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霊凍庫  作者: 弐鈴
平等だと
17/27

不安定・冷静


 リンと別れてからすぐ、めまいがしてその場に倒れてしまった。


   ***


 目が覚めたのは里の中の治療所だった。

 「こりゃあ種子不足の症状だな。今日まだ雷の種子を食べてないだろう?」

 治療所のイオスという人が話してくれた。一度あの世に行ってしまったら、精神と肉体を繋ぎ合わせる必要があるという。ランが俺を蘇らせた術は精神をいったん留まらせるもので、雷の種子と同じ力を持っているらしい。死んでしまったら種子の摂取ができないため、魂は数分で離れ、肉体は腐っていく。

 「持ってきました!」

 フルスがドアを勢いよく開けた。倉庫にある種子を持ってきてくれたみたいだ。ありがとうと言おうとしたが、口が動かなかった。この感じ、リンに出会った頃を思い出す。

 半身を起こしてもらい、トロトロした液体で種子を流し込む。とんでもない苦さと異物感に吐き出しそうだ。しかし、身体は動かないので抵抗なく胃まで流れていく。胃に達した瞬間、激しく咳き込んだ。呼吸が元通りになり、視界のボヤケが消えた。


 朝のうちに忘れず種子を食べて欲しいと言われた。一人でいるときに倒れたら何もできないからと。でも、なんだか気分が良い。倒れる前よりも視界が広いし、体もよく動く。そして何より頭の回転が速くなったような気がする。長時間座った後立ち上がって伸びをした感覚だ。今なら何でもできそうだ。かつてないほどポジティブな感情だ。今ならみんなの悩みも潰すことができるんじゃないか? やる気に満ち溢れた状態で部屋から出た。


 悩みの根源にいるのは人がすぐ死ぬというこの里の置かれている状況。それを作っているのは捕食者・消費者。これを潰すためには何が必要だろうか? 俺はラヴァのもとに向かった。代表のもとにはきっといくつも報告書がある。これらから捕食者・消費者についての情報を集めよう。

 「ラヴァさん、お願いがあって来ました」

 興奮気味の俺にラヴァは渋い顔をして言った。

 「S君、君はまだ知らないんだ。奴らに立ち向かえば確実に死んでしまう。数百年間、捕食者と向き合って生き残った者はいない。折角残ったその命を無駄にしてほしくない。どうか冷静になって考えて欲しい。これは何度も、何度もあったことなんだ。結果が決まったことなんだ」

 ラヴァは目を合わせようとしない。

 「俺は冷静です。自分でもびっくりするほど、今まで生きてきた中で最も冷静です。この命が残ったのは俺やみんなが『生きる』ためです。『生きる』ってことは命を削ることです。残った命の削り方は俺が決めます」

 ラヴァは「そうか」とだけ言って奥から資料を持ってきた。やや呆れている様子だった。

 「捕食者の報告書は赤いカバー、消費者のカバーは青いカバー。黄色のカバーはそれ以外だ」

 最後まで目を合わせることはなかった。

 係の仕事はしばらく休みなので、おかげで全ての資料に目を通すことができそうだ。


 食事もせず自分の部屋で資料を確認していた。めまいがして気付いた。やってしまった。種子を食べるのを忘れていた。机に突っ伏したた頭が持ち上がらない。どうしようかと案じているとノックの音がした。

 「フルスです。Sさん、いらっしゃいますか」

 全身の力を振り絞って声を出す。

 「フッ…………」

 呼吸が止まりそうだ。意識がどっか行く。


   ***


 自室で目が覚めた。フルスが俺をじっと見つめていた。

 「Sさん、また食べるの忘れたんですね。あんなに言われたのに」

 「あ……ありが……とう」

 フルスは机を見て言った。少し落ち込んでいるような声だ。

 「キール代表の部屋にあった資料ですね。捕食者について調べてたんですか?」

 俺は首を縦に振った。

 「そうですか。代表がよく渡してくれましたね。もう捨てようかなんて言ってたのに」

 間をおいてフルスが言った。

 「先ほど、採集係の二名が捕食者に襲われたと連絡が入りました。キャスさんとウグリムさんが死亡とのことです」

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