「雪と椎崎と島村と」
「ーーっ、雪だーーっ!」
ダダダッと雪の上をザクザクと走り、私は全身で雪を堪能する。
「綺麗だーーっ! 早く来いよ、島村! 最高の景色だ!」
私はくるくると1面白色の世界を回りながら、島村に呼びかける。
最高だ。こんな日が来ようとは……。
曇り空から降り注ぐ幾万の結晶。それら全てがひらひらと舞い踊り、雪という天気をより美しく彩っている。
「椎崎さん危ないですよ、そんなにはしゃぐのは……うっ!」
途中で島村の言葉が止まる。
私が雪玉を島村に向かって投げたからだ。
それが不幸(意図的)にも、島村の顔面に当たり、ひゃあと冷たそうにする。
「クリーンヒット!」
「ふざけないでください!」
島村が地面の雪をかき集め、私に向かって投げてくる。
「やばっ……」
とんでもないスピードの雪玉が見事に私の顔面に当たり、私も冷たい思いをする。
「やったな〜、島村このヤロ!」
私も負けじと雪を投げる。
それをスッと島村は避け、避けた瞬間に手に握っていた雪玉を島村は勢いよく投げてくる。
「わっ!」
ボシャ!
制服の上に着ているコートに雪が当たり、ベシャと円形に広がる。
「この〜、島村め」
ポイポイと手当たり次第に雪玉を投げる。
だが、どの雪も島村には当たらない。
なんでっ!?
そう疑問に思った瞬間……
「おうわっ!」
いつ作ったのか、なかなかに巨大な雪玉が白色の軌跡を描きながら、私に直撃する。
冷たっ!
「うわっ、服の中に入った!」
私の素肌に侵入してきた雪を必死に逃がす。
冷たさに耐えられず、仕方なく服をめくり、バタバタと雪を逃がす。
「……冷たかった」
「冷たかった。じゃないですよ。椎崎さん、ちょっとは恥じらいというものを覚えたほうがいいですよ」
「ふっ、天を司る者に恥じらいなど必要ないのだ」
ビシッと島村に言い放つ。
「………そういうの、そろそろ卒業しません?」
「お、お前ホントに島村か!? なんかちょっとお前今日おかしいぞ!」
「お互いですよ!」
そう言って島村が走って逃げていく。
「あっ、待て島村!」
逃げてしまわぬよう、私もその後を追いかける。
コンコンと雪が私達に降り注ぐ。
それまるで、私達を優しく見守っているようだった。
ピコン。
スマホからメッセージが届いたことを知らせる通知音が鳴り響く。
「ん? なんだ?」
スマホを覗いてみると、島村からだった。
どうしたんだ珍しい。
いつもなら私からメールを送るばかりで島村からメールが来ることはほぼないのに。
アプリを開き、メールの内容を確認する。
『すいません、今日遊んでたの私の妹です』
…………。
私の予感は、正しかった。
雪は降ってる時が一番綺麗だと、俺は思います。
尚、雪が止んだ次の日はちょっと……。