Draw 1:オモチャの力で容姿が変わるのは何ゆえに。
※当小説にはTCG及びホビアニへの偏見が随所に見受けられます。
※これらは全て作者及び各キャラの主観に基づくものであり、事実とは異なる場合がございます。
少女……「死世神 偽華」に拾ってもらった後、彼女は俺を手に持ったまま帰宅した。
ちなみに、とんでもなく大きな豪邸である。
まぁ、何故か知らないけどTCGの敵役ってお金持ち多いよね。世界を牛耳る大企業のトップとか、財閥の長とか、そういうの。
やっぱり、兵器とか出して派手な展開に出来るからかな? それとも、お金があれば強いカードが買えるよ、と子供たちに教えて……それは無いな、うん。無いと信じたい。
……けど、豪邸なのに誰も彼女を出迎えなかったのが気がかりだな。親とか使用人とか誰も見かけない。彼女が暗い顔をしていたことと何か関係があるのだろうか。
ま、今考えても仕方があるまい。情報が少なすぎるし、何も分からないのだから。後で追々考えるとしよう。
それよりも考えるべきは。
フヨフヨ浮いて鏡に姿を映す。
そこには、ちゃんとイラストとテキストが刻まれたカードが映っている。最初の手抜きカードとは違う。
ほうほう。名前は「ティティム・クルデーレ」ね。可愛い名前じゃないか。
カードもキラキラしてるね。ホログラムで黒いカードがキラキラしてる。キラカードって奴だ。低レアの別バージョンでも無ければ、高いレアリティなのは間違いない。
それは良い。
しかし。
描かれているのは、左が金色、右が黒色のオッドアイが特徴的な長く白い髪の美少女。真っ黒な服に身を包み、巨大な鎌を両手に持っている。
……なんで俺、TSしてるの?
……しかも、両手に巨大な鎌って何?どんな女の子だ?
いや、まぁね?俺が男の子だったというのは、何となく思うってだけで証拠はないし。百歩譲って性別は良いよ。
けど、何この見た目と能力?
このTCGのルールやら強さについて詳しくないけれども。
武器が鎌で?種族が「闇」で?基本色が黒と白で?やたらと「4」が続く能力で?味方を殺しまくって敵も殺すみたいな能力で?種族に「スペルビア」=「傲慢」と「アヴェンジ」=「復讐」があって?
何この、一目で分かるヤバイ子。可愛いけど、絶対にヤバイ。
少なくとも、熱血主人公陣営に居るべき子じゃない。
というか、召喚された時の口調とかどうしよう?
見た目的に一人称は「私」かな?口調とかどうしよう?フレーバーテキストが書かれてないから分からないけど……。絶対にヤバイ言動する子でしょ、この子。
すると。背後からガチャリと戸を開ける音が聞こえた。
「ふんふふ~ん♪」
そして。上機嫌な鼻歌を歌いながら少女がカードである俺の方へと向かってくる。
全裸で。
何で!?
いや、理由は明らかなんだけども。体から湯気が昇ってるもんね。お風呂に入ってたんだよね。
でもさ! なんで服を着ることもせず、俺を掴んでマジマジと見つめてるの!
早く服を着てよ! カード状態だと目を瞑るとかって機能が無いの! 手で掴まれてると向きを変えることも出来ないの! 見えちゃうの!
不味い不味い不味い不味い。
俺の精神は男の子っぽいから、本当にマズイ。バレたら破かれちゃうのでは?
必死に意識を逸らす。目は逸らせないから意識だけを逸らす。あれは絵画だ。芸術品だ。ミロのヴィーナスとかそういう系のソレだ。冷静になれ、冷静に。
いや、そうだ。アレについて考えよう。今も視界に映っている明らかな異常事態。
何を隠そう、俺の視界の上部に位置する偽華ちゃんの髪について。
……何故に、彼女の髪は色が変わってるんですかね?
何が起きたのかと言うと。
ついさっきのことだ。俺を掴んで黒い奔流が出た直後、彼女の髪の色が変わったのである。自分でも何言ってるのか分からないけど、そうなったのだから仕方がない。
漆黒の長髪が、白と黒が混じった髪……メッシュというんだっけ?……に変わったのである。
本当に一瞬だった。
当たり前だけど美容院に染めに行ったりしていない。
玩具の力で身体に変化が起きるってどういうことなの? 確実にヤバいのでは? 病院行った方が良いかもよ?
……ただ。彼女が全く問題にしていなそうだし、多分この世界では普通の事なんだろうね。
少なくとも、ホビアニにピッタリの奇抜な髪型であることは間違いない。あと可愛い。普通に凄く似合ってる。
ま、可愛ければ、ヨシ!(思考放棄)
「さて、じゃあティティム。貴女を中心にデッキを構築するわね。……全てを壊すために。ふふふふ」
まぁ、何はともあれ。
世界を壊すでも何でも良い(良くない)けどさ!
とりあえず、早く服を着て!