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「苦悩と信頼」

 頭のおかしい奴に絡まれた次の日。金曜日。

「やっと金曜日だ」

 俺は机に座った状態て呟いた。

 まぁ、登校してまだ5分も経ってないが。

 それに運悪く、俺は今日……

 8時に学校に着いてしまった。

 なんでこうなったんだよ!

 俺は昨日、行われたあのメッセージの送り合いを思い出す。


 松本とのメッセージやりとり

「おい山田」

「なんだよ」

「明日日直だぞ」

「は?」

「まじで遅れたら一週間日直だぞ」

「それはまずい」

「助かった」

「明日絶対遅れんなよ」

「分かってるわ」



 う〜ん。

 結局、黒板見たら日直の欄に俺の名前なかったんだよなぁ〜。

 よし、決めた。

 アイツ、後でボコす。

 俺は、心の中で決意し、HRまで何をしようか考えることにする。

 てか、日直は朝一番に学級日誌取りいかなきゃいけないのっておかしくない?

 しかも、職員室。

「おにいちゃん」

 なんか、前が騒がしいな。

 いや、あんま騒がしくないですけど。

 強いて言えばご褒美ですけど。

「なんだよ、山口。さっきから」

「特にないも」

「実は?」

「山田が妹好きだから、まねしてみてる」

 やっぱな。

 どうせ、そんなんだろうと思ったよ。

 あの時の会話、俺はちゃんと覚えてたからな。

 そして、コイツもちゃんと覚えてた。

「どうしたの。そんなに悩んだ顔して。おにいちゃん」

 悩みの種はお前だぞ。クラスの奴にどう説明すればいいんだよ。

 ほら、クラスの端にいるアイツなんか、俺らを興味しんしんに、見て………

 ん? おかしいな。興味………しんしん…?

 ま、まぁいいさ。なんとかなる。

 朝一番のクラスは、やべー奴の集まりだと分かった。それで、十分さ。

 ………。

 十分なわけがない。それに、今の状況は非常によろしくない。

 クラスの奴がもっと集まったら、ガチのマジのリアルに大変なことになる。

 俺は、最悪の事態に遭遇してしまった自分を想像する。

 きっと、その俺はこんな感じだ。



 俺の席の周りに女子が集まってくる。

「ねぇ、山田君」

 終わった………

「山口さんに、自分のことをお兄ちゃんって呼ばせてたみたいじゃない」

 ………。

「ちょっと良くないよね〜」

 ………。どうやって逃げるか。

「山田君。屋上行こ」

 優しく言うな。

「大丈夫だよ。あの方も来てくれるはずだから」

 あの方って、誰だよ。

 こうなったら、堂々と逃げよう。

 俺は、そう決心し立ち上がる。

 だがその瞬間、俺の肩に手が置かれる。

「今から行こ。逃げそうだから」

 バレてた………



 なんて、やりとりをしてボコられるに違いない。

 本当にまずいぞ。この状況は。

 一体どうすれば………ッ!

「どうしたの? おにぃちゃん」

 山口が俺の顔を覗き込むようにして、心配してくる。

 これどーしよ。

 ん? てか、待てよ。

 俺、勝手に一人で悩んでるが良く考えたら、まだコイツと話し合いなるものを一度もしてねーぞ。

 よし、会話パートだ。

 上手く言葉巧みに俺をお兄ちゃんって言わないよう、誘導するぞ。

 そうと決まればとっとと終わらせよう。

 俺にはあと少ししか時間が残ってない。

 俺はしっかりと山口と目を合わせ、口を開く。

「なぁ、山口」

「ん? どうしたの?」

 よしよしよし! ちゃんと聞いてくれてる。

「俺は、確かにそうやってお兄ちゃんって、呼んでもらえるのは嬉しい」

「うん」

「でもな………」

 …………………。

 なんて言えばいいかな〜。上手く納得してくれるような理由。

 普通に嫌とは言えないし、かと言って山口を拒絶するような言い方は嫌だ。

 一体なんて言えば………。

「山田君が」

 山口が、俺に話し掛けてくる。

 ん? 今、山

「なんて言いたいのか、大体分かるよ」

 えっ

「お兄ちゃんって呼ぶのはやめてほしいって、言おうとしてるんでしょ」

 コイツ、分かってたのか。

「だけど、上手く理由が思いつかない。違う?」

 山口が、俺に問うてくる。

「ああ、正解だよ。大正解。文句のつけようがないくらいにな」

 俺は降参の意を示す。

「やっぱり」

「でも、なんでわかったんだ?」

 俺は山口に質問する。

 正直、あの短時間で分かるとは思えない。

 いや、もしかしたら俺が分かりやすく反応してたのかもしれないけど。

「なんとなく」

 コイツらしい答えだ。相変わらずよく分からん奴だな。

 てか、なら逆に話が早い。

「なぁ、山口。なら」

「無理」

「はえ」

 俺は間抜けな声を出して、ある意味返事をする。

「私は、あなたをお兄ちゃんって呼ぶ。今も、そしてこれからも」

「…………」

「それに、私はあなたの………」

 その瞬間

「よう! 山田!」

 松本だ。

 あの野郎。今、大事な事言おうとしてただろ。聞こえなかったじゃねーか。

 俺は席に着こうとする松本を恨めしく思いながら、視線を送る。

 (何言ってるか分かんなかったぞ! どうしてくれんだ!)

 松本が俺の視線を受け、ああと少し頷き……

「大丈夫だ、安心しろ! 学級日誌ちゃんと手伝ってやるからよ。だから、ほら出してみ学級日誌」

 コイツ、俺をまだ騙す気か。

 俺は黒板を指差し

「よく見ろ、日直の欄に俺の名前はないぞ」

 しっかりと言ってやった。

 これでドッキリ失敗確定だな。

 それを見て、松本が

「あれ? おかしいな、確か今日お前だったはずなんだけどな」

 松本が訝しげに黒板を見る。

 あれ? コイツマジで間違えた?

 そんな事を考えてる間に予鈴がなった。

 と同時に教師が入ってきた。

 ん? なんか珍しく今日、教室来るの速いぞ。

「おい、山田」

「はい」

 教師に呼ばれ、俺はしっかり返事をする。

 なんてったって、この教師、頭がイカれてるから少し返事が遅いだけで怒ってくる、訳の分からんアホなのだ。

 意外とそういう奴、皆の周りにいるだろ。

「お前、日直だよな」

 この流れ、嫌な予感がするぞ。

「俺が何言いたいか、分かるな?」

 まずい……ッ! これはリアルにまずいッ!

 俺は抵抗を試みる。

「でも、先生。見てくださいあれ。俺の名前ないです。」

 松本の時と同じように、俺は黒板を指差す。

 だが、

「言い訳すんな。一週間な」

 ……………………。

「ほらよ」

 教師が俺の机の上に学級日誌を置く。

 …………………………………。

 おとなしく松本の事、信じてれば良かった。

 

 この時の俺は、山口の言おうとして言えなかった言葉の事など、まったくもって忘れてたしまっていた。

 

 


はい、今回はこんな回です。

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