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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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呪いのサイト(4)

「何のことだか…。」

光琉は男の手を掴むが、ピクリとも動かない。

「俺の鼻は誤魔化せないからな。このヴァンパイアめ。」

弟がウェアウルフだったのか。光琉は事情を説明しようとするが、息が苦しくて話せない。

音羽(おとは)、ひとまず場所を変えましょう。目立つわ。」

先日の女性が現れる。光琉は無理やり車に乗せられ、連れ去られる。


「着いたぞ。」

そこは民家だった。小さな家だ。光琉は乱暴に中に押し込まれる。どうやら二人の家のようだ。

音羽は徐に服を脱ぎ捨て、赤毛の狼に姿を変えた。

「余計な真似をしたら即咬み殺す。誰の差し金だ。」

「僕は山神家の当主、小麦様にお仕えしている者です。不審なサイトがあったので、人外の仕業かどうか調査するために…。」


光琉は音羽に押し倒される。大きな口から出る獣臭い吐息が光琉の頬にかかる。

「嘘だ。小麦様はヴァンパイアを嫌っておられる。真白(ましろ)様でもあるまいに、ヴァンパイアなどをお傍に置くものか。」

「ご本人に直接確認してみてはいかがですか。僕の持っていたスマホに『真白様の姉』として載っていますから。」


音羽の目配せで、音羽の姉がスマホを使って小麦に連絡する。

「どうした。」

小麦の声だ。音羽の姉は黙ってスピーカーにする。

「小麦様、彼らに説明して下さい。僕が小麦様の命令で彼らを調べていたのだと。」


電話口からは沈黙が返ってきた。光琉はもう一度頼み込む。

「お前など知らん。」

光琉は呆れかえった。この状況で冗談を言うとは、あまりに酷すぎる。

「小麦様、冗談を言っている場合では御座いません。このままだと僕は今晩のディナーになってしまいます。」


音羽は心なしか力を籠めて踏みつけている。

「知るか。変身していない状態のウェアウルフに負けるような軟弱なヴァンパイアを下僕にしていたなどと、恥ずかしくて言えぬわ。今朝吸血していたのは何だったのだ。自力で何とかしろ。」

無慈悲にも電話が切られた。光琉は憤慨した。確かに仰る通りですけど、見殺しにするのはあまりに惨い仕打ちなのでは?


「…あんな風に言われましたけど、僕が小麦様の下僕だという証明にはなりましたよね?どうか見逃して下さい。」

音羽はゆっくりと人間に戻り、服を着た。光琉はホッとした。

「まあ、山神家に目を付けられたら困るな。小麦様の所に案内してくれ。直接会って弁明したい。」


「行かないで、音羽。怖いわ。」

音羽は縋りつく姉の手をゆっくりと振り解く。

歌羽(うたう)姉さん、俺はけじめをつけないといけない。小麦様はウェアウルフの君主(ロード)なんだ。きっと分かって下さる。少し待っていてくれ。」

「そうですよ。小麦様は別件を追って、偶々このサイトを知っただけです。厳罰を科そうなどとは思っていらっしゃらないはずです。」

歌羽は不安そうに見送る。音羽は運転席に座り、僕は後部座席に座った。シートベルトを締める。

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