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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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呪いのサイト(6)

「ええ、そうよ。山神小麦にバレたの。此処は引き払うわ。石も返すわよ。どうせ本物の血酒石ではなく、その力の一部を移した孕石の一つでしょう。」

歌羽は誰かと電話している。電話しながら荷造りが殆ど済んでいる。

「冗談でしょう。貴方と直接会ったら無事で済まないことくらい分かるわ。郵便受けに入れたから、小麦より先に来なさいよ。じゃあね、ハリ。もう二度と会わないと思うけど。」


歌羽は車に乗り込み、エンジンをふかす。エンジン音が遠ざかり、家には静寂が訪れた。暫くしてから、今度は別の車がやってきた。茶髪の青年が降りてきた。チャラそうな風貌で、真っ直ぐ郵便受けに手を伸ばす。取り出したのはビー玉サイズのルビーだった。傍に鴉が止まって五月蠅く鳴いている。


「死ね。」

鴉は突如羽をばたつかせて苦しみ始める。それを見た周りの鴉が飛び立つ。ハリはニヤリと笑うと、ルビーを懐に仕舞う。

「確かに受け取ったぜ、歌羽。」


再びエンジン音がしたと思うと、完全に静まり返る。翌朝になって、光琉と小麦が訪れたが、その時には何の手掛かりも残されていなかった。光琉と小麦は音羽の亡骸をクーラーボックスから出して埋葬した。音羽の亡骸は狼の姿をしているから、遺棄したことが発覚しても、事件にはならないだろう。

「来るのが遅かったようですね。」


小麦は舌打ちする。もう少しで捕まえられたのに、みすみす逃してしまった。

「絶好の機会だった。真白の奴を捕らえることが出来たかもしれないのに、水の泡だ。」

「相手は血酒石を持っていたのですよ。呪殺も可能なほどの力を秘めた宝石です。無傷で追い払えただけで良かったと思うべきかもしれません。」

光琉はそう言って慰める。


「それがなんだ。向こうには呪具があるが、此方にも防具があった。涙石が。身に付けているだけで、持ち主とその周囲の者が受けた、あらゆる攻撃を肩代わりしてくれる石だ。寧ろ此方に分があったのだ。」

小麦は苛立ちを抑えきれない。光琉は小麦の手を引いて家に向かって歩き出した。


光琉は左耳のピアスを外して小麦に返した。涙石だ。無色透明な大粒のダイアモンドである。小麦はそれを自分の左耳に付ける。

「分かりました。今日はパフェを買いますから、それで勘弁して下さい。」

小麦は一瞬目を輝かせたが、腕組みをして不機嫌そうに言った。


「チョコレートパフェだぞ。」

「はいはい。」

馬之群の作品史上最弱の主人公です。『アベルの兄』の主人公のカイン(ただの人間)より弱いです。オムニバス形式に挑戦しようかと思いましたが、無理でした。此処までで第1話になります。思ったよりも長いです。プロット上ではあと40話ほどあります。少しでも目を通して頂ければ幸いです。

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