心得
「ここで問題です! 消費者と捕食者の違いは何でしょう! S!」
「消費者がやばくて、捕食者がもっとやばい」
「ブッブー。ただの感想じゃないですかぁ!」
これからもこの係を続けるとロトーに言ったら訓練所に呼び出された。ロトーは嬉しそうだった。そして今、彼女の講義を受けている。
「簡単に言いましょう。消費者からは逃げられる、捕食者からは逃げられないという違いがあります。優秀な友だちも成すすべなく殺されちゃいました。だから仕事の途中で捕食者に出会うことがあったら里に戻ってください。半分の確率で相方は死にますが、自分は帰って来れますからね!」
とんでもないことをサラッと言う。出会ったら最期、必ず誰か死んでしまうってことか。
「でも、消費者から逃げるのが簡単って訳ではないです。消費者はどいつもこいつも個性が強くて、初見だと対処に困ると思います。でも大丈夫! このロトーが生み出した最強の戦術があります!」
「えっ!」
昨日襲ってきた相手も消費者の分類だという。それを何とかできる最強の戦術!?
「それは……」
「それは……?」
「ズバリ……」
「ズバリ……?」
「『自分の武器をじっくり見る』ことです!!」
「えっ」
6行も溜めたのに。もっと相手を見て行動を予測して周囲の環境を利用して確実に息の根を止めるとか格好良いのだと思ってた。
「今『それだけ?』って思いましたね? 案じることはありません! この道5年のロトー・グラーナが5年使って身に着けた経験則なんですから!」
「でも俺もそのくらい生きてきたわけだし、ちょっと物足りないというか」
「信じてませんね? この経験則は間違いありません。武器をじっくり見つめて『あいつを殺ってやる! 絶対殺ってやる!』と念じながら行動してください。間違いなく殺れます」
結局戦術じゃなくて心構えみたいなものか。
「コツも何もいりません。思考は自然にくっついてきます。何事も必死さには勝てないってわけですよ」
その後は槍の構えを教えてもらい解散となった。もっと必死さを身に着けるべきだと言われた。
本当に俺は消費者や捕食者を前に立ち向かうことができるのだろうか。今朝倉庫から取ってきたこのナイフが頼りなく見える。ロトーにも俺は頼りなく見えているのだろう。そんなことを考えて食堂に入った。




