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霊凍庫  作者: 弐鈴
野生を忘れた街から出て
3/27

未知


 あれから数日経ち、ゆっくりとなら歩けるようになった。雷の木の種子というのはひたすら苦いだけで不味い。だが、食わないと正気でなくなるという。いつか慣れる日が来るのかも。

 夜、食事の時間になった。カールとランが持ってきたらしい食物を食べながら尋ねた。硬くて繊維のようなものが絡まりあっている。

 「俺は何に殺されたんですか?」

 みんな俺に驚いているみたいだった。

 「あんたは分からないな。まるで他人の人生を生きてるみたいに見える。何か起きても、それを受け入れすぎるというか、合間合間の感情が……分からない」

 カールは一度言いよどんでから続けた。

 「あんたを殺したのはこの近くに現れる人型の化け物だ。俺たちは"暗殺者"って呼んでる。鋭い爪で切り裂いてくるのさ。そいつらに襲われると全身粉々、死体すら見つからないことも多い。あんたは見つかって良かったな」

 そんな存在は聞いたことがなかった。生まれてから教えられていない。不思議に思っていると、ランに質問された。

 「それで、あんたこれからどうするの? 西の方は危険だけど」

 「一緒に里で過ごすという選択もできる。もしリンの言うことが本当なら、暗殺者たちの出現場所を超えれば故郷には帰れるだろうが」

 カールは一息おいて言った。

 「だが、帰るなら、一人で行ってもらう。俺たちは生きなきゃいけない。結果的に命を奪うことになったのは申し訳なく思う。それでも、ここは譲れない」

 カールの真剣な目を見ていると、こちらにも熱が伝わってくるみたいだった。俺はすぐに決めた。

 「じゃあ、俺はみんなに付いて行きます」

 ランは下を向いたまま笑い出した。

 「やっぱ変わってる。旅行が台無しになって、死んで蘇って寿命半分で、種子を食べないと狂いだして、見ず知らずの場所で独りぼっちなのに、こんなに前向き。いや、何も考えていないの?」

 「確かに変わってる。暗殺者の出現箇所を考えたら最善だが、こうあっさり決断するのは熱でもあるんじゃないかと思う。でも、あんたは一人じゃない。俺たちが付いていくんだから」

 カールが肩にポンと手を置いた。だが、俺はこれが良い決断のような気がしていた。都市で意味不明の仕事してたころより、心臓の音がよく聞こえるし。景色が広がって、見えなかったものが見えてきたように感じていた。

 「私たちについてくるんなら、そろそろ敬語でなくてもいいんじゃない?」

 「いいですか? コホン……いや、良いのかな?」

 「なんかぎこちないわね」

 談笑はしばらく続き、寝ることになった。明日から里に向かう。

 「S、私もいつかSの言う都市に行ってみたいな。そのときは案内してね!」

 「ああ」

 そう返してこの日は眠った。


 早朝、ランの声で目が覚めた。

 「みんな起きて!」

 リンは目をこすっている。カールは夜番で寝ていなかったみたいだ。焚火の火が消えかかっていた。

 「もう出発するわよ!」


 一行はひし形になって進み始めた。"暗殺者"を警戒しているのだろうか。


  ***


 「都市で人気な食べ物ってある?」

 「うーん……そうだなあ、美味しいかと言われると甘すぎて美味しくないんだけど、食べれば元気が出る"クリスタル"って食べ物が人気かな、あれ一つでほとんどの栄養素が摂取できるらしいし、見た目もいいからみんな食べてる」

 「甘いんだ! 食べてみたいなあ~」

 途中、休憩のために止まった。ランは結界とかいう術の準備をして、カールは木々の裏を調べている。ここも暗殺者が出るのだろうか。その間、呑気に俺とリンは食べ物のことを話していた。聞いたことのない食べ物が出てくる度にどんなものなのか想像してしまう。ここ最近食べ始めた"種子"はほんとにおいしくない。

 「リンは外に出ちゃいけないって言ってたけど、どうして外に出ちゃいけないの?」

 リンは小さく手招きした。耳元で小さな声で言う。

 「聞いた話では、暗殺者とは別の化け物が頻繁に出るようになって、被害が増えすぎて、みんな不安になっちゃったの。それで百年くらい前の里の代表が決まりを作ったんだって」

 「へえ。百年も前なんだ……。じゃあなんでリンはその、里から出たの?」

 「私もはじめは出ようなんて思ってなかったんだけど、ある人の話を聞いていたら外が楽しそうで……」

 「どんな人?」

 「特徴がありすぎて言葉に困るんだけど、高貴な雰囲気の人だよ」

 ランが話に割り込んできた。

 「あら、もっーと大きな声で会話したら? もう外に出ちゃってるわけだし。内緒話はなしよ。あの人、すっごーーく怪しいわよね。会話で底を見せようとしてないというか、どこか遠くでも見てるみたいで」

 カールも入ってきた。

 「一言で表すなら『恐ろしい人』だな。まるで未来が分かっているみたいに話すからな。直接会ってみると分かると思う」


 休憩が終わる直前、俺は尋ねた。

 「あと一つ聞いていい? なんで俺は生き返れたの?」

 「それはお姉さまのおかげ! お姉さまが冥界の術で魂を繋いでくれていたから!」

 リンは自慢っぽく答える。

 ランが目を背けていたのが気になった。まだ寿命うんぬんを気にしているのか。それとも別の理由があるのか。


  ***


 それからさらに歩くこと数時間。里の入り口まで到着した。

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