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魔女の末裔~新米メイドの王宮事件簿~  作者: 晶雪
第二章 新米メイド、王宮へ行く
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47 お姫様とお出かけ1

 翌日は雲ひとつない晴天だった。

 もしも天気が悪ければルチル姫の参加する「遠乗り」は中止だろうし、そもそも雨が降っていては本を運べないので、図書館行きも中止のはずだった。

 この天気なら問題ない。

 私がお屋敷の玄関で、本の入った木箱を台車に積んでいるところに、「待たせたな」とクリア姫がやってきた。

「準備できました?」

「うむ、だいじょうぶだ。いつでも行けるが……。随分大きな箱を持っていくのだな?」


 昨夜、クリア姫が自分で用意した木箱の上に、私が用意した空き箱を重ねて乗っけてある。

 クリア姫が「大きい」と言ったのはその空き箱の方。「好きなだけ借りていい」というありがたいお言葉に甘えて用意した。大判の本が10冊、いや20冊は余裕で入る大きさである。


「さすがに、ずうずうしいですかね……」

「ああ、いや。そんなことはない」

 慌てて首を振るクリア姫。金髪のおさげも左右に揺れる。「ただ、エルが重いのではないかと、そう思っただけだ」

「だいじょうぶですよ。台車で押していくので」

「そうか。ならいいが……」

「それより姫様、その服、可愛いですね」

 本日のクリア姫は、お出かけ用の上品なワンピースを着ている。色は紺で、胸元に同色のリボンを結んでいる。

「あ、ありがとう……」

 クリア姫は赤くなって下を向いた。

 このお姫様、ほめた時の反応が可愛いんだよね。

 これが噂に聞くメイド萌えってやつか。……いや、違う。萌える側と萌えられる側が逆だ。


 本気でどうでもいいことを考えていたら、「エルの服もよく似合っている」とほめ返された。

「ありがとうございます」

 今日から私も、支給されたメイド服に袖を通している。

 パイラがきのうのうちに手配してくれたらしく、今朝方お屋敷に届けられた。幸い、私はごく平均的な体型であるからして、お城の倉庫にサイズがあったようだ。

 紺の長スカートと白のブラウスで、レースやフリルが控えめについている。

 お城勤めのメイドは、行儀見習いの貴族の子女が多いという。だからなのか、いかにも高級なメイドでござい、といった感じのちょっとすましたデザインになっている。

 ……私は筋金入りの庶民であるからして、何やら服だけが浮いて見えるような気もした。


「正直、変かなー、なんて思っていたので、姫様にほめていただけて嬉しいです」

「変などではない」

 クリア姫が気遣ってくれる。

「さっき、兄様も似合うとほめていたではないか」

「あー、言ってましたね。朝ごはんの時」

 カイヤ殿下は、メイド服を着た私を見て一言、「よく似合っている」と口にした。いつも通りの無表情だったので、社交辞令だったのか、意外と本心だったのかはわからない。

 私は深く考えないことにした。あの王子様と適度な距離感を保つためには、多分、その方がいいと思う。

 なお、その殿下は朝食後すぐに出かけてしまったので、ここには居ない。

「じゃあ、私たちもそろそろ行きましょうか?」

「うむ、そうだな」


「お出かけですか?」

 ぬれた手をエプロンでふきながら、パイラが奥から出てきた。「それじゃあ、お昼ごはんの支度をしておきますね」

「帰りは少し遅れるかもしれないが……」

 クリア姫が言うのを皆まで聞かず、

「はいはい。わかってますから」と苦笑するパイラ。

 本好きのクリア姫は、図書館に行くと、本に夢中になって時間を忘れてしまうことがよくあるらしい。


「そういえば、ダンはどこに行ったのだろうか。いつもはこの時間、部屋で寝ていることが多いのに、姿が見えなかったのだ」

 パイラは「さあ」と首をかしげた。

「お外で昼寝とかじゃないですか? 近頃すっかり温かくなってきたから、ダンビュラさんもよくひなたぼっこしてるようですし」

「そうか。そうだな」

 自分で言い出したわりには、クリア姫はすぐに話を切り上げた。今はそれより、図書館のことで頭がいっぱいなのかもしれない。

「では、行くとしよう。エル」

「はい。姫様」


 いざ、王室図書館へ――。

 ルチル姫のことが少し気がかりだけど、お出かけ自体は私も楽しみだった。

 先々代の国王陛下が建てたという、王族だけの専用図書館。いったいどんな場所なんだろう?

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