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霊凍庫  作者: 弐鈴
鮮烈な感情
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ON


 ロトーはその場で手を振っている。緊張している俺とは正反対だ。彼女の足元でビュービュー血がはねる。俺はこの化け物が何なのか尋ねた。

 「化け物……ではないですかね? 見た目はかなりエグいですが、ちゃんと動物みたいというか、行動原理に則って生きている感じがします。血も流れてるし、捕食者に比べたら十分かわいいですよ!」

 "捕食者"ではないのか。

 「捕食者ではないです。捕食者『以外』の人を襲うような動物をまとめ、消費者と呼んでいます。消費者の類は対処法を間違えなければ何とかなることが多いですが、捕食者は本当にどうしようもないですからね」

 そう言ってロトーは切り落とした首を整理している。

 「あははっ。でも、脅威なことには変わりないですね。こうして犠牲者がいるんですから」

 頭の一つは人間のものだった。

 「結構前に死んだみたいですね。捕食者にやられたと思ってたんですが、油断してたんですかね! おバカさんだな~」

 もしかして剣の持ち主だろうか。

 「シューゲンっていう人でした。食堂でご飯をよく作ってもらいました。話上手な良い人でしたね。この人みたいに話せたらなあって……」

 彼女は不意に笑い出した。その姿が不気味に見えた。

 「どうして笑っているの?」

 「笑いたいわけじゃないです。前を向かないと……笑っていないと明日に行けませんから」

 ああそうか。目の中は笑っていなかった。泣いている。

 彼女は持っていた頭部を投げ捨てた。


 帰り道、かける言葉に迷っていたら、ロトーがボソッと呟いた。口角が下を向いていた。

 「どうしたら、成れるんでしょう」

 俺は聞き返した。

 「何に?」

 「ガーネット様みたいに。あの人は私たちとは違う。私たちの悲しみは、殺されたか、自ら麻痺したかです。でも、ガーネット様は違います。感情の気配すら感じさせません。私もあの人みたいに成れれば、楽なのかな……」

 俺は黙ったままだった。見ている景色が変わったから。都市ではみんな何も考えていないように生きている。仕事でも、休みでも、基本は与えられたものをこなすだけ。生きていることに気付かない、感情のない人形みたいだった。でも、ここは違う。苦しいから感情が湧きたっている。そして、俺は、彼らの残酷な日常に対して何かできるような人間でもない。

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