「厨二病はヤバい奴、多分」
俺は屋上のドアを開けた瞬間、絶望した。
なんでかって?
そこに俺のクラス1のやべぇ奴がいたから……
「飯食おうぜ」
俺は昼休みが始まった瞬間、隣の席にいる松本に話しかけた。
「飯? いいぞ、はや……」
だが、上手い具合に校内放送が流れる。
「1の1 松本今すぐ職員室に来い。非常に大切な話がある」
「………終わった」
へっ、ざまぁねぇぜ。
なんて俺は口に出さない。子供じゃないからな。
「てか、放送からして無理だったんだな」
「ああ、最悪だよ」
俺はコイツが呼ばれる理由として、ひとつだけ心当たりがある。
読書感想文。
実はコイツ、読書感想文を、とんでもなく鬱展開な、あの作品で書いたのだ。そりゃこうなるわ。
まぁ、アイツもこうなると大体気づいてたみたいだが。
「よし、俺は今から戦場に行ってくる」
そう言って、松本は席を立つ。
「おう、生きて帰ってこいよ」
「安心しろ、言われなくとも帰ってくる」
そして松本は戦場へと向かった。
廊下に出る直前、転びそうになって……
…………アイツ、すげぇ不安。
一緒に飯食う奴がいない。
俺は悩む。こういう時が、いっっっちばん学校生活の中で深刻なんだよな。
だからと言って、仲良くない奴の飯食うのはなぁ。
大変なことに俺と仲良かった奴は皆、別のクラスだ。
非常に運が悪い。
う〜ん、そうですね………。
俺は決めた。
一人でもおかしくなくて、あんま寂しくない場所。
屋上だ。
キィーと不快な音をたて、俺は屋上のドアを開ける。
で、俺は屋上のドアを開けた瞬間、弁当片手に驚愕と危機感を抱いたと。
この学校の屋上は至ってシンプル。
飛び降り防止等の理由でつけられた手すりが周りにあるだけ。本当にそれだけ。
だから、見晴らしがいい。
そんな屋上に俺が危険を感じた人物がいる。
身長低めのどっから持ってきたか分からん真っ黒マントを羽織った女。しかも、よく分からんマークの眼帯までつけてる。
そいつの名を椎崎と言う。
ちなみに隣には、名前は知らんが、とても気が弱そうな子がいる。
そんなやべぇ要注意人物の椎崎がこっちを見ている。
ついでに隣にいる奴も。
アイツらに絡まれたらまずい……
俺は、そっーと扉を閉めようとする。
が……
「ふふ、我が魔力につられてやってきてしまったか…」
椎崎がやれやれとため息をつきながら、俺のほうに歩いてきた。
隣の奴はあわあわと慌てている。
コイツは重症だ。やばいぞ、まじで。
そんなことを考えている間に椎崎が俺の目の前まで来ていた。
「して、何のようだ。山田よ」
げっ、コイツ俺の名前知ってんのかよ。読者にも当分バレないようにしようと思ったのに。あっ、やべ。メタいこと言った。
「し、椎崎さんっ」
「ん、なんだ啜鬼」
「寿々木ですっ!」
ほう、あわあわしてた奴は寿々木というのか。なるほど。
「や、やめとこうよ、椎崎さん。こ、この人なんか怖いよ」
「安心しろ、我が力があれば怖いものなどない。それで山田よ、貴様はなんのようで私のところへ来たのだ? ん? それは……」
椎崎の視線が下になる。細かく言えば俺の手あたり……
まさかコイツ……
「なるほど、この私のために飯を持ってきてくれたのか」
「ちげぇよ」
俺はつい癖か、なにかで即否定してしまった。
すると、椎崎は俺から数m程距離を取り、バッとマントを翻した。そして
「山田よ、その弁当を置いて帰るのだ。そうすればあの発言は許してやろう」
俺はとりあえず置いていかなかった時はどうなるのか聞いてみる。すると…
「もちろん、お前は終わる」
………。
確か、あのセリフを聞いた奴は恐怖で学校を一週間休んだんだったな。松本情報によると……
てか、何されたんだよ休んだ奴は。
「さぁ、置いていくのだ」
椎崎がじりじりと自分で取った間合いを詰めてくる。
どうするか、置いていった方がいいか。でも俺の飯がなぁ〜
あっ、そういや俺、今日おにぎりあるんだった!
おにぎりを置いていこう。学校休まされるわけにはいかんらな。
俺は弁当の一つ、おにぎりを、ほらよと言って椎崎に投げる。
「おっ、感しあっ、違った。ふっ、それでいいのだ。よくやったぞ」
「じゃ、俺は帰るから」
そういって俺は踵を返す。
「あっ、あの」
「ん?」
寿々木が俺に話しかけてくる。
「あの、えっとその、あの」
「ああ、分かった。んじゃ、俺帰るから、またな」
これ以上面倒くさいことに巻き込まれたくない。とっとと帰ろう。そうだ、そうしよう。
俺はおにぎりを一つ失って、無駄足をした。
椎崎SIDE
私は、山田から手に入れたおにぎりを見つめ
「やった!やったよ寿々木!上手くいった!」
私はあまりにも嬉しくて、その場でジャンプを何度もして、喜びを表現する。
って、やばい。喜びすぎた。冷静に冷静に。
「どうだ、この私がいれば、このくらい余裕なのだ」
そう言って、おにぎりを持った手を啜鬼に向ける。
「あの、本当にいいんですか?」
「ああ、わが眷属のために頑張ったのだ。受け取るが良い。」
「あ、ありがとうございます」
啜鬼が両手で包み込むように、私からおにぎりを受け取る。
「もう、これを気に弁当を忘れるなよ」
「は、はいっ!」
その後、私は忘れ物をしない方法を出来る限り教えてやった。
「い、いただきます」
屋上にある、ボロベンチに座って私達は食事をしている。
私は、あまりこういう事は言わない者だが、おにぎりを頬張っている啜鬼の姿は、正直言ってかわいい。
「私をずっと見て、どうしました?」
「いやっ、なんでもない」
しまった、見とれていた。
私は、なぜか分からないが、何か悟られる気がしたので、自分の弁当を掻き込んだ。
「ごほっ!」
まぁ、見事に咳き込んだしまったが。
「大丈夫ですが!? 椎崎さん」
「だっ、大丈夫だ。問題ない」
冷静だ、冷静。冷静になろう。私は大丈夫だ。まだ、追い詰められてない。
「それにしても、あの人には悪いことしました」
「………そうだな」
確かに、山田には悪いことをした。
「よし!」
私は立ち上がる。
「わっ、どっ、どうしたんですか、いきなり」
「アイツに褒美を与えよう!」
「えっ」
「そうと決まったら行くぞ! ついてこい!」
私は山田のいる、クラスに向かって走り出す。
「あっ、ま、待ってください椎崎さ〜ん」
はぁ〜、なんか締まらないな。
山田SIDE
俺は、結局のところ教室の自分の席で、一人寂しく飯を食っていた。
あ、この卵うめー。あとこの冷凍で売ってるたこ焼きも、あっあと………
ガラララッ!!!
なんか、勢い良くドア開けた奴がっ………!
「よう! 山田! 貴様に、いいものをくれてやろう」
椎崎っ!お前なんで、いんだよ!
俺の方に椎崎が近づき、バンッと俺の机を叩き、何かを置いた。
「これをやる、絶対に来い」
そう言い残し、椎崎は帰っていった。
何なんだよ、あいつよぉ
俺は、置かれた何かを見る。
それは、一枚の紙だった。
だが、問題は紙に書いてある事だ。なんだよ、これ。
【今週土曜日、ゲーセンに来い。以上。】
厨二病、結構好きですよ。俺は。