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【1】

高校に入学して3ヶ月。

友達が出来て、クラスにも馴染んで、順風満帆だ。

心にも余裕が出てきている。

周りを見る事も出来ている。

だからこそ気付いた事がある。



朝の通学時に乗る電車の車両に驚愕のイケメンがいる。




私の電車の乗り込み口は大体決まっている。

別にどこから乗っても目的地は変わらないのだから、決めなくていいんだけど。

何となく、ここから乗る癖がついてしまった。

おそらく、初めて通学で乗った時にこの場所だったから、ここからまた乗り込もうとか。

ホームのエスカレーターから遠いから、ここの方が人の列が少なくて済むとか。

そういった些細な理由が重なって癖がついているのだろう。



朝はやはり電車内は人が混む。座席にはとても座れない。

この車両は身動きとれないレベルではないが、それなりに多い。

入学当初は、高校に慣れるまでの緊張感や人混みによるストレスで心に余裕がなかった。

電車に揺られている間は、車両のドア付近にある手すりに掴まってずっと下を向いて過ごしていた。

早く学校の最寄り駅に着きますように、と願いながら。




そして3ヶ月経過した今。

高校への緊張感は解れ、人混みにも慣れてストレスはそれほど感じなくなった。

そうすると、周囲を見るようになった。


同じ高校の制服を着た知らない子がいる。他の学年やクラスの人かな。

他の制服の子もいる。この路線だと、あそこ辺りの高校かな。

スーツの人も多いな。そうだよね、会社に行く人たちもこの時間帯だよね。

私服の人もいる。仕事休みの人?あ、違うか。大学生とか……。




ん?



めっっっちゃイケメンじゃない????




『透き通った肌』

『長い睫毛』

『通った鼻筋』

『すらっと伸びた指』

『サラサラな髪』


え、まだ言わせるの?っていうくらいのイケメンだ。

何ていうんだろう。カッコよくて美人みたいな。


周りを見る余裕の出来た私は、イケメンを見つけたのは私だけではない事にも気付いた。

女子高生たちは友達同士でイケメンを見てはコソコソ話してキャッキャしている。イケメンの周囲ではよくある光景だ。気持ちは分からんでもない。


ふと、イケメンがこちらを見て目が合った。

すっごい……目が澄んでてキラキラしてる。

イケメン要素に『眩しい瞳』が追加された。



これ、もしかして他にもイケメン要素があるんじゃない?

明日からもあのイケメンを点検しよう。

同じ車両に乗っているといいんだけど。




翌日、イケメンは同じ車両で同じ場所の座席にいた。

もしかして、私みたいに何となく癖がついているのかな。

あの場所に座るっている癖が。

イケメン要素に『スマートに同じ座席を確保する』が追加された。



その翌日、イケメンは何かの本を読んでいた。

文庫本くらいのサイズかな。

読んでる姿はクールだ。

イケメン要素に『文庫本を読む』が追加された。



さらに翌日、イケメンはイヤホンを付けて読書していた。

音楽を聴いているのかな。

イケメン要素に『音楽までも嗜む』が追加された。




すごい。

すごいわ、あのイケメン。

私にどこまでイケメン要素を言わせれば気が済むんだ?


イケメンを点検してから1週間ほど経過したが、見る度にイケメンっぷりが分かる。

この3ヶ月間、私は何をしていたんだ。

あれほどのイケメンが世に解き放たれているというのに、今頃気付くなんて……。



あの人、大学生で合ってるのかな。20歳前後と思うけど。

私の方が先に電車から降りるけど、どこで降りるのかな。

どこの駅から乗ってるのかな。

座席に座れるって事は、結構遠くから通っているのかな。

イケメン要素を十分過ぎる程に浴びた今、それ以外の興味も湧いてきた。

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