援軍
一歩、また一歩と近づいてくる。ゆっくりと、肉を脈打たせながら。下がろうとしたら焦って躓いてしまった。肘を擦りむき、赤い血が流れ出た。
岩が迫ってくる。死を感じた。死ぬという事実がもうすでに起こったことのように頭の中を支配する。自然と目蓋を閉じた。
"ギャアアアアア!"
女性の声のような甲高い叫びが聞こえた。少し目を開いた。岩から血が噴き出ている。苦しそうに全体を大きく揺らしていた。俺はただ呆然とそれを見ていた。岩は再び大きな叫びを上げた。そして膨張して破裂した。俺はその場にへたり込み、大量の血を浴びた。
「こんなところで何してるの」
岩の後ろに誰かいる。ランだった。
「さっさと帰った方がいいわ。また細切れにされるわよ」
ここで急に我に返った。
「あ、ああ、あ、ありがとう」
「あんたは係を変えるべきだわ。採集係は他の人に任せて、外に出ない係に変更してもらえるよう代表に伝えるべきよ。危険すぎる」
そう言ってランは谷の向こう側に跳んでいった。
震える足でなんとか立ち上がり、来た道を戻る。
里の入り口近くに数人が立っている。血が目に入って顔がよく見えない。
「Sさん! 生きてましたか! キャス、Sさん生きてましたよ! 血まみれですけど」
ロトーの声がする。後ろからキャスがひょっこり顔を出した。紙束を持っている。
「あー……Sさん、無事で良かったです。あれは悪い判断でした。見捨ててすみません」
「あれは俺が逃げ遅れただけだから謝ることないですよ。こうして戻ってこれたし」
「へへっ……そうですか。どうやって逃げたんですか」
「ランに助けてもらったんだ。ホントに死んだと思った」
「ランさんが……? 良かったですね」
そんなことをやり取りをしていたら、誰かやって来た。
「予定通りだ。竜の子よ」




