過ぎだぞー、俺泣くぞ。」
「勝手に泣いとけ」
「ひどいなー、俺泣かせたら、俺のみずほが黙ってないぞ?」
「はいはいそだねー、でなんやいきなり。」
「そうそう、そろそろ体育祭じゃん。だからさ、彼女とか作らないんかなって」
「は?何言ってんだ?」
「まぁ率直にいえば好きな女子の好みはなんだ?ってことよ」
「好みかー、髪が長すぎず、のんびりやだけど、するときはするって言う頼もしさを持ってる人かなー。」
「へー意外だなー」
「悪いかよ」
「ぜーんぜん」
「てかさあのゲームがさ、、、」
やがて昼休みに入った。
「みずほ」
「ん?もしかしてもう聞いて来れたの?」
「うん、バッチリきたぜ」
「早速教えて」
「まぁそう慌てるなって、かくかくしかじか」
「え?髪の長さを除けば椿とも考えられるくね?」
「そうなんよねー。」
「両思い説出てきたな。」
「うわー、すごく歯がゆいけど見てる私たちからすると楽しいやつやん。」
「そーれなっ」
二人の会話は周りの人が見てもわかるぐらい盛り上がっていた。
あっという間に時間が過ぎて行き、ついに体育祭前日になっていた。
「つーばきー。」
「なにーー?」
「ついに前日だよ?何もしないで行く気なの?」
「何もしないって逆に何するのよ」
「それお言われたら何もいえないけどさ、気持ちぐらい伝えてもいいんじゃ?」
「怖いから嫌だよ」
「はぁ、だいたいね幼馴染なら大丈夫でしょ。」
「あ、ごめん、なんか今から、体育館裏に行かないと」
「へ?もしかして、、、」
「違うよ何を想像してるのよ、隣のクラスのさ、本田くんって人から。」
「え?あのバスケ部の本田圭?」
「多分、わからない。」
「そ、そうなのね。」
その時ちょうど椿の後ろにいた晴翔にみずほはアイコンタクトをしたのだが、椿は気づかなかった。
椿が去った後みずほはこっそりと後を追った。
「えっと、椿さん明日クラス対抗リレーで一位を取ることができれば、僕と付き合ってもらえませんか。」
「え、えと」
「突然の話なので申し訳ないです。では失礼します。」
「あ、ははい」
椿はまさかの言葉にしばらく動けなかった。もちろん本田君のことは知っており、女子の中では絶大的な人気を誇っている人で次期バスケ部のキャプテンになれるほどの腕前をもているのである。
「つばきー、まさかの告白予告されちゃったね。」
「う、うん。びっくりした」
「まぁ考えても一緒だし帰ろっか」
「そうだね、帰ろう」
この光景を晴翔と晴翔に無理やり引っ張られるがままについてきた椿衣がいた。そして二人ともその光景の衝撃が強過ぎて沈黙していた。
「か、かい?いいのか?このまま見過ごして」
「俺には関係ないことだ、見なかったことにすればいいだけさ。」
「うそだね、その言葉思ってもないことだろ?」
「嘘とかどうでもいいだろ、ほっといてくれ。」
「友達としてほっとけないね。悔しいなら、今からにでも自分の気持ちを伝えてきたらどうだ?」
「いやだ、今の光景を見たから告白なんて、本田に負けを認めたようなもんだろ。それなら同じ条件で挑んでやる。」
「お、お前、わかったよ。そうなると手をつけられないんだし、ただしこれだけは言わせろ。
絶対に負けるなよ。」
「あ、あぁあたりめーだ」
白熱した空気の中、終盤の花形であるクラス対抗リレーが始まろうとしている。
1組から5組まで乱戦状態が続き、気がつけばアンカーまで迫っていた。
5組、4組、1組、3組、2組の順番にアンカーにバトンが渡った。
5組のアンカーは本田、4組のアンカーは、
椿衣が1位を争っている。やや本田が有利か。最初のカーブは、本田がインコースを責め、椿衣が、やや大回りして外から隙を狙っている。直線に入り、本田が一気にリードを広げようとするものの、椿衣が食らいつきインコースを攻める。本田はスピードを誤り、少し大回りになってしまう。その瞬間運動場全体が凄まじい応援や悲鳴が巻き起こる。
インコースを攻めた椿衣が少しリードをつけ、突き放そうとするも体制を立て直した本田がすぐさま追いつく。そのまま直線勝負で、横並びになる。そしてほぼ同時にゴールテープをきる。そして後続がゴールし、
順位が出るかと思いきや1位と2位の結果が出ないことに会場全体がどよめく。そして数秒か数十秒経ったかわからない。晴翔、本田、椿、椿衣、瑞穂が見守る中、
「ただいまの結果ビデオ査定により、篠田 椿君が一位、本田 圭君が2位となりました。結果の発表が遅れたことを本部代表してお詫び申し上げます。」
とアナウンスが流れ、会場にはあらゆる声で盛り上がった。
「み、みずほ、なんとか本田の件は阻止できそうだが、カイはするのかな。」
「ホンダにリードされたままで終わることはないんじゃないかな?」
「そうだと信じたいね。」
「うん、私たちができるのはここまでだしね」
その頃、
「椿衣、最後の伸びはえぐいは」
「いや圭のカーブのうまさにはびっくりしたぜ。」
「はぁ、一位とりたかったなー」
「それだけは譲れねーな」
「まぁいい勝負だったぜ」
「おうよ」
盛り上がった体育祭も終わりを告げようとしていた。しかし、いろんなところでまた違った盛り上がりが見える中一人の少年の心が決まった。
「つ、つばき、少しいいか?」
「は、はい」
「本田についてなんだが」
「うん、それがどうかしたの?」
「そ、その俺にも適用されるのかなって思ったりしてて、、、」
「も、もしかして見てたの?」
「見てたと言うか見えた」
「そ、そうなんだ」
「それで今回俺、一位取ったし告白する権利があるのかなって」
「え、そ、う、うん」
「な、なら、幼稚園の時からす、好きでした。もしよければ付き合ってもらえませんか?」
と言いながら椿衣は頭を下げる。
「私でよければ、よ、喜んで」
「ほ、ほんとに?」
「うん!」
すると二人は気がついていなかったが、瑞穂と晴翔により二人の関係ある人が笑顔で包み込み拍手をしていた。二人は思わず恥ずかしくなり顔を赤らめていた。
「せっかくなんだし、ツーショット撮りなよー」
「そうだよ撮れよー。」
とみずほの言葉にみんなが口々に便乗した。
やがて、椿は状況を受け入れ、ポーズを取ろうとした瞬間に
「ヒャ」
椿衣が椿を軽々と持ち上げた。しばらくは二人とも固まったが、やがて
「パシャリ」
とシャッターの音が響いた。
二人にとって一生の思い出に残るような1日になったことは言うまでもないだろう。
初めて小説を載せているので無知なところが多いですが温かく見守っていただけると幸いです