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たんぽぽと驟雨とハッピーエンド

6話目です!


彼女ができないことに悩む大学生の話です。

 高校の頃は、なぜ彼女が出来ないかに関して重ね重ね考察をしていた。彼女を作るには、告白をする相手、すなわち好きな女の子が必要である。好きな女の子を作るには、好きになれる相手、すなわち仲が良い女の子が必要である。仲が良い女の子を作るには、女友達が必要である。女友達を作るには、女性の知り合いが必要である。男子校で女性の知り合いを作るのは困難だ。朝起きて学校に行き、部活を夜までして家に帰る。母親以外、女性性を認識することさえない乾いた生活だ。周りの彼女持ちの人に聞いてみる。どこで彼女と出会ったか。一位、中学校の頃の知り合い。二位、塾で知り合った。三位、文化祭でナンパ。一位から見ていこう。僕は、高校に入る前の友好関係は、地元に置いてきた。進学校である、この男子校に通うにあたって仕方のない犠牲である。続いて二位。塾で知り合うことは出来ないだろう。もともとSNSでつながっていた人と塾で遭遇した、とかなら分かる。しかし、塾なんて同じ学校同士で固まって群れるだけで、新しい出会いは見つからない。最後に三位。これは論外だ。「ただし、イケメンに限る」という奴だ。僕みたいにフツメンを頑張って頑張って取り繕っているような奴には、かなり縁遠い話だ。そんなこんなで、僕は大学生活に期待していた。


 大学に入っても、なぜ彼女が出来ないかに関して考察をしていた。大学入学以降の、出会いの場所ランキングだ。一位、サークル。二位、バイト先。三位、クラス。一位に関しては、確かに少々希望があるだろう。中には男女が仲睦まじく班を作って活動しているサークルもあると聞く。しかし、僕は失敗してしまった。高校時代の友達が多い、男性比率マシマシのサークルに入ってしまったのだ。今更、キラキラサークルに入る勇気もない。それに、キラキラサークルに入ったところで、キラキラ男たちと比較され、相対評価の分が悪くなるだけである。続いて二位。こちらも現実的ではない。飲食バイトのホールを一緒にやって仲良くなって、などは聞くが、僕には経済的余裕がない。バイトは、高時給の塾講師や家庭教師だ。塾では、出勤して教室に行って退勤する生活。家庭教師では、生徒の家との往復。どこにも同年代の女性がいない。いっそ夏休みに単発で海の家のバイトでもやるか、と思ったが、夏休みは講習バイトの稼ぎどきなのである。最後に三位、クラス。これも不可能だろう。クラスの雰囲気を自分が壊すなんてまっぴらごめんだ。それに、クラスメイトは授業が終わるとサークルにバイトに忙しく、話す余裕なんてない。と、思っていた。


 大学に入って、生まれてはじめて彼女が出来た。


 結果は、第三位のクラスメートだ。授業後に一緒にご飯を食べることが何回かあり、CDの貸し借りなどをする過程でラインをするようになり、話が盛り上がって電話をするようになり、デートに誘い、告白をして、彼女が出来た。もちろん、クラスメートには内緒のアバンチュールである。今まで、彼女なんてのはモテ男にしか出来ないものだと思っていた。周りに女友達が何人もいて、彼女と仲が悪くなったら別の子とラインをして、途切れることなく彼女を作っていく。チェーン・スモーカーならぬ、チェーン・ラバーだ。しかし、今回僕のような奴にも彼女が出来ることが判明した。彼女の他には女友達なんていない僕にさえ、である。人生に希望ができた。ただひたすらに、嬉しい毎日だった。


 色々なところに行った。動物園に水族館に遊園地。美術館で一日過ごしたこともある。今まで彼女がいなかった分、行きたかったデートスポット、やりたかったデートプランを存分に試して楽しんでいった。彼女も幸せそうだった。映画をみて、ご飯を食べて、電車に揺られて。毎日が180度変わった。コペルニクスもきっとこんな気分だったのだろう。ユーチューブを見る時間が減った。ツイートが減った。彼女以外にするラインの頻度も減った。今まで趣味に勉強に割いてきた一人の時間が、なくなった。少し寂しくもあったが、それ以上の充足感があった。彼女だけが合格して彼氏は大学に落ちる、という典型的なカップルの気持ちがわかった気がした。だから試験前は、気を引き締めて勉強した。おかげで成績抜群、彼女もいる、最高の生活になった。


 デートで、初めて手を繋いだ。恋人つなぎよりも手のひらを重ねた方が密着感がある、ということを知った。デートで、初めてキスをした。レモンの味なんてしなかった。でも、ほんの少し甘かった。デートの後、初めて彼女の家に行った。こんなにピンクが多い部屋は初めてだった。デートを重ねて、初めて身体を重ねた。ネットのノウハウには載っていない苦労が、たくさんあった。彼女の家に通うようになった。自分の家と、どっちで生活している日が多いかわからなくなった。


 恋なんて、雨みたいなものだ。突然やってくる。そして、いつもやってくる。


 雨上がりがないことを祈って。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


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