表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊凍庫  作者: 弐鈴
鮮烈な感情
14/27

決心


 うげぇ……。ガーネットだ。

 「あ、どうも」

 もういい。神経がずっと緊張状態だったから疲れがドッときた。今日はもう難しい話をしないでくれ。ついでに俺はガーネットを信用していない。初対面でこっちの出生について一方的に話してきた。何のために話したのか謎だ。俺に嫌悪感を抱かせるために言ったのか?

 「私は敵ではない。お前は人であることの運命を歩き出したばかりだ。攪拌された感情に従えばいい。血まみれになれたお前に良いプレゼントがある。後で話そう」

 そう言ってガーネットは戻っていく。また変なこと言われるのかも。心の準備だけしておこう。


 水を浴びて血を洗い流した。まだ錆びた鉄のような独特な匂いが残っている。数日は落ちないだろう。多少キレイになったところでラヴァのもとに向かった。係について言うためだ。

 「失礼します」

 ノックをしてドアを開けた。

 「ああ、S君か。少し待っていてくれ」

 ラヴァは背の高い男と話しているようだった。言われた通り待っていると、しばらくしてドアが開いた。背の高い男が俺を睨みつけるように通り過ぎて行った。彼から違和感を感じた。ほんの一瞬前を通り過ぎただけなのだが、里の中で彼だけ浮いているというか。そんな違和感だ。

 「今の人は?」

 「彼はヒヨードという。普段は地下で研究をしている。今日の収集物だった死霊石も彼の研究材料だ」

 二人とも椅子に座った。

 「君が生きていて良かった。死んでしまっては葬式をあげることしかできないからな」

 ラヴァは少し申し訳なさそうに言った。やっぱり無理だと思っていたのだろうか。

 「俺はランに助けてもらいました。そのとき、係を変えてもらうべきだと言われました」

 「今の採集係は熟練者ばかりだ。君を無理に入れる必要はなかったな。私のせいだ。すまない」

 「俺は何もできませんでした。何も……。だけど」

 彼は被せ気味に言った。

 「ならば食堂係はどうかね。料理は楽しいものだ。ブラトも人が増えて喜ぶ」

 俺は今満足が欲しい。本能の一つ上に置かれた欲望。里のみんなに笑って欲しいという欲望。笑えない原因を消すこと。不可能でもやらない訳にはいかない。そのためには敵を知らないとダメだ。

 「俺は……」

 ラヴァが心配そうにこちらを見ている。

 「俺はこの係を続けます」

 彼はため息をついた。

 「そう言う気がしていた。さっきのヒヨードも大きな野望を持っていた。君と同じかもしれない。見て分かる通り彼は壊れた。今はただ激情だけで動いている。私は心配だ。君もああなるのではないかと」

 彼は数秒黙った。

 「……倉庫に装備の予備がある。替えが必要だろう。好きなものを持っていくといい」


 倉庫の隅で銀色に光るものがあった。ナイフ……前のものより長い。どっしり頑丈そうで、扱いやすそうだ。俺はこのナイフを持っていくことにした。


 ラヴァの部屋から出た先にガーネットが立っていた。

 「良い具合に混ざった感情だ。その目から溢れている」

 「何ですか?」

 目を閉じたまま言うから不気味だ。

 「お前の出身の国は感情を生まない。そこに住む人々が感情を生まないからだ。今のお前には感情がある。赤ん坊のような生まれたての感情。慣れが必要だろう。無鉄砲な行動を抑制できないまま死んでもらっては困る」

 彼女は手を差し出して言った。

 「受け取れ。竜の子よ」

 金属の棒だった。紐で首に掛けられるようになっている。

 「無鉄砲を自覚すると同時に丸呑みしろ。健闘を祈る」

 彼女はそう言って去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ