狼の連続死(7)
「…そうですね。きっと大丈夫でしょう。」
光琉は言いながら胸が痛んだ。正には大きな恩があった。見殺しにしていい人物ではない。
光琉はどうしても気掛かりで、正が平和通りに行かないようにすることは出来ないか模索した。別な人物と代われないのか、時間を早めるか遅らせることは出来ないのか。何を打診しても断られた。気付くのが遅すぎたのだ。
「大丈夫だ。僕より正さんの方が先に出会ってしまう可能性はかなり低い。」
光琉は言い聞かせるように呟きながら、部屋を歩き回る。しかし、最悪の万が一が出たら?それに、光琉が先に着こうが、その後正と会わないとは言い切れない。
光琉が悩んでいるうちに、土曜日の午後になった。小麦と光琉はY県に着いた。
「小麦様は東を中心に見て下さい。僕は西に向かいます。」
光琉は言って、踵を返す。思ったより遅くなったが、急げば十分に間に合う。
「光琉、何か私に隠しておるな。」
光琉の背に向かって小麦は言った。
「急に何ですか。いいから早く行きましょう。」
光琉はさっさと行こうとするが、小麦は光琉の腕を掴む。
「真白か?」
光琉は目を見開いて、小麦の表情を探る。
「やはりな。お前がその目をしている時は、必ず真白絡みだ。」
「放して下さい。お願いします。もう一刻の猶予もないのです。」
光琉は言うが、小麦が逃がすはずもなかった。
「どうしてだ?まだ日は暮れぬ。十分時間はあるはずだ。」
光琉は迷った。真白の元に小麦を連れて行けば、真白が死ぬ可能性がグンと上がる。光琉は自分の命に代えても阻止したい所だった。だが、まごまごしていると確実に正が死ぬ。光琉は小麦の鋭い目を見ながら考えた。真白だって、正を殺そうと思うはずがない。監視されていなければ、見なかったことにするだろうが…。
「真白様をどうしても裁かれますか?」
「当たり前だ。慈悲はない。さあ、言え。真白は何処にいる?言えばお前の罪は不問にしてやろう。」
小麦は即答した。光琉は俯いた。
「真白様、お許し下さい。」
小麦は光琉があっさりと口を割るのに驚いた。
「平和通りです。正さんがいるところです。」
小麦は光琉の表情を見て、嘘ではないと思った。
「タクシーを拾え。」
小麦はタクシーの中で言った。
「例の第六感か?」
「いいえ、今回は真白様のヒントのお陰です。」
光琉はひそひそと答える。小麦に涙石を手渡す。
「事件があったのは、石井薬局、ロー〇ン××店、浜田公園、西川内科、蓬莱橋です。頭文字がいろはの順になっているでしょう。次は平和通りというわけです。」
小麦は手を打った。
「成る程。言われてみれば単純だな。あいうえお順ではなく、いろはだったから気付かなかった。平和通り以外はあり得ないのか?」
「ローカルな名前ならあるでしょう。ですが、蓬莱橋以降は、僕が気付いていることを前提として、最もメジャーな場所にしているのではありませんか?そうでないと予測が立ちません。」
光琉は真白の身を案じて、後悔し始めていた。平和通りに着いた。正はもう来ていた。光琉は悔しがった。正がいない状態で真白と小麦が会えば、小麦は攻撃を躊躇しないだろう。




