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魔女の末裔~新米メイドの王宮事件簿~  作者: 晶雪
第二章 新米メイド、王宮へ行く
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40 ダンビュラ2

 洗濯の後は、一休みしていいと言われた。

 晴れ渡る空。風にはためく真っ白なシーツ。とてもさわやかな眺めなのに、何だか胸の奥がもやもやする。

 ぼんやり突っ立っていると、「よう」と声がした。

 見れば、ダンビュラだった。物干し竿の向こうに座り込んでいる。「おもしろそうな話、してたじゃねえか」

「……聞いてたんですか」

 盗み聞きとは、あまり趣味がいいとは言えない。


 ダンビュラは悪びれもせず、とがった耳をぴこぴこ揺らした。

「俺は普通の奴より耳がいいからな」

「さっきの話……。パイラさんて、殿下のこと……」

「ああ、あいつは殿下に惚れてた」

 実に軽い口調で言ってのける。「惚れてた、っつーか、今もな」

 他の人と結婚するのに? とは、聞かなかった。

 事情は色々あるのだろう。会ったばかりの自分が詮索するようなことじゃない。


「あんたは本当に、カイヤ殿下に興味ねえのかい」

 異性としてはそうだと答えると、

「殿下も逸材を見っけてきたもんだな」とげらげら笑う。

 虎か山猫みたいな顔でどうやって笑うんだって思うかもしれないけど、不思議なことに彼の浮かべる表情は、人間のそれとほとんど変わらないのだった。


 殿下に惚れない女は逸材なのか。

 確かにとんでもないイケメンだし、常人にはないオーラの持ち主である。

 中身もまあ、悪い人ではない。わりと優しいというか、人がいいというか。

 ちょっと危なっかしいところもあるみたいだけど……。もしかして、そういう部分に惹かれる人が多いのかな?

 世間では英雄または狂人扱い、でも私の知ってる殿下は、意外にダメで優しくて放っておけない人。私がそばで支えてあげなくちゃ、みたいな?

 女って、そういうのに弱いからな。いや、女に限らないか。


「だったら、俺はどうだ? あんたのタイプじゃねえかい。よかったら付き合わねえか?」

 軽くウインクして私の顔を見上げるダンビュラ。そういう仕草がつくづく人間くさい。……もしくは、おっさんくさい。

「……ダンビュラさんて人間なんですか?」

「はあ? 俺が人間に見えるのか!」

 ダンビュラは爆笑した。

 さすがに少々気まずくなったが、

「魔女の呪いで姿を変えられた、とか聞きましたもので。今の姿になる前はそうだったのかなー、なんて」


 ようやく笑うのをやめたダンビュラは、ひくひくと長いひげを揺らしてからうなずいた。

「まあな、300年ちょっと前まではそうだった」

「300年……」

 私は呆然と繰り返した。

「なんだ、本気にしたのか?」

「……って、嘘なんですか」

 さっきから適当なことばかり言って、人のことをからかっているのか。

 抗議しようと口をひらきかけた時、「ダン!」とお屋敷の方から姫君の声がした。

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