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「7月30日」

 先に言っておくが、この回は本編とまったく関係ないからな。

 と言っても、おそらく本編のどこかしらに割り込んでいるだろうから、その辺はご愛嬌ということで頼みます。



 と言うわけで本日7月30日。

 土用の丑の日。

 もうこれでだいたい分かった人もいるかもしれない。

 そう、俺は今日、滅多に食えない鰻なる食材を求め、スーパーに来ていた。

 隣には、一人だと俺がビビって何も出来ずに帰る可能性があるので松本がいる。

「それで、お前はなんでスーパーで鰻を買おうと思ったんだ?」

 聞くと思ってた。おそらく他の人も皆、気になっているだろう。

「まぁ、分かりやすく説明するとな」

「分かりやすく説明すると………」

 松本が、俺の言葉の一部を復唱する。

 さぁ、それでは衝撃の真実をお伝えしよう。

「金がない」

「…………」

 …………。

「まぁ、そんな日もあるわな」

「ああ、そんな日もあるよ。そんな日も」

 そんなことを言いながらも、俺は今、とんでもなく悔しいし、そんな日もあんな日もなきゃいいのにと思っている。

 くそっ、何が良くてスーパーの格安鰻にしなきゃならないんだ。

 本当なら今頃、かの有名なあの市でうな丼食ってる予定だったのに。

 知らないうちに消えた松本は放っておいて、俺はスーパーの鰻コーナーでどれが一番美味そうな鰻か、よく目を凝らして見定める。

 う〜ん、どれが一番いいんだ?

 俺は、手に取って見てみる。

 おっ、これ美味そう。あとこれも。あ〜、でもこれも…………

 ガサッ

「これ買ってくれ」

 松本が俺の持っていたカゴに何かを入れる。

 ってこれ、あの有名ゲームのウエハースじゃねーか! カード付きの! なにしれっと5個も入れてんだ!

「おい」

「今度、友達にまた頼んどいでやるよ」

「分かった、買ってやろう」

「いっやっったぁぁぁぁぁ!!!」

 コイツ、スーパーだからってちゃんと喜ぶ声が小さくなってるな。

「あ、でも3回分な」

「………………」

 松本がカゴからウエハースを取ろうとする。

 俺はカゴを松本から見て、反対側に動かし

「頼んだぞ、松本」

「あの、言い出した私が言うのも難ですが、やっぱりなかったことに…………」

「頼むぜ!」

「…………………………買ってなんて言わなきゃ良かった」

 だろうな、許可取るのだるそうだもん。

 俺は、ひょいと気に入った鰻をカゴに入れ、レジに向かった。

 


 さて、では食いますか。

 あのあとレジで会計をし、暑苦しいなか家に帰った俺は自室に入った瞬間エアコンをつけ、テーブルにいつでも飯が食える準備をしていた。

「さすがにそんな簡単に推しは当たらんか」

 ベッドに胡座をかいて座りながら、ウエハースを食っている松本がいるというオプション付きで。

「松本、俺は鰻をレンジで温めてくる。バカするなよ」

「へいへい」

 まぁ、ウエハース食ってるしさすがになんもやらかさんだろ。

 俺は鰻片手に台所へ向かう。

 途中、俺も欲しくなって買ったウエハースを食いながら。

 


「なぁ、俺にそのカードくれないか」

「3回を一回にしてくれたらいいぞ」

 ……………どーすっかなー。

 今の状況を分かりやすく説明すると、鰻を温めて帰ってきたら、コイツが見事、俺の推しを当てたのだ。

 しかも、今日鰻食うのも推しの記念日って理由だし。

 あまり、細かくは言わんぞ。著作権がとかなったら終わるのは他でもないこの俺だからな。

 まぁ、そんなことはどうでも良くないが、とりあえずはおいておくことにする。

「分かった、一回でいいよ、しゃーない」

「やったぜ、ほいじゃあやるよ」

「やったぜ!!!」

 でも、取引が俺に不利あり過ぎるちきしょー。

 だが、一回でも十分価値がある。それにカードももらったし。

 だからまぁ、いいか。鰻食おう。

 一緒に入っていたタレをつけ、一口。

 ……………。

 あったかいのに固い。

 ちきしょー! 記念日おめでとう!

「お前、泣くのか笑うのかどっちかにしろよ」

鰻…………すげぇ高い。

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