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「一周回って怖くなる」

「クリスマスが今年もやってくる! 予約しよう、クリスマスケーキ!」

 ……もうそんな季節か。早いな随分と。

 ちょうどTVを点けた時に流れたCMで、俺はふと気付かされる。

 連載をされずに放置されて約3ヶ月。この間に色々面白いことがあったというのにネタに出来ずに実にもったいない。

 ………なんて、メタいことを言うのはやめてと。

 俺はどちみち今年もクリぼっちのさみしい一日を過ごすことになるだろう。これでまた記録更新か、悲しいな。

 悲しい現実から目をそらす為、俺はTVを消し自室に向かう。

 こういう時の気分転換にはゲームだ。ゲームで対戦相手をボコしてこの悲しみを忘れよう。

 自室のドアを開け、ゲーム機の電源を入れる。

 すぐに画面が表示され、ソフト選択画面、つまりホーム画面が出る。

 えーと、プレイするゲームはあの超人気レースゲーム「ピーーーーー」と。

 ん? なんか規制音が入ってる。まぁいいか、どうせ誰も気にせん。

 ソフトを選択して、画面が暗転する。

 しばらくして真っ黒な画面に制作会社のロゴが表示され、ゲームのタイトルが出てくる。

 よし、出てきたな。プレイAボタンと。

「クリスマスイベント開催中! 期間限定コースを走ろう!」

 おい! ふざけんなよ! おかしいだろこれは。悲しい現実から目を背ける為に、俺はゲームを始めたというのに。

 まさか10分もせずまた現実を見ることになるとは。

 ………仕方ない。せっかくだし期間限定コース走るか。

 オンライン対戦でマッチングし、期間限定コースに走りたいと一票入れる。

 対戦相手20人、全員が同じステージを選んでいた。

 クリスマス期間限定コース「クリスマスパニック」



「ちきしょー! 負けた! あんな奴に負けた!」

 なんなんだよ、ニックネーム「彼女できて幸せ」って! ふざけんな! 幸せな一夜を過ごせこの野郎!

 なんて届かぬ想いを脳内で飛ばした後、もういいやと俺はゲームの電源を切る。

 もちろん、セーブとかはちゃんとしてあるぞ。

 さっきまでうるさく動いていたファンが動きを止める。

 俺の自室は、その瞬間に一気に静かになった。

 あ〜あ。今日はもう寝るか。

 なんか疲れたし。

 歯磨きだのなんだのを済ませて、俺はベッドに入る。

 冷たっ。なんか毛布冷たっ。いやこれ掛け布団か。

 冬あるあるに悩まされながら、寒い寒いとぼんやり考えつつ、俺は眠りについた。

 今年のクリスマス、まじでなんか良いことの一つやニつないかなぁ。



 朝、フルアーマーで防寒着を装備しているにも関わらずガタガタと震えながら登校する。

 こんな寒い所にずっといたら、また授業中に腹痛の我慢大会を一人で開催することになってしまう。

 さすがにもうそれだけは勘弁だ。あれまじでキツイ。

 なので俺は学校までの残り数mを一気に駆ける。

 たまには日頃の運動不足を解消しないとな。

 ゆっくり歩いて登校している奴らを抜かし、脳内レースゲームで1位を取ったところで学校に着く。

 下駄箱から室内用の靴を取り出し、そこで何かがはらりと床に落ちる。

 白い紙? なんでまたこんなものが俺の下駄箱に……。

 それは手紙だった。ご丁寧なことに、我が眷属へなんて書いてある。

 最近あいつ出番多くないか? まぁ、俺の方が出番多いからいいですけどね。

 余裕の主人公特権を発動して、手紙の中身を見る。

 「25日、待っているぞ」

 え………。おいおいおいおいちょっと待って欲しい。

 25日? 待ってる? こんなの確実に告白されるテンプレートな流れじゃねーかよ。

 まじか。まぁ俺的には、あいつは嫌いになろうとしてもなれない、結構いい奴ポジションだから、告白されたらまぁ考えてやらなくもないかな。………ないかな!

 ついに、俺にも春が来た。 いや今は冬だけど。

 とにかく、こりゃ年越しまでに人生初の大イベントがあるに違いない。

 来た。俺は、勝った。

 今すぐ全身で喜びを表現したいところだが、曲がりなりにも俺は高校生。もうそんなガキみたいにはしゃぐことはしない。するとしてもギャンブルで大勝ちした時くらいだ。

 いや〜、悪いな、松本君。俺は先に青春を謳歌してくるよ。

 朝から寒さを忘れて気分良く教室に向かう。

 今日ほど学校が楽しいと思ったことはない。最高だ。夢がどんどんと膨らんでいく。

 教室のドアを開け、自分の席に座る。

 あいにく松本はまだ登校してきていなかった。

 やべ〜、椎崎の奴に会うのが楽しみだ。俺が行くって言った時にあいつが大喜びしたら、もう確定演出だ。

 楽しいコンコース起こるであろう妄想に浸っていると、ふいに山口が話しかけてくる。

「25日、私の家に来て」

「…………へっ?」

 一瞬、理解するのが遅れた。

 ちょっと待ってくれ。たった一日の間に俺はどうしちまったんだ。誰か薬でも盛ったのか。そうじゃないとありないだろ。こんなこと。

 俺は今の今までクリぼっちで毎年過ごして来たんだぞ? そんな俺が急にこんな誘われるとか、どう考えてもおかしいだろ。

 まさかこれって死ぬ予兆? まじで信じられん。どうなってんの俺。

「うん、空いてるね。じゃあ好きな時間に私の家に来て。お兄ちゃん」

 …………まじでどうなってんの。

 混乱と喜びが入り乱れる中、俺は今日一日ずっと悩んで過ごすことになるのだった。

クリスマス、それは両極端の感情が混じり合う特別な日。正直言って、怖い。

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