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魔女の末裔~新米メイドの王宮事件簿~  作者: 晶雪
第十六章 新米メイドと魔女の塔
382/410

381 螺旋階段の先に

 階段は長かった。10分くらい上り続けても、まだ終わりが見えなかった。

 疲れた様子も見せずに歩を進めるジェーンとハウライト殿下の後を追いながら、私は必死でファイのことを問いつめようとした。


「大事な話なんですよ! なんでさっき私の名前呼んだんですか! ちゃんと答えてください」

 ファイは階段を上る足は止めぬまま、視線だけをこっちに向けて、せせら笑った。

「ほー、大事な話か。この塔にはおぬしとカイヤに悪意を持つ者がおり、しかもカイヤの安否はわからぬままだというのに。左様な私事の方が、おぬしにとっては大事なのだな」

「……! それとこれとは話が別――」

「カイヤは『妹がさらわれた』とも申しておったのう。おぬしにとっては、仕える主人ではないのか?」

「……っ!」


 口ごもる私に代わって、「それは本当か?」とハウライト殿下が問いを挟んできた。

「妹がこの塔に居る、とカイヤが言ったのか?」

「うむ、左様。あやつがこの塔に足を踏み入れたのは、その妹に助けを求められたからだと申しておったぞ」

 って、あれ? 話が違わない? 殿下がこの塔に来たのは、魔法の鏡で呼び寄せられたからなのでは……。


「王都に居たはずが、気づいたら塔の前に立っていた、とあやつは言ったぞ」


 ああ、そっか。

 私も最初から塔の中に居たわけじゃない。気づいたら目の前に塔があって、そこで人型の群れに襲われて、やむを得ず塔に入ったんだ。


「扉はやはり開いておったそうだ。ゆえにあやつは、自分が何者かに誘われていると思ったらしいが――」


 1人で足を踏み入れるのは危険だろうと、すぐに王都に引き返すことに決めたんだって。

 そういう即断即決はいかにもカイヤ殿下らしいと思う。

 しかし殿下が帰ろうとすると、塔の中から助けを求める声がして――。


「それがクリアの声だったというのか?」

 確認するハウライト殿下に、ファイはすぐにうなずこうとして、

「……いや、そうとは限らんな。我が聞いたのは、『妹がさらわれた』という言葉だけだ。その妹がリシアの娘かどうかまでは知らん」

 言われてみれば確かに、殿下には大勢の妹姫が居るけど……。


「カイヤが危険をかえりみずに救おうとする妹といえば、クリア以外の心当たりは1人だな」

 ハウライト殿下は苦いため息をついた。

「やはり、フローラもこの件に関わっているのか……」

 つまりフローラ姫もこの塔にさらわれて。

 ……あ、違う。ハウライト殿下は、彼女が黒幕と共謀している可能性も考えてるんだった。


「殿下、出口が見えました」

 ジェーンの声が、話に割って入った。「やはり扉があるようです。先程の扉とよく似ています」

 螺旋階段の終点まではまだかなり距離があったが、ジェーンは目がいいらしい。

「今度の扉には、カラスと猫とコウモリの絵が彫ってあります」

「白い魔女の使い魔だな」

 ファイがつぶやく。「いよいよ、魔法の鏡とご対面か」

 実際はそうと決まったわけじゃないけど、この長い螺旋階段といい、「魔女の霊廟」にあったのとそっくりな扉といい、そろそろ親玉が出てくるんじゃないかと思わせる空気はある。


 ハウライト殿下が例の「鍵」を取り出し、足を速める。ジェーンがメイスを構えて後に続く。

 私も、カイヤ殿下のことはもちろん心配だったし、黒幕の正体も気になるしで、ファイを問いつめるのは一旦やめて、目の前の状況に集中することにした。


 そうして、ひらかれた扉の先にあったのは――。

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